99.生産性向上
生産性向上という言葉がある。
製造業ではムダ取りとか作業の標準化とか言うあれだ。もしかしたら接客業でも介護職でもそういったことがあるのかもしれない。残念ながら俺は製造業以外を知らないのでわからないが……
名前は違うが、ムダ取りも作業の標準化もやることは一緒だったりする。ムダ取りはその名の通りムダをなくすのだ、じゃあムダとはなんだ? ということになるが、3ム(ムリ・ムダ・ムラ)がムダの詳細だったりする。ムリな作業をしている時間がムダ、ムダがある作業をしている時間がムダ・ムラがある作業をしている時間がムダ、こんな感じになる。
そこで共通しているのが『時間』なのだ。ムダを無くせば時間を有効に利用できる。時間があれば生産は向上するのだ。
作業の標準化もそうだ、同じ作業をしていても出来栄えや所要時間が違う。先ほどの3ムにあてはめれば作る人によってムラがあるのだ。そのムラをとるために作業を標準化する、簡単に言うとみんな同じ作業方法を行うのだ。
どうやってするかわからない時は、ひとまずその職場で一番不良を出さず、一番スピードの速い人の手法を真似ればいい。それをみんなで話し合ってもっと良い方法があれば取り入れればいいし、もう何十年も繰り返し作業していて洗練されているなら、そのまま取り入れればいいのだ。
実は異世界にきてこの作業の標準化は試している、それは剣の型だ。剣の型はまさに洗練されていてムダがない状態だろう。ムダがあったらその型を使っている人たちは生き延びられないからだ。
要約すると、生産性向上は異世界でも通じる! 俺の勝手な理論だ!
散々語ったが、ぶっちゃけるとお金をかけると生産性向上しやすいのだ。治具を作ったり専用の道具を作ったり、確認するのを機械に任せたりだ! お金があるならお金を設備に使って、できた時間で更に設けてもっともっとお金を稼げばいいのだ! そして今の俺には資金がある! そして治具や道具は自分で作れる! 最強じゃないか!
まず第一歩として人材配置だ。
オーラの色ごとに分けたいところだが、ほとんどの人が今まで民間人だった為に自分の仕事を持っているのだ。それを取り上げるのもなんか違う気がするので聞き取りを行った。
困ったことに、自分の土地をクランに預けるから使ってほしいとか、かなりの人数に言われた。これは非常に困る、俺が受け取っちゃたら、なんだかクランが国を侵略しているようになっちゃうじゃないか。でも、あまりにもそういう人が多すぎたので、土地は借りることにした。土地の使用料は賃金に上乗せで……会計する人が欲しい。
ちなみに現在必要だと思っているのが、冒険者・農業者・漁師・製造・料理人辺りだ。他にも不足しているのがあるかもしれないが、今の俺にはキャパオーバーだ。
聞き取りの結果、若者は冒険者・ある程度の年齢になると農業者・漁師・製造。主に女性が料理人を望んでいた。あとはオーラの色を加味して振り分けて行こう。もしかしたら希望に添えない人も出てくるかもしれないがそこは説明して納得してもらうことにしよう!
ひとまず人員の配置は終わった、今のところ現状維持……持適材適所とは! 生産性向上とは! お金よりも、人が大事なんだな改めて感じだ。
よくよく考えると、ひとまずみんなに魔力をギュッとできてもらえないと、身体能力が異常に高いただの人だ。俺最強! とか調子に乗ってごめんなさい……
クランを運営していく資金は今のところ豊富だ、今は人材を育成しよう。人が育ってない状態で仕事を割り振っていっても、問題が増えるだけでいいことはない、大体問題が起こったら解消するために俺が動くんだろう? そんなの大変すぎる、いきなり800人も増えたんだからな! 無理!
育成というのはコストがかかる物なのだ。資金繰りが苦しいわけでもない、一つ一つ地盤を固めて行こうじゃないか! フフフ……なんだか管理職を通り越して経営者になったみたいだ。
とりあえずメンバーには各自魔力循環の訓練を継続し、今の仕事を継続してもらう。もう一段階レベルが上がってから振り分けると説明した。もし行き詰ってもスピナさんがレッスンしてくれる、スピナさんの評価はうなぎのぼりだ! もしかしたら俺よりもマスターっぽいかもしれない。
そんなこんなの忙しい毎日を送っていたら、ついにシャッドさんが帰ってきた。
シャッドさんの後ろには大行列……シャッドさんや、なんだかすごいことになってますが、大丈夫ですか?




