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101.エヴァさんという芸術家

「……芸術家ですか?」


 あれ? 今までサラさんがマシンガントークしていたから戸惑っていたのかなと思ったけど、なんか違う様だぞ?


「あれ? 芸術家っていう職業はないんですか?」


「初めて聞きました。私は絵を描いたり物を作るのが好きですが、それでは生活ができずサラ様に援助して頂きながら生活していました」


「貴族や商人がきれいな絵を観賞したり飾ったりする習慣はないんですか? あ、あとクランの決まりで成人には誰でも『さん』付けは絶対です。出来ないならメンバー入りはお断りしますけど、どうしますか?」


「申し訳ありません! エヴァさんにはちゃんと言っておきますわ!」


「あ、エヴァさんに話しているからサラさんは黙っててね」


 エヴァさんはクランメンバーではなく、サラさんの部下としていてもらってもいいんだけど、ここで今までの決まりを無くすのもなんか嫌だなぁ。どうすっかなぁ~。


「……すみません。気を付けます! サラさん、心配かけてしまいました。大丈夫です、私の未来が有るのはここだと私も感じています。ですが、アタルさんが言うような貴族や商人が絵を観賞すると聞いたことはありません。絵を生業にしているほとんどは、本の挿絵などを描いて収入源にしているのです。昔からの繋がりで依頼されるため、若者が専業では生きていけないのです」


「そうなんですね? 俺の中では才能がある芸術家は稼げる職業だと思うんですけどね……」


「……稼げるんですか?」


 エヴァさんはなんだか不思議な顔をしてこっちを見ている。仲間になりたそうになる一歩前の顔か? いや、不審に思ってるだけ?


 あっちの世界の絵画なんてめんたま飛び出るくらいの値段で取引されているのもあったしね。なんでも突き詰められた芸術というものは価値があると思うんだけどなぁ。刀も武器なのにすっごい金額のやつあったはずだ……あ、いいこと思いついた!


「エヴァさん、粘土細工は得意ですか? この粘土でここのトラを作って欲しいのです。粘土が苦手なときは粘土を潰してトラを粘土に描いてくれてもいいですよ!」


 俺はエヴァさんに粘土を手渡し、トラをテーブルの上に乗せた。




「トラ、可愛いポーズをするのだ! めっちゃ可愛いポーズだぞ!」


『無理いうなニャ、可愛いがなんだかわからないニャ!』


「トラ、まずは立て!そして右前足と右後足を一歩前へ、尻尾も上げて!」


『うるさいニャ!ちょっと待つニャ。前足出すと後ろ足が浮いて難しいニャ!』


 食堂内に俺の叫び声とトラの「ニャーニャー」が響き渡る。


「なぁ、お宅のクランマスター大丈夫なのか?」


 おい! ベティさん! 人を変人扱いするな! あなたはここに招待していないんだからな! 失礼なこと言うなら帰れ!


「わからないのですが……トラちゃんがマスターの言うこと聞いてるように見えますが……」


 シャッドさんが不思議そうに話しているけど、実際に話してるんですよ! 内緒にしてるけどね。


「さぁエヴァさんお願いします。猫は気まぐれです。ポーズをとってる間にどうぞ!」


 そういうとエヴァさんが「あわわわ」言いながら粘土を捏ねだした。俺と同じくらいの年齢かと思ったけど、案外エヴァさんは若いのかもしれない。そういえばさっき若者は専業で食えないとかなんとか言ってたな。




 5分くらいでミニチュアトラが出来上がった。絵の才能があると説明されたけど、粘土細工もなかなかじゃないか。


「おぉ! すごいですね! トラができた! エヴァさん合格です! 合格したから絶対に『さん』付け守ってくださいね! 守れないと他のメンバーから俺が怒られるんですからね!」


「……はい」


 エヴァさんはなんだか不服そうだ。合格したいってさっき言ってなかった?


「しょうがないですね。ここにいるみんなだけの内緒にしてくださいね。これからはエヴァさんはたくさん稼げます。サラさんも協力してくださいね! いいですか? ないしょですよ?」


 そういいながら食堂にいるメンバーをぐるっと見回す。

 そしてマジックバックからレイスの宝石をいくつか取り出し、粘土のトラに向かってクラフトした。


「「「「「……」」」」」


「サラさん、こういうの売れると思うんですけど、どうですか? あ! このトラは俺が貰いますからね! あげませんからね!」


 俺はトラの形をした宝石を自分の方へ寄せた。トラの形をしたツルツルピカピカの宝石はとても可愛らしく綺麗だ。売れないと言われても、俺は欲しい。これができただけでも最高だ!


「そ、それは王へ献上するのですか?」


「え、献上なんてしないですよ。宝石が可愛い形になっただけです。ちょっとした付加価値というか、加工料を上乗せすればいいんですよ。宝石の3倍の値段くらいで売れないかな? あぁ、剣や槍だったり色違いの宝石なんかで作って新しくできるパーティーシンボルにするのもいいかもですね。あ、シャッドさん! 猫のシンボルは俺だけですからね! みんなは自分で考えてくださいよ!」


「……そういえばマスター、王様へ何か渡しました? すごい騒ぎになってましたよ」


 え、知らない……何のことかな?


「わかりません……王様の方で何とかするでしょ……」


「まさか! 王妃様の宝石を渡したのは……」


 知らん! というか、王様そんなに見せびらかすな! 王妃様なんて会ったことすらないし。


「ひとまずサラさんとエヴァさんは合格ね! これからどうやって行くかは落ち着いたら計画しましょ!」

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