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27.わたくし、こういうものです

 芋汁がきた。ちょ! 芋汁ってこれか!


 目の前にあるのは、ジャガイモ・人参・タマネギ・肉が入った味噌汁だと思う。見た感じ、味噌っぽいけど……味噌あんの?


「いただきます!」


 まずは汁だ、味噌なのか? 味噌じゃないのか?


 味噌だった……うまい。懐かしい。


「芋汁は初めて食べたが、うまいね。こんなに安くていいのかな?」


「芋汁、おいしいですか?」


 少女が芋汁の話題にくいついてきた。


「うまい! 泊まってる宿でも作ってもらおう」


 なんだか少女は不思議な顔をしている。なんだ?


「この芋汁は昔の偉い人が、お金がない人も食べられるように作った料理だそうです。この芋は毒があるので食べる人は少なくて、味噌も臭いが独特なので、人気がないのです」


「そうなんだ? もうちょっと改良できそうだけど、十分うまいけどなぁ」


 芋汁は、じいちゃんが作ってくれた芋煮に雰囲気が似ている。


 山形で芋煮は里芋を使う、でもじいちゃんはジャガイモと人参とタマネギだったんだよな。肉は何がいいって聞かれるから毎回牛って言ってたけど、じいちゃんの牛肉は毎回米沢牛だった。母子家庭で贅沢できなかった俺にとっては、じいちゃんの芋煮はご馳走だった。

 ちなみにじいちゃんは芋煮を芋汁と呼んでいた。たまに芋煮って言ったり芋汁って言ったりしてたが、出てくる料理はこれだった。変化があったのかはわからない……

 豚汁に片足つっこんだ料理だったけど、じいちゃんの芋汁は本当に旨かった。


 ひとまずこの芋汁はもっと改良し、完璧な芋汁にしよう。じっちゃんの名にかけて……

 そしてギルドで格安に提供してもらえれば、みんな幸せになれるだろう。俺は一つ目標ができたことを心に刻んで、芋汁を完食した。




 俺が食べ終わってから十数分後、少女が芋汁を食べ終わる。

 元々食べるのが遅いのかな? それとも味わって食べてたのかな? 食器を片付けてテーブルに戻る。


「では改めて、私こういうものです」


 両手でギルドカードを持ち、少女が読めるように文字を少女側に向けてギルドカードを差し出す。

 ちなみに現在の俺のランクは、Dランクだ。ギルドカードも銅に変わっている。この一か月で指名依頼こなしまくったからな。ランクアップは当然の評価だろう。


「え? え?」


 と、少女が動揺している。

 あれ? パーティー組んだりするときにギルドカードが判断基準もなるんでしょ? 名刺みたいに使うんじゃないの? よくわからんが、ここで引き返すのは恥ずかしい。さらにグイっと少女側にギルドカードを差し出す……ようやく受け取ってくれた。


 満足げに微笑んでいると少女が『管理職……』とつぶやいていた。やっぱりそこ気になっちゃう?


「アタルって言います。Dランクの冒険者です。あなたは?」


 ちょっと先に進みそうもないので、名乗ってから少女に行動を促す。


「私のギルドカードです」


 俺の言いたいことをわかってくれたらしい。


 鉄素材ならEランクかな? 確かにわかりやすい。

 ギルドカードを受け取り、名前と職種を確認後テーブル右側にギルドカードを置く。もちろんいつでも名前と職種を確認できるよう、自分の方に文字を向けて。


「スピナさん、職種は聖女ですか。すばらしい職種ですね!」


 微笑みながらスピナさんの目を見て話しかける。


「……怪しんだりしないんですか?」


 この少女は何を言ってるんだ? どこにも怪しい箇所はない。むしろ物語の主人公のようじゃないか!


「なにがですか? 聖女ってすごい職種と伺ったことはありますよ」


「はい、私は聖魔法のスキルを持っているのですが、使えないのです。だから今まで誰も信じてくれなくて……その……」


 あぁ、聖魔法スキル持っているから正直に聖女で登録したのに、魔法が使えなくて証明できない的な?

 証明できないと嘘の職業だと思われて、パーティー組んでもらえないもんね。苦労してきたっぽいな。


 少女は下を向いて泣いているみたいだ。こういう時はどうしたらいいんだろう……妻にこういう時の対処法を聞いておくべきだった。


『女の子泣かせちゃったらどうしたらいい?』って聞いて教えてくれたかな? ボコボコにされそうな気がするなぁ。

 わからないときは動かない。良い方向にも働かないが、これ以上悪い状態にもならない……


「あー! なに女の子泣かせてるんですか!」


 エリーさんだ、俺は今、悪い状態になることがあることを身をもって経験した。




 俺は今、エリーさんとスピナさんと向かい合っている。三者面談をしている気分だ。

 さっきまでは、俺主導で面接している気分だったが、一人増えただけで一気に立場が逆転してしまっている。エリーさんは明らかに誤解している。なんとかして、できるだけ拗らせる前に問題を解決しなければならない。


「……これを」


 少し考えて俺は、最善と思われる一手を打った。この状態ではこれが最善のはずだ。

 テーブルに置いた鉄素材のギルドカードを180°クルっと返し、エリーさんへ差し出す。


 エリーさんは、スピナさんのギルドカードを見て固まっている。

 こういう時は余計なことを話すとこじれるからな。さっき黙っててこじれたけど、同じ失敗は繰り返さない! 先人の知恵は集約されて最善の方法として伝聞されているのだ、二度は繰り返さない! でも、二回あったら三回あるから改善が必要だ! でも今回の場合は繰り返さない!


「アタルさんは、これを見てどうするつもりですか?」


 そんなの決まっている。確認する必要があるのか?


「え? パーティーに誘うつもりですけど?」

おまたせしました! パーティーメンバーの登場です!

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