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145.おもてなしの準備その3

「こんにちはー、スピナさん居ますか?」


 俺は今、孤児院に来ている。


「おぉ、マスターか、院長なら訓練に行ったようだよ。ところで鍛冶場はどうなったんじゃ?」


 カジさんが偶然にも玄関にいた。掃除でもしてたんかな? なんか腕組みして待ってたけど、俺待ちだったんじゃないよね?


「今日、依頼していた資材が届いたんです。急用が出来たので、それが終わり次第取りかかりましょう」


 エヴァさんにも約束してしまったし、忙しくなりそうだ。


「そうかそうか。それなら良い。それでわワシも訓練に行ってくるかの。ワシのオーラは赤かったから気合いが入るわい」


 そのお年で訓練ですか? 魔力循環だけでいいいんじゃないかな?


「俺も訓練場行くので一緒にいきますか?」


「マスターはママチャリでくるといい。ワシは先に走っていっとるわい。院長にもマスターが向かっていることを伝えておくから、ゆっくりくるといい」


 カジさんはオーラを纏ってダッシュしていった。もしかして訓練にいくとこだったのかな?

 っていうか、俺のママチャリだと遅いからゆっくりで良いって言われた気がする。




「うぉぉぉ!」


 俺は今、ママチャリで全力疾走中だ! ちなみにカジさんの姿は未だに見えない。


 昔は六連変速だったり、すごい刻んだ切り替えの自転車があったが、あれは何が良かったんだろね?

 もちろん、俺も乗っていたのだが使い方がよくわからないままだった。

 1段はよく使ったが、6段目なんかにしたら重くて全然こげない。下り坂ならいけたが、スピードが出すぎて危なかった。


 そんなわけで、6段自転車も真っ青なスピードで漕いだわけだがカジさんの背中すら拝むことは出来なかった……




「やっと着いた……」


 俺は今、クランハウスに隣接する訓練場に来た。


「お、やっと来たな。カジさんから大体聞いたぞ」


 ポッパーさん……俺は全力で、全速力でやってきたのですよ。『やっときた』はないんじゃないかな?

 ってか、カジさん着いてみんなに説明できるくい時間あったの? そりゃあ、背中みえねぇわ。


「マスターいらっしゃいませ。訓練は順調です。領主様がどんな行動を取っても対処は問題ありません! 安心してください!」


 いや、領主様はなにも危害を加えてこないと思うよ。どっちかと言うと、スピナさんの発言の方が安心できない気がするな。


「なら安心ですね! 明日は訓練の成果も披露したいと考えてますので、皆さんよろしくお願いしますね」


 気持ちは不安だが、スピナさんが安心していいって言ってるし、安心したことにしておこう……


「「「「はい!」」」」


 他のメンバーもやる気みたいだし、ベイツの発展を領主様にアピールすることにしよう。




「シャッドさん、明日領主様がいらっしゃるので、カイリさんと一緒にご馳走お願いします」


 俺は今、クランハウスの食堂へやってきた。ちょうどシャッドさんは、昼食の仕込み中だったようだ。昼食準備だよね? 人増えすぎて夕食の準備じゃないよね?


 食事する場所は数カ所用意し、分散させているが、それでも各食堂の飲食人数は多い。自炊する人がでてくるかなとも考えていたが、みんな食堂で食事を済ませているようだ。


「領主様がですか? どの料理を作りましょうか? リクエストはありますか?」


 カイリさんとシャッドさんのがんばりのおかげで、レシピはかなり増えた。さすがに領主様がきたからと、新料理を全て出しても食べきれないだろう。


「そうですねぇ……オコゼ料理とブルーブル料理は入れてほしいですね。あと、芋汁かな?」


 ここら辺はベイツの特産品になって行くだろう。芋汁はどこでも食べれる料理になっていくはずだが、改良されたグランディール特製芋汁は是非領主様にも食してもらいたい。あ、毒のある魚は名前がなかったのでオコゼにした。単純に俺が覚えやすいように命名した。


「わかりました。リクエスト料理の他も、カイリさんと相談して数品用意しますね」


 なにを作ってくれるんだろう? 明日はお腹すかせて待機しないといけないな! お腹すきすぎて、領主様の前でお腹が鳴ったらどうしようか……


「今から楽しみです。よろしくお願いしますね」


 おもてなし準備はこのくらいで大丈夫だろうか? 俺は他に漏れがないか確認しつつ、磯場へ戻り釣りを再開した。

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