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21.ギルドのお姉さんに受付拒否されてしまった

 宿屋を修理してから10日ほど経った。


 ベイツの街は今、空前絶後の流木ブームに沸いている。夜明けとともに、海岸は人でいっぱいだ。朝マズメの時間帯は、完全に人がいっぱいで釣りにならない。


「朝マズメで釣りは無理だな、魚よりも人間の活性が高い」


 そう独りごちりながら朝食を食べる。


 本日の朝食は、パンとタケダの塩焼きと果実水だ。ちなみに宿屋をクラフト後、俺は特別に飲み放題になった。そう、宿屋のサービスにドリンクバーが追加されたのだ、俺だけだけど……


 始めの頃は、流木がほとんどなかった。俺とトラが根こそぎ拾ったからだけど……


 初日ぞろぞろと海岸に向かった人々が、絶望の顔で戻ってきたのには恐怖を覚えたね! 流木は、海が荒れた翌日辺りがねらい目なんじゃないかとアドバイスしておいた。


 諦めきれない人々が、早朝我さきにと海岸に向かっている。賢い人だと、細かい流木を集めている。早急に家を直したい切羽詰まった人たちは、薪やら原木を用意して冒険者ギルドに依頼を出すようになった。薪だとちょっと出来栄えが微妙だ。せめて原木にしてほしい。


 俺は毎日、冒険者ギルドに依頼がないか確認に向かい、依頼があれば家の修理を行い収入を得ている。

 冒険者ギルドに行く時間は気分だ。相場がわからなかったからギルドに丸投げしたが、依頼人とギルド職員さんが、金額を相談して決めてくれるのでよかった。スキルで一瞬で直るから『数分で終わるのに、こんな値段がするのか』とかのクレームを心配していたのだ。

 時間がかかる仕事には人工がかかるから、値段は上がる、しかし技術が必要な仕事にも、価値が発生するので値段は上がるのだ。技術料ってやつだな!


 ようやく生活費より収入の方が多くなり、生活に余裕が出てきた。日本人は貯金がないと不安になる。余裕が出てきたので、宿を更に一か月延長で泊まることにした。ペットが泊れてドリンクバー付きの宿なんてここくらいだろう! 建物も新しいし、ご飯も作らなくていいからすごく快適だ。

 しかも、一月銀貨十三枚で良いらしい! もうここに住んじゃおうかな? 宿じゃなくて寮にしてくれないかな?




 ギルドの受付嬢、ルイーダさんって言うんだけど、毎回ルイーダさんに向かっていたら「隣の若い受付嬢に行ってください!」と受付拒否された。受付嬢なのに受付を拒否したのだ!

 なにも嫌われることなんてしてないのに……と悲しんでいると、若い受付嬢の教育ができないという説明を受けた。

 ここ……いつも俺しかいないもんね。毎回ルイーダさんに行っていたら、エリーさんはいつまでも新人のままになってしまうのだろう。しかたがないので、以降は若い受付のお姉さん、エリーさんを窓口にしている。一番最初に「アタルさんって呼んでね」と伝えておいた。一番大事なことだからね!


 エリーさんの教育係にようやくなれたルイーダさんは、毎日張り切っている。とはいえ、スマートにすべてをこなす俺が相手では、エリーさんは得ることが少ないだろう。しかし、場数はこなしたほうがとっさの時の対応に違いが出る。

 人間は慣れた頃に失敗をする。というか、失敗をしなければ大きな成長はなかなかしないものだ。今は新人らしく戸惑いながら対応しているエリーさん。慣れて生意気になってきたら困らせてやろう、嫌がらせではない、俺はエリーさんを大きく成長させる壁になるのだ! 特に年寄り扱いしたら容赦しないからな!




 俺には一つ、心配事がある。

 全部の家が直ってしまえば、また収入がなくなることだ。今のうちに次の仕事を模索しなければならない。ちなみにタケダはあまり金にならないことがわかった!


 大きいうえに漁でたくさん獲れるから、安いらしい。

 その代わり街の人たちは、魚を安く食べることができる、しょうがないことだろう。なので漁師さんが買い取ってくれた以外のタケダは、カイリさんに渡している。宿賃を安くしてもらっているお礼だ。あとトラのおやつにもタケダは貢献している。ありがとうタケダ!


 宿で出される俺のタケダは評判がいいと、カイリさんが話していた。そりゃあ、釣ってすぐ〆て血抜きをし、その後時間停止のマジックバックに収納しているのだ、鮮度が違う。血抜きをしているから臭みも天と地の差だろう。せっかくだから内臓と皮もおつまみとして出してはどうかとアドバイスしたら即採用された。

 食堂の常連さんには、内臓系のおつまみは俺が渡したタケダ以外では作らないよう伝えてと、カイリさんには強く言っておいた。この世界にアニサキスがいるのかわからないが、熱を通しても死なないアニサキスっぽいやつはいるかもしれない。というか、異世界のアニサキスなんて絶対ヤバいやつだろ? 念には念をってやつだな。


 そんな生活を送っていたある日、お客さんがやってきた。

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