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152.領主面談その5

ブクマ100になりました。ありがとうございます!

「初めて食べますが、とてもおいしい料理ですね」


 俺は今、領主様と晩御飯を食べている。


 そう! 晩御飯を食べているのだ! いろいろあってお昼ご飯を食べ損ねた……


「うむ、美味じゃ」


 なぜかわからないが、守護龍のヘラヴェーラ様まで同席しているのだが、普通に馴染んでいる……いや、隣で食事をしているフロレンス様の動きがぎこちないから緊張はしているのかもしれない。


「この唐揚げはエールに合うぞ! 好きなだけ食すがいい!」


 あぁ、ここにさらに馴染んでいる龍がいるんだった。

 ドラッシェン様は上機嫌にヘラヴェーラ様とアタッツ様に唐揚げとエールを勧めていた。




 ある程度食事が進んだところで本題にはいる。


「アタッツ様、我々ギルドは芋汁を大陸に普及させる計画を進めています。すでに各ギルドには連絡済みで、近いうちに王国のすべての人達が手ごろな価格で芋汁を食べることが可能になるでしょう。私のミスで領主様の許可を取ることを忘れていました。申し訳ありません」


 いやぁ、難しい言葉がわからない。とにかく、謝らなければいけないのは確実! できるだけ丁寧に謝ったつもりだ。それに、たくさんおもてなしもした。晩御飯までの間にピアスの紹介をし、現在領主様夫妻の耳にはピアスが付いている。もちろんベイツで流行っているお揃いカラーのピアスである。

 王族の身体に穴をあけるのはどうかと思ったのだが「特産品を身に着けれない領主がいるものですか!」との強い願いを受け、俺がグサッとやった。もちろんポカリエスの出番はなかった。


「いえいえ、報告は上がってましたので問題ありませんよ。それに……素晴らしい味ですね」


 今皆の目の前には芋汁がある。これはブルーブルの肉が入っていたりでお値段高めの方の芋汁だが、低価格の方も負けず劣らずの味に仕上がっている。


「あぁ、これはうちのクラン専門店でのみ販売予定の高級版芋汁です。さすがにこれを低価格で提供してしまうとクランが傾いてしまうので、貴族やお金がある方用に提供できるように計画中です。しかし、低価格版でも味は今までの芋汁とは別物になっています。貴族や高ランク冒険者と、いちいの人々とでうまく分けられればトラブルも起こりにくいかと考えているのです」


 値段が安いところに上流の人間が来るといろいろと問題が起きる。最悪、食に困らないように低価格で提供するつもりだったのに、おいしさのあまり堅苦しい人間ばかりになり、庶民が近づけない店になってしまったら意味がないのだ。

 まぁ、基本的にギルドの食堂で提供するのだから心配はいらないと思うのだが……興味が持った上流の人達が食せる店も必要だろう。もしかしたら、援助とかあるかもしれないし……


「ちなみにですが……低価格版はいくらで提供する予定ですか?」


「今のところ、成人は鉄貨3枚、未成年は鉄貨2枚を計画しています。ちなみにギルドの食堂には芋汁1杯につき、鉄貨2枚をギルドにお支払いします」


 そう、この計画は薄利多売なのだ。というか、子供が食べれば利益はない、鉄貨2枚で売り、その利益2枚はギルドに支払うのだ。薄利というより赤字なのだが……というか、ギルドも野菜を提供しているからどうなんだろう?ギルドもカツカツかもしれない。

 しかし、クランで考える芋汁の目的はひもじい人をなくすこと。継続できるならば赤字でもなんとかなる、それに……


「な! それでは儲けがないのでは?」


 そうだね、儲けがないね。国としても税金が取れなくて困るっていう意味合いもあるのかな?


「そこで、この芋汁です。この芋汁は高級版なので銀貨1枚で提供します。鉄貨2枚の芋汁と銀貨1枚の芋汁で不満は出るかもしれませんが、その売り上げの一部を鉄貨2枚の芋汁の不足分に補填するという情報を各店舗に張り出す予定です。ややこしいですが……教会で治療を受けると寄付をするんですよね? それと同じようなものです、高級芋汁を食べて少し多めに支払い、その一部が鉄貨の芋汁の寄付に回る。まぁ、高級芋汁が売れなくてもギルドはたぶん赤字になりませんし、損をするのはうちのクランだけ……大丈夫ですよ」


 領主のアタッツ様は俺の話を聞いても理解できないようだ。それどころか、少しづつ顔色が良くなくなっている気がする。


「「おかわりー! 唐揚げと芋汁も追加で!」」


 龍の二人には関係ないようでおかわりしている……




「それでは……クラン『グランディール』が疲弊するまで芋汁を提供になってしまうのでは……最悪解散……」


 領主様は領の税金とか気にしてるのではなく、クランの心配をしてくれているらしい。一日一緒にいたが、クランが規格外だったとか関係なく善人なのかもしれない。芋汁の報告は上がっていたようだし、クランがやろうとしていることを知りつつも今まで口を出さなかったのかもしれない。

 あぁ、俺が最初にたどり着いたところがベイツで良かった。街の人達もみんないい人だし、領主様もいい人だ。


「大丈夫ですよ。クランの活動は芋汁の事業だけではありません。アタッツ様も今日視察されましたよね? うちのメンバーは優秀です、冒険者としても、そして生産者としても。ひとつつまづいた位ではびくともしませんよ」


 俺の話を聞き、隣に座るフロレンス様の姿を見たアタッツ様の顔色に徐々に赤みが差してきた気がする。

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