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141.ベティさんの帰還

 数日が経った。


 いろいろやらなければいけない事が増え、どれから手を出すか考えながら、俺は釣りにいそしんでいる。季節は初秋といったところだろうか? 磯場ではイカが釣れ始めた。去年はあまり釣ることができなかったから今年はたくさん釣りたい。沖でも、もしかしたら見たことがない魚が回遊してくるかもしれないな……余裕ができたら行ってみよう。


 釣りのいいところは釣れていないときに別のことを考えられることだ。大物が釣れたり、魚が掛かると考えが吹っ飛んでしまうが、その時はもう一回考えればいい。検討に検討を重ねれば、志向が加速していい案ができると偉い人が言っていた。俺もきっと世の人がびっくりするくらいいい案を考え付くことができると思う。


 といっても、今のもっぱらの悩みは鍛冶についてだ。金属についてはそれなりに知識はあったのだが、鍛冶についてはさっぱりなのだ。この世界には武具が存在するので、その技術を使おうと考えていたのだが、まさかの溶解した金属を型に流して作る、鋳造製だということを聞きビックリした。


 鋳造と鍛造では、間違いなく鍛造の方が同じ金属でも強い武具に仕上がるだろう。しかし、そのノウハウが存在しない、ということは新たな技術を開拓していかなければならない。

 今のところ今までと同じ鋳造で武具を作るという選択肢はない、クランメンバーの命を預ける武具を、納得できない品質にしたくはない。


 それと、俺は不老らしいので老衰することはない。しかし、俺以外のクランメンバーは普通の人間だ。いや、異世界の人間が普通なのかはちょっとわからないが、ベイツの街にはおじいさんもいるので老いていくのだろう。


 先のことを考えると、俺はある程度月日が経ったときに、ベイツの街から去ることになると思う。みんなとは今のような関係で居たいし、俺がずっとベイツにいることにより、先の世代までいろんなことを伝えていけるから大丈夫だとは思ってほしくないのだ。それに仲間たちがおいて先に逝ってしまうのを見たくないから逃げたいというのもある。俺は心が弱い人間なのだ。


 要するに、俺が居なくても、俺が見れなくなっても、クランのメンバーだけでもいいから、高品質な武具やおいしい料理で幸せになれるような技術を自分たちで伝えていってほしいし、今よりもさらに進化していってほしいのだ。


 そのための技術や考え方の。畑や種を用意するのが、俺のやるべきことのような気がする。

 俺がこの街を去ることがこの先あったら、クランメンバーの子孫たちがどうやって生活しているのかをこそっと覗きに来るのは楽しいかもしれないな。その時に俺ががっかりしないように、今が頑張り時なのかもしれない。


 まぁ、あれだな。巡り巡って結局俺の為に頑張らないといけないのかもしれないな。俺の心が折れないために……



 おっと、話がそれてしまったな。

 鍛冶だが、別に地球のやり方を真似なくてもいいだろう。異世界だからできる方法があるはずだ。どうして金属が叩くと丈夫になるのか、鍛造がなぜ武具に向いているのか。

 基本的な理論がわかれば、手法はそこにある設備や人材でやれる最適解を考えればいいだけだ。ここは異世界、地球ではないのだから異世界独自の手法を考えていこう。


 鍛造をオーラ全開のすっごい力でおこなったらどうなるのだろう? ミスリルを混ぜ込んだらどうなるのだろう? 金属を冷やす水を、青いオーラで出した水でやったらどういう変化が起こるのだろう?


 なんかちょっと考えただけでいろんなアイディアが浮かんできたぞ! なんか楽しくなってきた! 





「マスター! ベティさんが帰ってきたようですよー!」


 この声はシャッドさんかな? シャッドさんは磯場周辺で昆布などを採取しているから出勤ついでに呼びにきてくれたのだろう。


「はーい! 今から向かいますねー!」


 俺は釣り具をマジックバックに仕舞い、ベイツの街の南側入り口へと向かうことにした。

ちょっと短いですがベティさんが帰ってきたところで区切ります。


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