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117.後悔

 俺は今、後悔している。


 何を後悔しているか……そう! トラを先に帰してしまった為に馬車がないのだ。俺はシルバーにも乗れないし、馬車も操れないからいらないと思っていたのだが、よくよく考えるとクランハウスは街はずれにあるのだ。


 どうしてトラは俺にそのことを知らせてくれなかったのだ? まさかあいつは俺が船で帰ってくるとでも思ったのか? 船を置く場所がないのに船で帰れるわけがないだろう……困ったやつだ。


 時刻は夕方になりかけ、宿の食堂は賑わいだしているし、カイリさんの手を煩わせるわけにもいかない。じいちゃんは異世界をどうやって移動していたのだろう? まさかトラに乗ってではないよな? そもそもトラが乗せてくれるとも思えない。


 もしかしたら……と思い、じいちゃんのマジックバックを探る。そこであるものを見つけた。どうしてあるのかわからないが、これがあれば俺の移動範囲は格段にあがるだろう。俺はごくりと唾を飲み込み、それをマジックバックから取り出した。




「快適だ、ただ道が良くないな……」


 俺は今、自転車に乗ってクランハウスに帰っている。

 まさかじいちゃんのマジックバックに自転車があるとは思ってもみなかった。この自転車はじいちゃんが作ったのだろうか? それにしてもじいちゃんが使っていた自転車とそっくりだ。

 俺と違ってじいちゃんは転移していない、正確には俺もクラフトで作られただけで転移しているかどうかは不明だが、じいちゃんの場合は俺が喪主をしてお葬式をあげている。だからあるとしたら転生なのだが、この自転車はやはり作ったのだろうか?


 じいちゃんが持っていた自転車そっくりというのも、タイヤはゴムっぽいし、見た目もママチャリなのだ。ゴムはいったいどこで作ったのだろう? あとで素材をクラフトしてみようか、もしかしたら材料が分かるかもしれない。


 ところで、ママチャリは正式名称なのだろうか? 雪国にはママサンダンプというものがある。ずっとスノーダンプの別名かと思っていたのだが、商品名が『ママサンダンプ』と聞いたときはびっくりした覚えがある。ママサンダンプには非常にお世話になった、今うちにあるママサンは何代目だろうか?

 なんかママサンダンプのことを考えていたらママチャリのことはどうでもよくなってきたな。便利なんだから使おう。なにか聞かれたらクラフトしたって言えばみんな納得するだろう。




「ただいまー、なにか問題はありませんでしたか?」


 俺は今、クランハウスに帰ってきた。

 ホウレンソウが大事だとか言いながら、夕方まで船のことに夢中になってしまっていた。しかし、釣りについては譲ることができない、ということは……遠くにいても連絡が取れる手段が必要かもしれない。


 いや、もうすでにクランメンバーの人数がだいぶやばいことになっている、連絡手段も大事だが、やはり俺がいなくても回すことができる人材を育てるのが優先かもしれない。

 しかし、人材は育てようと思ってもすぐに育つわけではない……試行錯誤しながらやっていくしかないかな。


「おかえりなさい、スピナさんからはギルドの報告は聞いていますわ。特に問題はないそうでしたわ。ポッパーさんが新パーティーについて話をしたいそうなので、夜伺うと思いますわ」


「サラさん、ありがとうございます!」


 サラさんが俺の代わりにやってくれていたようだ。ありがとう、サラさん! よし、今日収穫してきたものをサラさんに御馳走しよう!


「今日、新たにいろんな食べ物を見つけてきたんです。晩御飯に出しますので是非食べてくださいね」


「……新しいものですか。楽しみにしてますわ」


 よし、そうと決まればクランハウスの食堂にいると思われるシャッドさんだ。シャッドさんの横で新しい料理に挑戦しよう。

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