156.<<閑話>>グランディール公共部建設課第一班
領主様と面談を行い一年が経った。
公共事業は順調で、イレグ領は現在いろんなところで道路建設が進んでいる。とある、公共事業現場、道路建設しているのはグランディールの建設課のメンバーだ。
グランディール建設課、第一班長ランマーは今日も黙々と道を木槌で叩いていた。
「そこが少し浮いているぞ! 叩けー!」
茶色のオーラを纏った作業員たちがランマーが指示した個所を叩く。
ドゴォーン! ドゴォーン! ドゴォーン!
グランディール建設課、基本カラーは茶色。彼らは公共事業の土木をメインに活動している。
土木と言っても多岐にわたり、道の舗装から、畑の区画整備、家屋の建築などもこなす。
基本カラーが茶色なだけで、赤や青のオーラのメンバーもたくさんいるが、建設課のメンバーは総じて『ツッチー』と呼ばれた。
今回の作業は道路の舗装。ランマーが新入りに説明するときは「道路の凸凹を無くす仕事だ!」と説明している。
しかし実際はそんなに簡単なものではない、グランディールのマスターが考案した『区画整備』は力だけあればいいものではない。
しかし、力が必要なのも事実。
当初ランマーは肉体労働が苦手だった。どちらかというと、机に向かい書類仕事の方が向いていると考えていたので購買部を希望していた。
しかし、どこから聞きつけたのか公共部部長のシャッドさんから「ランマーさん、ちょっと建設課で手伝ってくださいよ。労働後にはおいしいお肉をご馳走しますよ」という誘いを受け断り切れなかった。
なぜならシャッドさんは公共部の部長でありながら、調理部部長のカイリさんに肩を並べるほどの料理の腕を持ち。その料理は王国でも一流レストランのシェフすらうならせるほどの腕だからだ。
そのシャッドさん本人から『おいしいお肉』のお誘いを受けて断れる人間はベイツの街に何人いるだろうか? 多分いない。
「みんな頑張れー! この仕事が終わったら肉を食おう! 腹いっぱいだ! タンパクシツは筋肉を作る! 今日より明日の方が楽になるぞ。明日も肉を食えば明後日はもっと楽になる! ファイトー!」
「「「「いっぱーつ!」」」
この掛け声を最初に考えたのはマスターだと聞いたことがある。実際は1発で終わらず、まだ数時間頑張らないといけないのだが……
マスターの考えた区画整備はイレグ領の流通を大きく変えた。区画整備によりベイツの街から伸びる道は基本直線になった。
できるだけカーブはなくし、馬車のスピードを落とすことなく通行できるようにする。ベイツの街には多くの馬車が毎日通るのだが、この区画整備のおかげで馬車同士事故が減り、渋滞することもなくなった。
道を新たに建設するにあたって畑を移動しなければいけない農家も多々出たが、そこはツッチーの得意分野、新しく与えられた畑は作物の育ちがいい。
理由は茶色のオーラの特性によるものだが、農家の全員が茶色のオーラを持っているわけではない、本来ならばグランディールに『肥料』の依頼をしなければいけないのだが、区画整備に協力した農家には領主様が定期的に『肥料』を行ってくれる保証が付いたため区画整備に当たった農家たちは逆に喜んで畑の移転を受け入れた。
「班長! あそこに凹みがあります!」
「そうか! そこに凹みに砕石を撒けー! そして叩けー!」
道の凸凹を誰でも簡単に見つけることができる道具が開発された。それは今のところマスターしか作ることができない精密機器だ。マスターは『スイヘイキ』と呼んだのでスイヘイキで定着した。
ヘイキという名前なのに武器にはならない。いや、これで殴れば怪我はするだろうが殴る奴はいないだろう。なんたってこれは精密機器なのだ。なんとこのスイヘイキの中には泡が入っているのだ! この泡が肝でこの泡が真ん中にあると凸凹がない証明になる。
また、目印の線も数本あり、その線に合わせて道を作れば坂道を作ることも可能だ。2本目の線で坂を作れば1メートル先には1センチ高くなり、3本目の線で坂を作れば1メートル先には2センチ高くなる優れモノなのだ。
そして、再度言うがマスターしか作れない。強い衝撃で泡が狂えば坂がうまく作れない。
ランマーは先の段差を確認後、どのくらい先から傾斜を作ればいいか計算するのが得意だった。その能力を見抜いたのがシャッドさんである。シャッドさんには頭が上がらない、仕事はつらいが飯がうまい。そして筋肉もモリモリついていく。タンパクシツは偉大だ。
「班長! もう少し行くと段差があります。結構でかいやつです!」
「どれ……1メートル先に1メートルの段差か! よし、ここからは『イッパーで行くぞ!』」
「い、いっぱーーーーつ!」
「こら、新入りさん! コウバイのイッパーは掛け声じゃない! 勉強しておかないと出世できないぞ! あと、購買部のコウバイでもないから注意が必要だぞ! みんな最初はそこでつまづく、わかんなかったらいつでも教えるから聞け!」
「はい!」
「今日は100メートル先のコウバイをいっぱーで作ったら上がりにするぞ! ファイトーーーー!」
「「「「「いっぱぁぁぁつ!」」」」」




