表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
121/157

120.そこにこだわらなくても……

 俺は今、クランハウスのマスター室にいる。


 実はクランハウスを拡張した際に作っておいたのだ。ただ、俺は大抵外に出かけているし、ここにいることはあまりない。話し合いも今まではずっと食堂だったし、みんなで相談しながらやってきたのでこの部屋の出番はなかった。

 しかし、今日はポッパーさんが新しくパーティーを組んだということを聞いていたので、ここで待機している。


 それにしても、日頃使わない部屋だけあって殺風景だな……

 この部屋には本がない本棚と、机と椅子しかない。机も何もなく、トラが丸くなっているくらいだ。


 あまりにも飾りっ気がないので、俺はレイスの宝石で作ったトラ型宝石を寝ているトラの横に置いた。


「うん! なんか一気に華やかになったぞ。流石にトラだけでは華やかにならないからな」


『何言ってるにゃ、形がネコなだけでただの宝石じゃニャいか』


 まぁ、そうなんだけど……そうなんだけど、光物があるだけでなんだかマスターのお部屋っていう感じがしない? あ、しない? 今度エヴァさんに頼んで絵を書いてもらおう! それかブルーブルの皮を敷物にでもするか? やりすぎるとゴテゴテしそうだな。


「マスター、いるか?」


 部屋の内装について考えているとポッパーさんがやってきたようだ。


「どうぞ、あいてますよー」


 そもそも、鍵がないからいつでもウェルカム状態なのだが……


「昼間は悪かったな。マスターのおかげでまたパーティーを組むことになった」


「いえいえ、俺は特に何もしてないので……いろいろわだかまりもあったようですが大丈夫ですか?」


 ポッパーさんは最初パーティーに入るのを渋っていた。怪我は治ったとはいえ、考えるところがあったのだろう。


「まぁ、行き違いというか、なんというかだな。あっちも俺のために動いてくれてたようだし、見捨てられてはいなかったことも分かった。それにパーティーでダンジョンに行ければ息子の危険も減るだろう……ただ、シンカーさん達がオーラを使えないと息子の方が強そうだが……」


「そこら辺はスピナさんが教えてくれるでしょう。彼女の教育能力は高いですからね」


「そうだな、Cランクの冒険者だしすぐにできるようになるだろ」


 まぁ、そのすぐにできるようになるっていうのが世間的に考えると異常らしいんだけどね。俺はこの世界の常識が分からないから知らない。聞かれてもわかんないって言いきる予定だ。きっと教えた人がすごいんだよきっと。


「ところで、パーティー名は決まりました?」


「あぁ、『紅のナイフ』にした」


 ん? 前のパーティー名は『紅の剣』じゃなかったっけ? あんまり変わってないな。


「そうなんですね、前とそんなに変わらない名前にしたんですね」


「そうだな、メンバーも息子が入ったくらいで変わってないからな。ただ、俺たちは魔物を切る剣の為に強くなるんじゃないんだ。お腹を空かせている人たちの為に剣を振る。剣の先の食事で使うナイフの為に戦うことを決めた。だから、前のパーティー名よりも一歩目標に進ませた名前にした」


「なるほど、それはいい考えですね。同じ切るでも、剣とナイフじゃなんとなく感じ方が変わりそうですね」


 すごくいいパーティー名なんじゃないかな? ちょっと『紅』の部分が気になるけど、突っつくとやけどしそうなのでやめておこう。


「そこでマスターに頼みがある……武器を作ってくれないか?」


 あぁ、新メンバーの武具ですね! これからブルーブルをたくさん買ってもらわないといけない。ブルーブルは食料認定されつつあるが、実は危険度が高い魔物なのだ。しっかりしたものを準備しないといけない。


「わかりました。メンバーの職種を教えてもらえますか? どんなのがいいか考えます。リクエストも聞きますから、今度皆さんと打ち合わせしましょう」


「いや……鉄板剣を6振り作ってくれ」


「ん?」


 なんかおかしな単語を出てきたぞ? 鉄板剣はホットプレートであって武器じゃないぞ?


「鉄板剣を6振りお願いします!」


 ポッパーさんがガバッと頭を下げた。いやいや、ホットプレートにそんなに真剣になられても困るんだけど……まさか、ブルーブルを買ったらみんなでステーキでも焼くのか? すごく楽しそう! 俺も混ぜてほしい!


「わかりました。鉄板剣を用意しますので、ブルーブルのステーキパーティーをするときはぜひ仲間に入れてください」


「いや、訓練のためだが……」


 そうだったー! ポッパーさんは脳筋なところがあるんだったー!


「あれ? メンバーの色は分かったのですか? わからないが、息子は赤だし、多分青でもなんでも同じことが訓練になるんだろ?」


「そうですね、そうなんですけど……ポッパーさん気が付いてないですか? 鉄板剣じゃなくてもその修行できますよ? ただ、タコ焼きをしたかったから鉄板剣を作ってだけです」


「な、なんだって……」


 ポッパーさんが本気で驚いている。いや、普通に考えればわからない? いやいや、俺の考えがすべて皆が理解してると思わないほうがいいな。ちゃんと確認しておかないととんでもない方向に転がっていく場合がある。


「でも、ステーキパーティーしたいので用意しますね。あと、青の特性を生かした戦い方も考えているんです。クランクさんの知識も必要なのですが、今度カイリさんも含めて検討しましょう」


「そうなのか? じゃあ、明日だ! 明日の昼に皆を集めるから食堂で話そう!」


 ポッパーさんのやる気は底なしのようだ……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ