148.領主面談その3
久々の更新です。
不定期になるかもですが、頑張ります。
俺は今、クランハウス内にあるお風呂に入っている。
なんでかわからないが、領主様、ペレさんと一緒にお風呂に入ることとなったのだ。
いや、ペレさんは馬に乗って腰が痛かったようだし、領主様も緊張気味だったので裸の付き合いも悪くない。しかしだ! それにしても、俺が主導でおもてなしをするつもりだったのに、サラさんやらスピナさんからあれよあれよといわれ、いつの間にかお風呂に入ることになってしまった。
「いや~、クランハウスのお風呂も立派ですなぁ。それになんだか魔力を感じますぞ」
いや、魔力なんて全然感じないですよ? 勘違いじゃないですか? もしかして、この水誰かが魔力で補充してたりする? 井戸で組むのがめんどくさくてやっちゃった感じ?
青いオーラの人は、水を呼び水に魔力から水を出すことができるが、非常に燃費が悪い方法だったはずだ。そんな苦労をしてでも井戸に行きたくなかったということは、それだけ井戸の水くみが大変なのだろう。いつもポッパーさんが頑張ってくれていたのは把握していたが、ちょっと仕事の配分を考え直さないといけない。
燃費が悪い方法の方が楽に感じる仕事はよくない。3Mは取り除かなければ仕事のモチベーションやギルドメンバーの定着率にもかかわってしまうかもしれない。
それにしても、裸になると俺のお腹のポッコリ具合が気になるな。俺は領主様とペレさんをちらりと見て思って。どうしてお腹は引っ込まないのだろう? 運動もしているし、食事にも気を付けているはずなのに……ペレさんも領主様も腹筋が6つに割れているのに、俺のお腹は横にだけ3つに割れている……というか、割れているというより筋が入っているだけなのだが……なんか申し訳ない。
「井戸水で沸かしているはずなんですけどねぇ。っていうか、魔力……感じますか?」
そう、俺は何も感じない。あったかくて気持ちいということしかわからないのだ。
「なんだか力が湧いてくるような気がします」
領主様も訳が分からないことを言い出したぞ……お風呂に入ったら、普通は力が抜けるんじゃないの?
「「「失礼します!」」」
突然男性が3人お風呂場に入ってきた。
3人とも服を着ているし、間違いなくお風呂に入りに来ているわけではないだろう。あ、もしかして、本当に失礼しに来た感じ?
「領主様にベイツの街の服飾について説明したく参りました。もしよければ、お風呂上りにそちらをお召いただきたく説明に参りました」
ん? よく見ると服飾のお仕事をしている人かな? ちょっと顔と名前が一致しないときがあるからな……というか、ほとんどエヴァさんにお任せしているからちょっと自信がない。
もしかしたら一番失礼なのは俺だったかもしれないな……でも、お風呂が上がってから説明でもいいと思うんだ。どうしてお風呂中に説明始めるかな?
そこからは男性3人の服飾品アピールタイムになった。
ちなみに説明している男性のほか2名はモデルとなり、いろいろな服の説明をしていた。お風呂場だけあり、2名のモデルはその場ですっぽんぽんになり、着替えながら説明している。もしかして、脱いで着るの見せるためにお風呂場に来ちゃった? 着方は領主さんの身の回りを見てくれる人に説明すればよくないのではないか? 俺のラノベ知識だと、偉い人はメイドさんとか執事さんに着せてもらうのだけれども……領主様も真剣に話を聞いているし、偉い人でも自分で着替えるものなのかもしれない。
そして、領主様に服を選んでもらうことになり……領主様はフォーマルなスーツを選んだ……というか、それを着るように誘導されているような感じにも見えた。
「こんなに立派な服を頂いてもいいんですか?」
「どうぞどうぞ、自分の領の特産品ですよ。着替えも用意しておきますので、ぜひ外遊の時にでも皆さんにアピールしてくださいね」
お風呂上りに、新しいスーツに袖を通した領主様はなんだか顔が赤い。のぼせちゃったのだろうか? それとも新しい服で恥ずかしいのだろうか? まぁ、今領主様が来ているスーツはこの世界では珍しいかもしれない。この世界の貴族は結構派手目な服を着るとサラさんに聞いた。しかし、領主様が来ているのはフォーマルなスーツ。黒色で軽いストライプが入っているスーツなのだ。
というか、エヴァさんに服のアドバイスを求められたときに俺はこれしか思いつかなかった。上品なオシャレにスーツ以外何があるというのか……ジャージなんて論外だし、ジーンズは作り方がわからない。おじさんにはハードルが高すぎる。このストライプのスーツだって、専門店に行き今の流行を聞いたときに教えてもらった奴だ……その流行だって俺があっちにいた時代からさらに20年前の流行だから今はもっと違うのかもしれないが。
余談だが流行のスーツは専門店では買えなかった、なぜなら高かったからだ。いくら2着目は半額ですよと言われても、スーツは1回で1着しか着れない。妻が「ウフフ……検討してきますね」と返事をし、手を引かれ店から出て、ジャ〇コにて同じようなストライプのスーツを購入した。それを転生? 転移? する20年ほどお祝いの席などで着ていた。もちろん2着目は必要なかった。というか、1着目ですら数回しか着ないくらいお呼ばれもなかったのだが……
「フロレンス……」
あぁ、そうだったそうだった。男のおしゃれはスーツしか思いつかなかったが、女性のドレスはいろいろアドバイスしていたんだった。
だてに既婚者じゃない、結婚した時に妻のドレス選びで嫌というほどカタログを見たのだ。女性ものなら溢れるほどイメージがわいてくる! いや、溢れるほどというのは言い過ぎだ……それでも男物よりは分かる。まぁ……あっちの記憶があるってだけで、俺が考えたわけじゃないけどね。
「どうでしょう? 似合っていますか?」
「あぁ、とても似合っている」
なんかいい雰囲気だけど、どうしよう? しばらく放置しておく? ちょっとこういう雰囲気の時にどうしたらいいかわからない。
ちなみにフロレンス様はAラインドレスを着ていた。このドレスはこの世界にもあるが、花柄のフリルだったり、シースルー? よくわからないが透けているのを重ねて「こんな感じ」って説明したのがエヴァさんや、他多数の服飾班の皆さんに受けたらしく、なんだかすごい出来になった。
ひとまず領主様に喜んでもらえたなら何よりだ。これで、「うちの領にはふさわしくない、却下!」なんて言われちゃったら大変だもんね。
そろそろお腹すいちゃったな。お風呂に入って身なりも整ったしお食事会の頃合いだよね。
「それでは訓練場に案内しますわ。皆さんお待ちです」
サラさんの一言でご飯はしばらくお預けだと俺は悟ったのだった。




