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28.聖女が仲間に加わった

ここでようやく仲間が加わりました。

ここまで読んでくれた皆さま、ありがとうございます。

ようやく物語が動き出します。


もしよろしければブックマークお願いします。

 結果的にスピナさんの勧誘に成功した。

 戸惑うスピナさんをエリーさんが説得した形になった。

 この街には冒険者が俺しかいないとか、俺は管理職なのに管理している人がいないからかわいそうとか、ひどい言われようだったがスピナさんなりに納得したようだった。


 食堂から受付に移動し、パーティー登録を行った。もちろんパーティーリーダーは俺だ!

 一つ困った問題が起こった。パーティー名を決めなければいけないらしい。職場の合言葉と言えば『ご安全に』なのだが、それではスピナさん以外のパーティーメンバーは入ってくれないだろう。俺でもわかる。もしかしたら、スピナさんも脱退してしまうかもしれない。それだけは絶対に阻止しなければならない。


「スピナさんはパーティー名の希望はある?」


「いえ、私は何でも……」


 絶対遠慮している。というか、これからパーティーを組んでいくのにイエスマンは良くない。最初っから私の意見を採用しないと許さないマン……ガールよりはましだけど、時間をかけて教えていかなければならないな。まずは目標だてからかな?


 それよりもパーティー名だ、エリーさんは名前を決めるまで帰してくれる気がなさそうだ。

 エリーさんにとっても初めてのパーティーなのだろう。真面目に決めよう。


 腕を組み、うーん、うーん、と悩む。

 こういう名づけほど苦手なことがない。手法がない上にセンスもない。


「じゃ、じゃあ『エスポワール』にする」


 エスポワールは希望や期待って意味があったはずだ。

 今は絶望しているかもしれないが、スピナさんには期待している。それに彼女には希望を持ってほしい。

 今は聖魔法を使えないかもしれないが、将来使えるかもしれない。

 うん、大丈夫だ、これならスピナさんも脱退しないはずだ。


「エスポワールで登録しますね。なんかいい響きの名前ですね」


 そうだろう、そうだろう。前の世界の言葉だからね。意味もちゃんとあるし、素晴らしいのだ。



 宿に戻ってきた。ナミさん達にどう説明したらいいのだろうか。

 『少女を誘った』でこの世界の人達は納得してくれるのだろうか? 宿の夫妻は元冒険者だって言っていたし、理解してくれると願いたい。


「ただいまー、ナミさんかカイリさんいますか?」


「おかえり、どうした?」


 カイリさんとナミさんが一緒に出てきた。厨房でおしゃべりでもしていたのだろう。

 ちなみにナミさんはビックリしているのか黙っている。


「冒険者ギルドの前に彼女が居まして、ソロで活動していたようなので、パーティーに誘いました。今日からこちらに宿泊しても大丈夫ですか?」


「お、おう、大丈夫だ。アタルの隣の部屋でいいか?アタルのパーティーメンバーなら同じ金額で月に銀貨十三枚でいいぞ?」


「ありがとうございます。それでお願いします。これからよろしくお願いします」


「……スピナです。よろしくお願いします」


 ほら、ほらと手でアピールをしたら、意味を理解したのかスピナさんが挨拶をした。

 うんうん、あいさつは大事だよ。


「その、アタルさんは大丈夫なんですか? リーダーになったんですよね?」


 ナミさんが心配してくれている、ちゃんと大丈夫だって伝えなければ!


「大丈夫ですよ、俺の職種、これでも管理職ですよ!」


「……そうなんですか、初耳です。それなら安心ですね」


 めちゃくちゃ不安そうな顔で安心された。しかし大丈夫だ、まだ一人と一匹、全然俺だけの稼ぎでもいける!


「ナギちゃんも、今日から一人お姉ちゃんが増えるからよろしくね」


 いつの間にかナミさんの足にナギちゃんがギュッと抱き着いていたので、紹介しておいた。

 全員に紹介できたし問題ないだろう。あとは一匹か……あいつが一番めんどくさそうだな。人見知りだし。


 ナミさんからスピナさんの部屋の鍵を受け取り、二階へあがった。


「あぁ、実はもう一匹家族がいるんだよ。帰ってきてるかな?」


「一匹?」とスピナさんの声が聞こえたがスルーしとこう、説明がめんどくさい。

 ちなみに俺の部屋は俺がいない間は鍵をかけていない。全部マジックバックに収納してるし、盗まれるものがないのだ。俺がいない間はナミさんやナギちゃんが出入りすることもあるので、布団を収納しベッドを出している。

 扉を開けるとベッドの上にトラが居た。


「トラ、パーティーメンバーができた。スピナさんだ、よろしく頼む」


『見るからに訳ありそうに見えるニャ、パーティーの人選は好きにすればいいけど、おさわりは禁止ニャ』


 ナギちゃんに勝手におさわり解禁させたことを、いまだに根に持っているらしい。


「スピナさん、俺のペットのネコ、名前はトラだ。人見知りが激しくてひっかかれると悪いから、触るのはナシでお願い」


「わかりました。かわいいのに凶暴なんですか?」


「うん、俺以外にはなかなか懐かない」


 トラにも顔を覚えてもらい、スピナさんは部屋でゆっくりしてもらうことにした。晩御飯までは自由行動と伝えてある。


「スピナさんは聖魔法のスキルがあるって言ってるんだけど使えないみたいなんだ。訓練すればつかえそう?」


『……本人次第ニャ』


 やっぱり聖魔法のスキルを持ってるのは嘘ではなさそうだな。

 嘘だったとしても職種に聖女はないよな~。

 さて、スピナさんには何をやってもらおうかなぁ。

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