135.釣り仲間
12月21日(土)に1話追加しています。
まだの読んでいない方はそちらもどうぞ。
※おふざけ回なので読まなくても特に困ることはありません。
俺は今、船釣りをしている。
釣り用語でかっこよく言えば、オフショアジギングをしている。
俺の船は人がいっぱいだ。
今日もポッパーさんがエンジン役を買って出てくれたので、紅のナイフのメンバーが乗っているし、フロートさんから漁師三人組が船に派遣された。どうやらあの滅多に獲れないブリっぽい奴の釣り方を見て、勉強させてほしいということだ。
前回は名前がよくわかっていなかったが、赤髪青年がモルシチさん、緑髪青年がグリッツさん、金髪キラキライケメンがボブさんというらしい。
実は俺に釣り仲間ができたのだ。そう! ついに異世界で釣りにはまった人物ができたのだ! 相手はブラスさんだ。前回、大型魚を釣り上げてから、あの感覚が忘れられないそうだ。今日は俺の竿を貸している、近いうちに絶対に異世界産の釣り道具を作るから、それまでは異世界仕様に魔改造された地球産の釣り竿で満喫してほしい。
そして俺は新しい釣りに挑戦中だ。どうやらあのブリっぽい魚はカイリさんが言っていた通りなかなか獲れないらしい。単純に網で獲ろうと思っても力が強くて、群れに当たると全然ダメらしいのだ。しかし、釣りなら相手は単体になるので行けるんじゃないか? ということだった。
そこで問題が出てくる。釣れば単体なのだが、釣り道具がないのだ。なので今回、俺は異世界である素材を使い、釣り道具開発に乗り出した。最初は釣り竿やリールを考えたのだが、作り方がよくわからない。クラフトしようと試みたが、材料が足りなかった。どうやらミスリルが必要らしい。
どうして地球基準の釣り竿をクラフトしようと考えているのに、地球に存在しない異世界鉱物が必要になるのかは不明だが、異世界の魚と戦い抜くには異世界のスペックが必要なんだろうと、勝手に納得することにした。
もういっそのこと、異世界でも最強クラスの素材を使えば問題ないんじゃね? と閃いたので、ドラッシェン様にヒゲか髪の毛をお願いしてみたが、ヒゲは抜けないし、髪は人化を解くと消滅するといわれたのであきらめた。古龍のヒゲなんて、マグロだろうがクジラだろうが一本釣りできそうでわくわくしたのだが、あまりしつこいと怒られそうなので深追いはしなかった。怒りを買ったら世界ごと滅んでしまいそうだしね……
そこで思い立ったのがミドリ草の群生地にある大きな木のツルだ。このツルなのだが、最初はミドリ草を束ねるのに使っていたのだが、どうやらかなり丈夫なようだ。というか、俺の〆用ナイフで切っていたからわからなかったのだが、普通の刃物では切れない代物らしいのだ。
俺はツルをクラフトして、繊維を糸の代用にした。ありがたいことに繊維にするのも、繊維を1本の糸にすることも可能だった。あとはこの糸を流木で作ったリールに巻いた。
このリールも釣り用のリールとはちょっと違う。できればフロートさん達にも使ってほしいので、船に備え付けられるでかい手回しのリールにしたのだ。イメージとしてはフライ用のリールを船に固定した感じだ。
ルアーについても自作した。といっても形状はとてもシンプルにした。多分だが、異世界の魚はすれていない。だからあんまり魚に寄せたルアーにしなくてもいいと考えたのだ。地球の釣りにあてはめるとタイラバとかインチクあたりになるだろうか? そんな中通しの重りにぶっとい針を取り付けて海に放り投げている。重りと針も金の力で何とかした。強度は心配だが、その分かなりぶっとくしたので耐えれると思いたい。
釣法はまだ確立していない、海中を漂わせて糸を手で引きながらチョンチョンとアクションをするか、海底を縦にチョンチョンと跳ねさせるか……実践で試していくしかないだろう。問題はナブラ発見した時だが……針が付いた鉛を手で遠投はきついな……後日考えよう。
まずは基本通り海底から探ろう。タイラバでは着底後、10メートル分くらいリールを巻き、また着底させてリールを巻くといった方法が主流だ。名前通り鯛が狙えるのだが、別に釣れるのは鯛だけではない、結構なんでも釣れちゃうのだ。なんなら魚群探知機で中層に青物がいるとわかっているのなら、その層を高速巻きすれば青物だって釣れちゃうのはタイラバの奥が深いところだ。
インチクもタイラバの様に使えるし、ルアーの様にも使える。マイナーなのであんまり使ってる人は少ないが、インチクはかなりルアーとして潜在能力が高いと俺は思っている。今回はタコベイトというか、ワームがなく、針しかない付いてないからインチクっぽくないが、インチク特有のボリュームは、異世界の巨大魚と戦うにはかなり適していそうな気もする。
話がそれてしまったが、海底をチョンチョン飛び跳ねさせる。手で糸をもってアクションしているのでせいぜい1m飛び跳ねているかどうかだが、これで釣れれば漁としても成り立つだろう。なんなら高級魚が釣りたい。この世界の高級な魚がどれがどれだかいまいちよくわからないが……
「おぉぉ、きたぁぁぁ!」
ブラスさんにヒットしたようだ。
ブラスさんは俺と反対側で釣りをしているが、大型魚だと考えられる。俺もルアーをピックアップした方がいいだろう……おまつりになったら大変だからな……と思っていたが、俺の方にも何かが掛かった。
「俺の方にも来ました! ブラスさん、頑張ってくださいね!」
俺はブラスさんに応援をして、自分の方に集中する。
「えぇぇ、たすけてー!」
と、反対側からブラスさんの悲鳴が聞こえるが頑張ってほしい。今の俺には魚がかかってうれしい悲鳴にしか聞こえない。竿だけ落とさないようにしてね!
魚が掛かってこの釣りの欠点が分かった! 竿がない分、魚の引きをいなす方法がない、ということだ! 俺は足元に置いておいたブルーブルの革を手に巻き付けて糸を握った。ブルーブルの革は糸で手が切れそうになった時に使おうと思って置いておいたものだが、用意しておいてよかった。
竿がないなら手動で糸のテンションを調整するしかない。竿がないだけでこんなに魚の動きがわかりにくくなるなんて誤算だ! 魚の動きを察知するには常に糸を持っていないとわからないし、ただただ放置したら魚がどこまでも泳いで行ってしまい、糸が無くなってしまう。俺の釣り道具と違ってこっちの糸は有限なのだ!
「モルシチさん、グリッツさん、ボブさん、釣りの勉強です。こっちに来てください」
俺は漁師の三人を自分の方に呼んだ。最終的には自分たちでやることになるだろう方法だ、実践しながら説明しよう。
「えぇぇぇ~、こっちはどうすんのぉ~~~」
ブラスさんは……がんばって!
長くなったので次話に続きます




