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146.領主面談

 俺は今、ベイツの街南門で領主様を待っている。


 なぜだか知らないが、王様の信頼厚い近衛騎士ペレさんが先ぶれとして来てくれた。どうして領主様と会うのにペレさんが来たのかは謎だ。一応ポカリエスの受け取りに来たとは言っていたが……もしかしてなにかやらかすとでも思われているのだろうか?


 まぁ、王様の心配も分かる。俺は王様に結構失礼な態度をとってしまった気がするからな。王様が寛容な人で助かった。でも、今回は心配いらない、なんてったって今の俺には仲間たちが居る。その仲間たちが全員口をそろえて「問題ありません!」と報告してくれているのだ、問題ないって言っているのだから問題ないのだろう。

 そこら辺は仲間達に任せて、俺はおもてなしに専念することにする。


 すごい今更なのだが、ベイツが所属している領はイレグという領というらしい。そして領主様の名前が『アタッツ・グ・イレグ』さんらしい。ペレさんの持ってきた手紙を読んでわかった。

 手紙の内容は、『今日のお昼前にお邪魔するからよろしくね』的なことが書いてあったので、ペレさんに『もてなしの準備は完了してるから楽しみにして来てね』的な返事を書いて渡しておいた。一応サラさんからは何も言われなかったが、よくよく考えると王様と会ったときはクランクさんが段取りしてくれていたからクランクさんに聞いた方が良かったのだろうか?


 今更悩んでもしょうがないか、領主様ってどのくらいの距離に住んでいるのかな? もしかして早く待ちすぎたかな? チラッと隣にいるサラさんとスピナさんを見てみたが時に気負った感じもない。ということは、これが普通なのだろう。よしよし、うまくいっているようだな。俺がおもてなしとは何かを皆に見せつけてやろう。




 そんなことを考えていたら、ものすごい勢いで馬が走ってきた。馬に乗っているのはどうやらペレさんのようだ。俺が手を振るとペレさんがにこやかに手を振り返してくれた。それにしても、あんなに揺れる馬の上で良く片手運転できるな……俺もシルバーに乗ればあんなことができるだろうか?


 おや? ペレさんの後ろにも誰か乗っているな……見た感じ若そうだな。年齢は成人したてくらいに見えるけどペレさんの息子さんかな?


「アタル殿、お待たせしました。領主を連れてまいりました!」


 俺の前に来たペレさんが片膝をつきながら領主様を連れてくた旨を報告している。えっと……いつももっとフランクに話してるよね? なんで片膝なんてついてるの?


「ありがとうございます、領主のアタッツ様ですね。私は海川充と申します。クラン『グランディール』のマスターをしております。どうぞよろしくお願いします」


 ペレさんの件は置いておこう、ここは一番偉い領主様だ、領主様に挨拶をしなければ失礼を働いたと言われかねないからな。


「ルデン第三王子、アタッツ・グ・イレグです。よろしくお願いします!」


 ……どうして第三王子がここの領主をしているの? よくわからん。

 アタッツ領主は成人したてなのかな? めっちゃ若かった。多分シャッドさんと同じくらいなんじゃないかな? 服装は豪華なのだが、なんだかツンツクテンで裾などが短い、しゃがんだら破けちゃったりしない?


「ご丁寧にありがとうございます。馬車を用意しておりますので、こちらでクランハウスへ向かいましょう」


 今回超久しぶりにスポーティーな馬車を使用する。ママチャリが見つかってからはさっぱり出番無かったからな。それにシルバーもご無沙汰だったからな、せっかくだしこの優秀なじゃじゃ馬にならないシルバーも領主様にさりげなくアピールだ。

 御者はトラとクランクさんだ。ドラッシェン様も来ると言っていたが、あまりにも目立つのでお留守番してもらっている。酒とおつまみを用意したら快く了承してくれた。おもてなしの料理にまで手を付けないといいのだが……


「アタル様、大変申し訳ないのだが、後から妻が来ます。もう少しお待ち願えないでしょうか?」


 え? 奥さんを置いてきちゃったの? ペレさんしっかりしてくださいよ! ペレさんも食いしん坊さんよりみたいだからね、ご飯を早く食べたくて急いじゃったのだろう。


「ペレさん、おもてなしはみんなが揃わないとできないのですから、領主様が来たからってご馳走は出ませんよ」


「フフ……ご馳走が楽しみでですなぁ。ちょっと張りすぎたようです」


 ペレさんはなんだかご機嫌だ。


「……」


 そしてアタッツ様はなんだか緊張している気がする。大丈夫、安心して、俺がおもてなしで緊張をふっとばしてあげよう!


 そんなことを考えながら領主様の奥方をしばし待った。

貴族の名前は思い付きで考えています。

貴族のルールとかよくわからないのであんまり気にしないでください。

ここは異世界ですので……

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