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116.キレテナーイ

「なぁ、さっきから何やってるんだ? そんなにイライラしているのなら、獲ってきた魚でも食うか?」


 気が付いたら後ろに先ほどの女性と、男性が一人立っていた。どうやらタコの下処理が俺のストレス発散に見えたのかもしれない。心なしか女性の顔が青ざめている……もしかしたら、いや、もしかしなくてもなかなか帰ってこない漁師さんに切れて、タコを岩肌に叩きつけているように見えたのかもしれない。これはちゃんと話しておかないとやべー奴認定される状況じゃん!


「あぁ、すみません。このタコを食べる下準備をしていたんです」


「「……タコ?」」


 もしやこの世界ではタコにも名前がないか? 食べないのは食堂のご飯に出てこなかったから、なんとなくわかっていたが……


「こいつ、タコって言わないんですか?」


「いわねぇなぁ、海の掃除屋っては呼ぶときがあるが……」


 どうやらタコは海の掃除屋と呼ばれているらしい。確かにタコは漁船から落ちた魚などを食べる、だから漁港などにはタコが結構いるのだ。


「それより、俺に用事があってきたんじゃなかったのか?」


「あ、実は漁港に船を置かせてもらいたいんです。ちなみに私こういうものです」


 俺はギルドカードを男性に見せ、自己紹介をした。


「……俺はフロートだ。クランマスターがなぜ船が必要になる?」


 これは間違いなくやべー奴が船をもって、いろんなところに迷惑かけに行くんじゃないかと思われてるな……というか、やべー奴じゃないと思ってもらうようにギルドカード見せたのに、ギルドカードが仕事してくれない。


「実は沖で釣りをしたいと考えまして……」


「釣り?」


「えぇ、この釣り竿を使って魚を釣るんです。このタコも釣り竿で釣ったんですよ」


 俺は釣り竿を見せて釣りをアピールした。


「この方は桟橋あたりで獲っていましたよ。確かにその竿を使っていました」


「そうなのか……ところでそのタコってやつはどうやって食うんだ?」


 フロートさんは釣りよりもタコの味のほうが気になるようだ。この食いしん坊屋さんめ!


「そうですね、せっかくなので調理して食べましょうか」


 俺はマジックバックからじいちゃん特製バーベキューセットを取り出し、墨おこしをした。

 タコの調理中に聞いたのだが、女性はバーニラさんといい、フロートさんと夫婦らしい。二人はこの漁港に住み、魚を街に卸して生活しているということだった。


 どうやらフロートさんの船に乗っていた船乗りが数人、グランディールに入ってしまい、最近漁に来なくなったので、うちのクランに良い印象が無いようだった。さすがのトラでも、各個人の仕事がどうなるかまでは見通せる目はもってなかったようだ……借りたのは猫の手のほうだけど。


 今回のタコ料理はなにも準備がなかったので焼いただけだ。あ、そういえば醤油があったな、最後に醤油を垂らして風味付けしよう。それだけでかなり味が変わるだろう。




「どうぞ、これがタコです。まぁ、今回は材料がなくて焼いただけですが、いろいろ食べ方がありますよ」


 タコの足の串焼きをフロートさんとバーニラさんに渡し、俺も1本手に取り食べた。苦労して叩きつけただけあってなかなかいい感じにコリコリ具合だ。おいしくできてよかった。


「これは……なかなかうまいな。グランディールのクランマスターは新しいものを好んで食べると聞いていたが本当なんだな」


 なんか俺がゲテモノ食いの食いしん坊みたいな感じになってないか? 誉め言葉で言ってるんだよね?


「そうなんですよ、タコっておいしんですよ。獲れたら買い取りたいんですけど、たくさん獲れます?」


「……獲れる。それにここら辺だとタケダくらいしか売れず、ほかの魚は捨ててるんだ。かなりの量を捨ててるから、食べれるものがあったらどんどん買い取ってくれ!」


「おぉ! 見せてください」




 そんなこんなで今日漁をしてきた魚を見せてもらうことになった。

 ちなみに船は釣りするだけなら大丈夫と了承を得た。ここら辺の海には魔物はめったに出ないらしいが、あまり遠くに行くと安全は保障できないから気を付けるようにと注意されたくらいで、手続きはなかった。

 なんか船釣りのつもりだったのにタコ釣って食べて、魚を見るといい時間になってしまいそうだ。船は次回作ることになりそうだな。


 漁で獲れた魚たちはまさに宝の山だった。

 アジ・キス・タケダはもちろん、エビ・カニ・あとウニっぽい奴と貝があった。フグっぽいものもいたがあれには手を付けないほうがいいだろう。俺にはフグを調理する知識と技術はない。


 食べれる奴を選んだらフロートさんはすごく喜んでくれた。


「それじゃあ今選んだ魚はうちが買い取ります。もしかしたらほかで食べてなくて価値が付きそうな魚が出てくるかもしれません。できるだけどの魚が食べれるかは内緒でお願いしますね。その分高く買い取りますから。あと、多分ですが来なくなった漁師さんはもうすぐ戻ってくると思います」


「そうなのか? それなら助かるが……」


「今は訓練に力を入れてるんだと思います。クランに戻ったら調べて話しておきますね。ちゃんと何をするから来れないと上司に連絡してから始めないといけないと言っておきます」


 無断欠勤はやばくない? 日本なら続いたら解雇されるぞ? あれ? 今の上司は俺ってことになるけど……どっちにしろ報告受けてないから。ちゃんとしておかないとな。


「もし漁師ができないと言われたら、こちらから人員補充しますので安心してください。この海の幸は非常に魅力的です。手放すわけにはいきません!」


「お、おう……それなら安心だ。ちなみに去年食堂でキスフライってやつを食べたんだが、多分あれは魚だ……もしかして、この捨ててた奴にいるのか?」


「あぁ、キスならこれですね!」


 俺はキスを指さした。沖で獲れただけあってなかなか立派だ。というか、もはやキスのサイズではない。


「なに! ハラグロだと!」


 え、そっちの名称は異世界と共通なの?

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