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151.キンピカ龍のお願い

「あれ? 最初は古龍様を護るために来たとか言っていませんでしたか?」


 なんだかよくわからないが、俺は今、助けに来た龍から逆にお願いされている。はっきりいってよくわからない……というか、龍が対処できない問題を人間には解決できないんじゃないだろうか?


「そうだ、古龍様を助けるために来た……古龍様なくしてはこの世界は破滅に向かってしまう」


 なんか深刻そうな問題がありそうだが……ドラッシェン様がやられるのが見当もつかない。だって、スピナさんの全力を力でねじ伏せたんだぞ? 天災聖女スピナさんの地震アタックを地震を起こさずに止めれるのは他にいないんじゃないだろうか?

 いや、このキンピカ龍も守護龍とか言っていた……できるのかもしれない。でも、それくらい強かったらお願いしないか……


「古龍様はもっと北の島で安全に過ごしてるので大丈夫だと思いますよ」


 実際はすぐ目の前にいるのだが……それを認めてしまうわけにはいかない。認めてしまうと俺は古龍の息子ということになってしまう。そんな勘違いをうむわけには絶対にいかない!


「……そうだな。それに古龍様はこの世界には関知しない」


「うむ」


 うむじゃねーよ! せっかくごまかしているんだから頷くな! みんな気が付いていないよね? ちょっと前に龍が海辺で見られて以降、だれも聞いてこないから大丈夫だと思うけど……そういえばなんかみんな跪いていたっけ! なんかだんだんやばい気がしてきた。


「そこで、トシオ殿の孫の貴殿にお願いしたい」


「あ! アタルと申します……」


 そういえば名前を言ってなかった気がする。今更だけど名乗っておかないと永遠にトシオの孫になってしまう。


「そうだ! 孫の名はアタルだったな。現在この大陸で不穏な動きが出始めている。そう遠くなく大陸中が魔物で埋め尽くされるだろう。我だけでは対処できない。協力をお願いできるか?」


 いや、いきなり守護龍様でも対処できないことをお願いされても困るんだけど……役職が上の人がキャパオーバーの仕事を部下に押し付けるのはパワハラだぞ? この世界にパワハラがあるか知らないけど……


「ちょっと相談しますね……」


 俺はキンピカな守護龍様にお断りして領主様のところに向かった。





「なんだか大変な話を持ち掛けられたのですが、どうしたらいいでしょうか?」


 困ったときは上司に相談がいいだろう。運がいいことに俺の直属の上司、ギルドマスターのベティさんと、ちょっと部署が違うけど、管轄を持つ領主様のアタッツ様が居る。こういうときはホウレンソウだ。

 今まで領主様に報告したことないけど……そんなことはこの緊急事態には些細なことだろう。


「おい! どうしたらいいでしょうじゃないだろ! やらない以外の選択肢がない」


 ベティさんはやっぱり龍化したら毒吐きそうだな……


「守護龍様の依頼です、我国全力で応えます!」


 なんだかみんなやる気だ。俺はあんまり乗り気じゃないんだけど……ギルドと領主にお願いすれば……いや、どっちにしてもクランに依頼が来る案件じゃないのか。

 いや待て……領主様が騎士団を持っている可能性もあるんじゃないのか? 今回は連れてきていないけど自分の領にいる可能背もゼロではない! ベイツでは見たことないけど……ペレさんは騎士だけど常駐してないし……


「ギルドも国も要求に応えるという感じですね? 結果的にうちのクランに依頼が来るということでいいですか? それとも、アタッツ様の騎士団でなんとか行けそうですか?」


「……お願いできますか?」


 アタッツ様がすごく期待を込めた目で見てくるが……騎士団はどうなった? 持ってないから頼まれたのかな? あー、そもそも、頼まれたの俺だしな……


「クランには依頼として出す、依頼者は領主または王国となるだろう」


 王国かぁ、ポカリエスは慈善事業として安く依頼受けてるんだけど、今回も安かったりするのかな?


「今回は危険が伴いますので報酬も多めにお願いしますね……」


 俺はしぶしぶ話をまとめて守護龍様の元に向かった。




「マスター、国を守るんですよね! 聖女として全力を尽くします!」


 スピナさんはお金関係なく守るって言うよね。


「訓練の成果を発揮する時が来たようだな!」


 ポッパーさん、いつからそんなに戦闘民族みたいになった。


「肉は全部回収しようぜ!」


 魔物の肉で新しいレシピでも作るんだろうか? 





「相談してきましたが、協力依頼を受けようと思います。具体的には問題が浮き彫りになり次第協力要請を受けるといいことで……それでいいですか?」


 今のところ、まだなにも問題が起きていない。だって、ベイツの街周辺には魔物が居ないのだから。


「問題ない。しかし、兆候は見えている、準備だけはしっかりしておいてくれ。それと、これは今回の協力の礼だ」


 どこからともなく守護龍様が卵のようなものを取り出した。卵にしてはとても大きいのだが……卵だ。でも、キンピカじゃないからヘラヴェーラ様の卵ではないのかもしれない。


「それは私の娘だ。大事に育ててくれ」


 守護龍の卵だったらしい……


「え? 龍なんて育てたことありませんよ?」


 猫ぐらいしか俺は育てたことがないぞ? 温めればいいの?


「そこの娘に預けておればよい」


 ドラッシェン様がナミちゃんを卵管理人に任命した。よくわからないけど、同じ龍のドラッシェン様がいうのだから大丈夫なのだろう。


 ナミちゃん、君に決めた!


「ナミちゃん、守護龍様の娘さんだって。ナミちゃんなら育てられるみたいだから卵お願いしていいかな?」


 俺はナミちゃんに卵を預けた。ナミちゃんの体には随分と大きな卵だが、この世界の子供たちは身体強化ができるせいか、かなり力持ちだ。


「え? いいの? 産まれたらトラちゃんのようにペットにするね。たのしみ~]


 両手で大事そうに守護龍様の卵を抱えて嬉しそうにペット宣言をしたナミちゃんを見て、ドラゴンのペットはありなのかとちょっと考えてしまった。

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