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107.集団接種会場なのか

「次の方~、次の方~」


 俺は今、イスに座りながら次々に耳たぶに針を突き刺している。


 なんだかしらないが、クランの中でピアスが大流行したらしい。

 まずはスピナさんに約束した俺お手製の猫型ピアスをプレゼントし、耳に穴をあけたのが発端だった。そこからは、「私も、私も」と食堂に居た人々が申し出てきて、その後食堂から出てった人の口コミで集団接種会場真っ青な状態になっている。


 もちろんそんなにピアスに在庫はない。

 仕方ないので18金の金属を作り出し、大量のピンを用意した。あとはスピナさんに熱してもらいながらみんなに刺しまくっている。ピンを刺した後は、そのままクラフトで鋭い先の部分を丸めているので危なくはないだろう。

 後日その軸を使ってピアスを作るので無くさないでねって伝えてもらっている。いくら少量と言え金貨を使っているのだ、無くされたら有料にしよう。初回だけ無料だ!


 結構な人数をこなしたが、今のところ体の不調を訴えてきた人はいない。ポカリエスも数を持っているわけでないので事故が起こらないのは助かった。


「今更だけどクランメンバー以外の人が混ざってないよね?」


 そう、俺はクランメンバーを全員把握できては居ないのだ。あきらかに増えすぎたし、顔は見たことあるけど誰を合格にして、誰を不合格に下かまで覚えきれない。


「大丈夫です」


 スピナさんが頼もしい、もしかして全員覚えられている?


「私は今覚えていますわ。次回からは大丈夫だと思いますわ」


 サラさんも記憶力がいいらしい。さすが商人だな、商人が人の顔を覚えられないと騙されそうだしできて当たり前なのだろうか?


「サラさんも助かります。あー、サラさん、計算も得意そうですし俺の秘書になってくれませんか?」


 そう、秘書。俺はひしょかに秘書が欲しいと思っていたのだ。


「秘書……ですか?」


「そうそう、俺ができないことを代わりにやってくれる人だよ。みんなの給料とか、ちょっとした窓口になったりね」


 みんなの給料とかやっていたら俺の釣りに行く時間が無くなってしまう。釣りは短時間では終わらないのだ。


「マスター! 私は!」


「スピナさんにはいろいろとお仕事やってもらっているからね。毎日のギルドへの挨拶は続けて欲しいし、みんなへの教育もスピナさん以上の適任者はまだいない。それに、孤児院やるんでしょ? 毎日の報告今まで通りお願いね」


「……わかりました」


「というわけで、サラさんお願いできる?」


「わかりましたわ、スピナさんのようにうまくできるかわかりませんが、がんばりますわ」


「おねがいねー」


 そう言いながら俺はどんどんピンを指していった。




「カイリさんもピアスつけるんですか?」


「当り前だろ! 流行りには乗っとかねーとな!」


 流行りと言うか、今日流行ったようなものなのだけれど……


「まぁ、いいんですけど。未成年者には付けませんからナギちゃんにちゃんと説明してくださいよ」


 そう、俺は子供にお願いされたら断れる自信がない。いや、断るけどそこでやってーと言われ続けたら折れてしまいそうだ。だから親に説得をお願いしなければならない。


「わかったぜ! お、そうだ。ピアスの先に宝石付けれるんだろ? これを俺と妻に使ってくれ。俺の髪の色に似た宝石なんだ」


「お、お揃いってやつですね。いいですね、わかりました」


 俺は受け取った藍色の宝石をクラフトでカットした状態にし、カイリさんのピアスにくっつけた。

 前が重くなりそうなので、せっかくなのでキャッチもプレゼントした。カイリさんは満足そうにして帰って行ったが今からナミさんに見せに行くのだろうか?


「夫の髪の色の宝石のピアスを妻に贈る……売れそうな気がしますわ!」


 サラさんが興奮している。なにか商機を見つけたのだろうか?




 しばらく針を刺しまくっていたら、エメさんがポッパーさんを引っ張ってきた。


「そんなに急ぐこともないだろうよぉ」


 ポッパーさんは困り顔だ。


「いえ、これは早急にやらなければいけません! マスター! この宝石でピアスを作ってください」


 あぁ、カイリさんの見たのかな? ポッパーさんも藍色の髪だから似たようなのになっちゃうけどいいのだろうか?


「お、おいそれは結婚した時に指輪にするように買った奴じゃないか」


 こっちの世界にも指輪はあるのか……宝石を買っていたけどポッパーさんがケガしてそれどころじゃなくなっていたのかな?生活に困っても売っていなかったことを考えると相当大事に持っていたのだろう。


「カイリさんの所とお揃いになっちゃいませんか?」


「そうだけど、旦那の髪の色が一緒なんだもん仕方ないでしょ~」


 仕方ないと言いながらも不満そうだ。

 そうだよね。これから先もし同じ考えの人が増えたら被っちゃうよね~。


「ちなみにエメさんと髪の色のような、紫の宝石でも石でもいいのですがあります?」


「……あるが」


 ポッパーさんの表情がこわばった。


「じゃあ2つ付ければいいじゃないですかー。耳は何のために2つ付いていると思ってるんですか?」


 少なくともピアスを付ける為ではないけどね!


「両耳に違う色のを付けましょう!」


 エメさんはノリノリである。


「じゃあそうしますねー。紫の宝石持ってきてもらえますか?」


「あぁ、それなら持ってる」


 ポッパーさんは懐の中から小さな紫の宝石のようなものを取り出した。


「毎日持ってるんですか?」


「あぁ、これは初めて妻と買い物に行ったときに買ったんだ……ずっと持っている」


 お守りみたいな感じかな? ポッパーさんこういう所マメだよねー。

 俺なんかせっかく買った結婚指輪、早々に太ったせいで入らなくなって、家に何故かあった象の鼻に嵌めっぱなしだぞ。


「じゃあお二人穴開けますねー。目が見えなくなるかもしれないけど大丈夫ですよー。2回穴開けるから確率2倍ですけど大丈夫ですからねー。ポカリエスあるから安心してくださいねー」

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