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19.嘘っぽく聞こえるだろ? 全部本当なんだぜぇ~

「なぁカイリ、紹介してくれんか?」


 イスに座っていたおじいさんが、カイリさんに話しかけている。


「あぁ、アタルは町長とあったことはないのか。こちらはベイツの町長、ゴンさんだ。こっちがアタル。ナギの話だと、昨日冒険者登録したらしい」


 みんなの顔が更にひきつった。


 みんな嘘のように思ってるだろう? 全部本当のことなんだぜぇ~。平気そうなのはカイリさん……あと、奥の方にいるナミさん。こっちに向かって笑顔で手を振っている、余裕そうだな。


「町長さん、昨日からお世話になっています。街で見かけたらよろしくお願いしますね。ところで……えっと、何かあったんですか? 町長さんまでいるなんて、大事件なんじゃ……」


 ゴンさんからも、小さな声で「いっぱいよろしくお願いしたい」って聞こえてきた。混乱しているようだ。


「あぁ、お前の部屋。昨日直してくれたんだろ? めっちゃきれいになっててびっくりしたよ。ありがとな!」


「いえ、あそこだけ変わっちゃって気になったので、材料を拾ってきました。すぐに直しますね、穴が開いた壁に戻すのも変なんで、全部あの壁のようにしちゃいます」


 ガタ、ガタ、ガタ、ガタといろんな人が立ち上がる。なんか雰囲気が怖いぞ、勝手に直すのダメだったりするの?


「も、もしかして大工さんに相談してから直したほうが良かったですか?」


 恐る恐る尋ねるてみる……腰を上げた人たちが、みんな腰をおろし直し下を向く。なんか情緒不安定だな、大丈夫か? ちゃんと寝れてますかー? おいしくご飯食べれてますかー?


「今この街には船大工はいるが、家専門の大工はいない。ここは安全過ぎて、魔物に家を壊されることもないからな。小さな修理は自分たちでやっていたら、大工は全員仕事を探して違う街へ行ってしまったのじゃ」


 と、ゴンさんが説明してくれる。仕事がなくて食っていけなくなっちゃったんだね。


「町長の言う通り、今ベイツには専門の大工がいない。ギルドに依頼してきてもらうにも、こちらに来るまでの護衛や材料運びで金がかかる。ここは北端の街だからな」


 と、カイリさんは教えてくれた。

 南の島なのに北端? ややこしいな、方向音痴だからこういうの苦手なんだよな。


「もしかして、俺に家の修理をお願いしたいってことですか?」


 みんなが一斉にこっちを向いた。最初からそう言えばいいのになんで?


「あー、アタルはスキルに詳しくなかったか。スキルは基本的に秘匿するんだよ。音もたてずに壁を別物にするなんて、スキル以外ありえないだろう? でも他人のスキルには踏み込めないんだよ。だから頼みたいけど頼めない状況が今だ」


 カイリさんがスキルについて教えてくれた。なんか似たようなことギルドでお姉さんから説明を受けた気がするな。


「直すのは構わないのですが、材料がないと直せないんですよ。ちなみに宿屋の壁は流木が素材です。流木は流されている間に弱い部分の削ぎ落されて、固い部分だけが残ってるんで丈夫なんです。ほかの木材でも直せますが、耐久力は落ちると思います」


 ガタ、ガタ、ガタ、ガタとまたみんなが腰を上げだした。

 今から流木探しに行くの? ほとんど拾っちゃったよ?


「あ、俺も生活しなければいけないので、お金が必要なんです。……修理の相場がわからないので、冒険者ギルドで依頼をしてもらえませんか? 材料さえ提供してもらえれば、すぐに直しますよ」


「みんな聞いたか?」


 ゴンさんがみんなに確認すると、静かにうなずき、全員外に出て行ってしまった。


「しばらく流木は見かけることがなくなるな。どれ、夕飯の準備だ!」


 と言って、カイリさんは厨房へ行ってしまった。


「ふふ……アタルさんはしばらく忙しくなりそうね」


 ナミさんがニコニコしながら笑っていた。




 クラフトのスキルくらいだったら別に隠さなくてもいいだろう。生産系のスキルだしな。


「あ、今から宿を直しますね。流木はいっぱい持ってきたんで、一気に行きます。食堂借りますねー!」


「あいよー!」


 と、厨房の方からカイリさんの声が聞こえてきた。

 どれ、じゃあテーブルとイスをどかして流木を取り出そう。


 テーブルとイスは、ナミさんとナギちゃんがどかすのを手伝ってくれた。空いたスペースにどんどんと流木を積み重ねていく。

 食堂一杯に積まれた流木、これくらいあれば余裕で足りるだろう。


 それじゃあ、宿全体をイメージしてっと、クラフト!


 宿がまぶしい位に輝き、収まった時には高級感漂う木造の宿屋が現れた。


「よし、これでしばらくは壊れないでしょ!」


 俺は一旦外に出て宿全体を見渡し、満足げにうなずくのだった。

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