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142.ベティさんの帰還その2

「ベティさん、おかえりなさい」


 俺は今、ベティさんをお出迎え中だ。手をぶんぶんと大きく振っているのにベティさんの反応がない。まさか、こんなに大きく手を振っているのに見えないのか?


 俺は布を取り出してクラフトスキルを使った。


「スピナさん、ここを持って腕上げて立っていてください!」


 俺はスピナさんに布の端を持ってもらい、逆方向にダッシュした。

 そう! 俺がクラフトしたのは横断幕。そこには「歓迎! ベティさんお帰りなさい」と、でかでかと書かれてある。これなら間違いなく見えるだろう。

 これで見えてなかったらギルドマスターは引退してもらわないといけないな。


「やめてくれー、私が悪かった! 王都で大変だったから気がつかない不利していただけだ!」


 慌てて走ってきながら大声でさけんでいる。馬から降りて走ってくるのはなんでなんだ? 馬より速く走れるんかな?


「ベティさん、おかえりなさい。大変なことがあったんですか? お疲れ様でした」


 何が大変なことがあったかわからないが、ギルド関係の仕事でトラブルでもあったのだろう。


「なにを言っているんだ。お前が渡した装飾品で大変だったんだぞ!」


 まさかの原因は俺だったようだ。


「宣伝してくれましたか? たくさん売れるとベイツの街も潤いますねー」


「宣伝にはなったと思うが……王妃様から注文を受けてきたぞ。王妃様が終わったら、上位貴族から順番に注文が殺到すると思うぞ」


 よし、献上じゃなくて販売という形になったな。あとは王妃様に売った値段を基準にしてやっていこう、そうしよう。


「王妃様の希望は聞きましたか? 貴族たちの方は絶賛作成中なので問題ないです。バンバン売りましょう! あっちの馬車にリサさんの家からの商品が乗ってるんでしょう? あれの支払いとかにも充てたいのでお金が必要です」


「あぁ……後で伝える。それにしても、ずいぶんと買い込んだようだが……大丈夫なのか?」


 大丈夫とはどういうことだろう? 借金地獄にならないかって意味かな? っていうか、リサさんに欲しいものをいったけど、金額とか量は任せきりだったな。


「何がですか? リサさんにお任せしているので大丈夫ですよ」


「……本当に大丈夫なんだな? すごい金額になってると思うんだが」


 え? そんなにいっぱい送られてきたの? 一応資材を使って品物を作って、それを卸す約束だからそんなに支払うことはないと思うんだけど……なんか心配になってきたぞ。


 いや、リサさんを信じよう。


「大丈夫ですよ。多分……」


「それはいい、あと領主が明日ベイツに来る。クランでちゃんと話をまとめてくれよ」


 あぁ、そういえば実質ベイツを支配しているような感じになっているから領主さんに話を通してくれたのね。ありがたい、ベティさん、グッジョブ! いや、王様が仕事ができる人なのかな?


「ありがとうございます。それでは準備してお待ちしてますね。領主様との面会時はベティさんも同席されますか?」


「……頼む」


「それでは面会時間がわかり次第連絡するようにしますね」


 さて、いろいろやりたいことはあるが、領主様がわざわざこちらに来てくれるということなのでおもてなしの準備だ。自分でも好き勝手した自覚はある、できるだけ好意を持ってもらえるように努めなければいけない。


 俺はサラさんに、カーボロッド商会から届いた荷物の確認をお願いして宿へ向かった。




「カイリさん、明日領主様がいらっしゃるそうです」


「ん? なんだか急な話だな」


「先ほどベティさんが帰ってらっしゃって、聞いたのです。俺もベイツでいろいろ活動しているので領主様に挨拶の必要を感じまして、王様に相談していたのです。領主様はどんな人なのですか?」


 なんだかんだベイツにきて一年以上たつのに領主様を見たことがない。というか、税も取られてないし、あまり実感がない。冒険者は依頼の一部が税として徴収されているので、払っているのだが自覚がないのだ。


「あぁ、領主様は温厚な人だぞ。領に不利益を与えているわけでもないし、問題ないだろ」


 温厚な人か、それなら良かった。というか、魔物もいないベイツの街を治めている人がすっごい荒くれ物でもどうかと思うけど……


「それでは、おいしい料理と特産品でおもてなしをしましょう」


「おもてなしってなんだ?」


 ん? おもてなしは通用しないのか?


「お客様を歓迎して気分よく滞在してもらうことですよ。申し訳ありませんが、明日はクランハウスの調理もお願いします」


 さすがに宿でおもてなしはダメだよね? いや、流木で超絶リニューアルされているから問題はないかもしれない。いや、でも一般のお客さんもいるし、辞めておこう。


 俺はあと誰にお願いしないといけないかなと考えながら宿を出た。

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