149.領主面談その4
「領主様に訓練の成果を見せるんだ!」
「「「「「「うおぉぉぉぉぉぉ!」」」」」」
俺は今、訓練場にいる。
ポッパーさんの掛け声に、たくさんのクランメンバー達がオーラを纏いながら呼応している。
どうやら訓練の内容は乱戦のようだ。色とりどりのオーラを纏ったメンバー達がいろんな人たちと戦っている。
「こ、これは……」
わかりますよ、訓練というかケンカみたくなってるし、それに……
「眩しいですよね」
「「えっ!?」」
領主様とフロレンス様がぎょっとこっちを見た……え? 眩しいんじゃないの?
「眩しいですよね? サングラス要ります? これ、かっこいいでしょ?」
俺はクラフトで作ったサングラスを2人に手渡した。もちろん俺は装着済みだ。こんなに激しく乱戦しているメンバーを見ていたら目がチカチカしてしまう。それどころか、眩しすぎてくしゃみが出る可能性だってある……俺は太陽を見るとくしゃみが出る、選ばれた遺伝を持つ人間なのだ。
「「……ありがとうございます」」
一応サングラスは受け取ってくれたがなんだか、複雑な表情をしている。早くつけた方がいいよ? くしゃみとかでたら大変じゃん。今ハンカチ持ってないし……
「皆さん頑張ってますよね。ベイツの街には魔物はいませんが、自衛の手段は必要です。私たちは商売もしますが本質は冒険者、依頼があれば駆けつけますよ」
「そ、それは心強いです。父にはグランディールは特別だと聞いていましたが、まさかこれほどまでとは……」
領主様のお父さんって王様だよね? 王様に戦闘訓練は見せてないんだけどなぁ……そんなことを考えていたら、訓練場にペレさんの姿が見えた。
「ペレさん、お風呂入ったのに訓練に参加するなんて、また汗かくじゃん」
俺の独り言は誰にも届かなかったようだ……なぜならみんなペレさんに釘付けだったからだ。
ペレさんはポッパーさんとカイリさんとで三つ巴の戦いをしていた。それにしてもペレさん強いよね。ポッパーさんもカイリさんも毎日訓練を頑張っているけど、ペレさんの方がまだ余裕ありそうに見える。
「騎士団長……」
「ん? 騎士団長はうちのクランにはいないですよ?」
「……ペレ殿は近衛騎士の団長なのですが、ご存じなかったのですか?」
え? そうなの? 信頼できる騎士ってしか聞いてないぞ? っていうか、近衛騎士団長がここまで単独で来てたの? 王国の方で何かあっても大丈夫なの?
あ、もしかしてポカリエスってそこまで信頼できる人じゃないと任せられない物だったとか?
「王様は信頼できる騎士ってだけで……」
「そうですか……」
そんな話をしていた時、ピタッと戦いがやんだ。
そしてゆっくりと訓練場の真ん中に歩いてくる人物が一人……いや、一龍?
「あの方は?」
「ええっと……父です」
少しの間があり、ドラッシェン様が声をあげた。
「久々に我が相手をしてやろう。全員一斉にかかってこい、我に一撃を与えられたものには褒美をやろう!」
アロハシャツにハーパン姿のキンキラキン超絶イケメンが、まちがいなく褒美を渡すはめになるフラグをたてにたてまくったセリフを言っている。
「……すみません、間違えました。知らない人だったようです」
説明をミスったと判断した俺は、後悔しながら発言を訂正した。
そこからはまったくもって大変なことになった。
前後左右いろんなところからクランメンバーが攻撃を行い、それをドラッシェン様が交わしたりいなしたり、たまに反撃したりで大乱闘になったのだ。
ポッパーさんも、カイリさんもドラッシェン様に一撃をもらい気を失ってしまった……気を失っているだけだよね? 手加減してるよね? あ、クランクさんや薬師のみんながポーションを使っているから大丈夫そうだ。
そして、ペレさんもドラッシェン様には一撃を与えることができず、反撃をもらって退場した。
「まさか、騎士団長まで……」
領主様が驚いているが……
ドーン、ドーン、ドーン
この地震は我らがスピナさんが登場だろう。いつもはダンジョンで訓練をしているのだが、今日はお披露目なのかな? トラもドラッシェン様も止めないところを見ると問題ないのだろう。
「じ、地鳴りが起こっています! 大丈夫なのでしょうか!」
「あぁ、これはうちのクランメンバーのスキル発動の予兆なんですけどね。実は聖女のスキルっぽいんですよ。内緒ですよ?」
王様には聖女のことをよろしくとお願いしていたけど、息子の領主様には連絡がいっていたのだろうか?
初耳だったなら王様ゴメン! バラしちゃった!
ドドドドド……
スピナさん、いつもより多く魔力を回してるのかな? めっちゃ揺れるじゃん。
スピナさんがキラキラと光りを纏わせドラッシェン様に突っ込む。
そして、ドラッシェン様もそれを迎え撃った。
両者の拳がぶつかり、すさまじい衝撃の後、ものすごい轟音が鳴った。
「あー、スピナさん負けちゃいましたかー」
訓練場の中央に立っていたのはドラッシェン様だ。
スピナさんは衝撃で吹っ飛んだのか、かなり離れたところに倒れ、近くの薬師さんからポーション飲ませてもらっている。
「ワハハ、皆なかなか強くなったではないか! しかし、まだまだ伸びしろがあるな。精進するといい。それと客が来たようだぞ」
ドラッシェン様が空を見ると、そこにキンピカの龍がいた。




