150.珍入者
「なんだかすっごくキンピカなドラゴンですね。領主様は知ってますか?」
「え? どうして守護龍様が北端のベイツに!」
守護龍様? まったくもって話が見えないのだけれども、ドラッシェン様がお客さんと言うのだから客なのだろう。やっぱりもてなさないといけないのだろうか?
「守護龍様ということはモンスターとか、討伐対象ではない、ということでいいですか?」
一応確認だ。というか、敵だと困る、龍ってなんか……強そうじゃん? っていうかドラッシェン様の親族とかそういう感じだったりするのかな? 色違いだけど……ということは、この龍はドラッシェン様の客!?
「シェンさん、知り合いですか?」
俺はドラッシェン様にこそっと聞いてみた。知り合いだったら穏便に話を付けてもらい、お帰り願おう。俺は龍にまでおもてなしできるくらい器量は大きくないのだ。というか、ドラッシェン様の客なら俺の客ではないのだ。もっと北の、ドラッシェン様の島でシーサーペントでも出してもてなせばいいと思うのだ。
「あぁ、この大陸の守護を任せているな。たしか王都の南にある山岳部に住んでいるはずだ」
任せているって何? 部下とかそういう感じなの? あぁ、大陸を護っているのね……大陸が関係するならベイツも関係あるし、ちょっとおもてなしをしなければいけないかもしれない。
それにドラッシェン様の知り合いなら……父親の職場の同僚って感じだろうか? なんだかめんどくさい感じだな。知らんぷりもできないし……
知らない龍ならお帰り願いたいが、知っている龍、しかもドラッシェン様の職場の同僚ともなれば他人ではないだろう。なんとか穏便に行こう! というか、みんな俺の後ろに集まりだしているけどどういうこと? なんか俺が交渉しないといけない感じになってるじゃん。
「あの~、もしかして人型になれますか? 大きなサイズだとみんな怖がっちゃうのですが……」
言葉が通じるのかはわからないが、ドラッシェン様も人型になれるのだ、このキンピカ龍も人型になれる可能性がある。ひとまず、こんなに大きな龍のままで居られると落ち着かないのだ。
キンピカ龍はしばらくこちらを見た後、徐々に縮んでいき人型になった。
人型になったキンピカ龍は金髪美女だった。さすがに龍型だと性別がわからないが人型になればわかる、あと、身体の色は髪の色になるのだろうか?
ということは……ポッパーさんが龍化できればレッドドラゴンか! かっこいいじゃないか! カイリさんのブルードラゴンもいいな!
いやまて! ベティさんが龍になったらパープルドラゴンじゃないか……なんか毒吐きそうで嫌だな。
「我はルデンの守護龍ヘラナーヴェと言う。北方に大きな力を感じたので参った。まさか……古龍様を討つのではあるまいな?」
あぁ、ドラッシェン様にオーラ全開の人々が戦いを挑みまくっていたから勘違いしちゃった? いや、ちょっとまて! それよりも重要なことがある! そこを訂正しなければ!
「ヘラナーヴェ様ですね。現在、ベイツの街領主様が訪問されているので、みなで日頃の研鑽を披露していたところだったのです。古龍様を討つなんてとんでもないですよ」
「なんだと! しかし先ほど確かに全員で寄ってたかって攻撃していたではないか!」
なんか怒り出したぞ! あ、上司がやられそうになっていたから助太刀に来たのか? でも、実際はこっちが返り討ちにされた状態なんだけど! 心配しすぎなんじゃない?
「なんか勘違いされてませんか? だれも古龍様となんて戦ってなんかいません。というか、ここに龍なんて、あなたしかいないじゃないですか!」
そうなのだ、ここに龍は1匹しかいない! それはめちゃくちゃキンピカな龍だ! まったくもう失礼しちゃうわ!
俺はチラッとドラッシェン様の方を確認した。まさか龍化しないよな……あぁ、ドラッシェン様は人型でもキンキラキンだったわ! すっごくややこしい!
「いや、そこにいるのは……」
ヘラナーヴェという龍は、あろうことかシェンさんを指さして俺の言うことを訂正しようとしている。だけどそれは俺は絶対にさせない。というか、それがわかるとめんどくさくなる!
「そこにいるのは父です!」
「にゃー」
なんかトラまでしゃしゃり出てきやがった! 最近寝るとき以外、俺の近くに居ないくせに今日に限っている。まさかご馳走のにおいに釣られたのか!
あっちの世界の時は脱走常習犯で家に入れるのにすごく苦労したのに! 大好きなアラスカで釣ったり、アラスカのガワに付いていたビニールをシャカシャカさせて呼んだりと大変だった。なつかしいな……
「トラ殿もいるではないか! トシオ様はいないのか?」
まさかのトラとじいちゃんの知り合いか! まったくもってややこしくなってきたぞ!
「トシオは私の祖父です。トラはペットですので、何かの間違いじゃないですかね?」
「なに! トシオの孫だと! トシオは孫に会いたいとよく言っていたが会えたのか?」
なんか心配されている……会えていないんだけど、がっかりさせちゃうかな?
「残念ながら会えなかったです、しかしトラと会えましたし、元気に生活できています」
「うむ、トシオが願った通りの生活できるように我が力を貸した」
なんだかドラッシェン様がうまい具合に説得してくれているような、そうでないような……
「そうですか……トシオ殿のお孫様であればその規格外の魂にも納得できます」
なんかかってに規格外扱いされているけど、魔力循環はできないし、運動してもお腹は全然凹まないし、悪い意味で規格が違う気がするんですよ……
「トシオ殿のお孫様……ここで出会えたのも何かの縁。お力をお貸しくださいませ」
なんかドラッシェン様を護りに来たはずのキンピカ龍から、いつの間にかお願いされた……




