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10.お腹のでっぱりに年齢は関係ない!

「参った、さっそく迷子だ」


 こういう時は、街人に尋ねるのが鉄板だが、俺には強い味方がいる。困ったときの猫の手だ!


「なぁ、ギルドはどこにあるかわかるか?」


『冒険者ギルドなら剣と盾と杖の看板ニャ』


 看板なんて見れば何となくわかる、俺は場所が知りたいのだ! 小さくなったトラは、手まで小さくなってしまったようだな。全く役に立たない。


「おじちゃん、可愛いの首に巻いてるね。」


 ん? なんか足元から声が聞こえた。

 ただ俺はお兄さんだから、多分違う人に声を掛けたのだろう。キョロキョロ周囲を見渡しても、首に何かを巻いてる人が見当たらないのが不思議だ。


「幻聴か……」


 仕方ないのでギルドを探そうと歩き出そうとすると、ジーンズが引っ張られる。


「おじちゃん!」


 足元を見ると幼女がいた……


「……人違いです!」




 俺は今、前かがみになり幼女と同じ視線の高さになっている。なんだかんだで子供は好きだ。俺にも息子がいるしな! ただおじちゃん呼びはいただけない、くそ! 前かがみになると腹が邪魔だ! でも、20代でも俺のような体系はいる、腹の出っ張りに年齢は関係ないのだ。


「このネコを触りたいの?」


「このかわいい子はネコっていうの? さっきニャーって鳴いていたし生きてるよね? さわっていい?」


 トラが話しているのが、他人にはニャーと聞こえるのは間違いないらしい。こんなに身長差がある子にも聞こえるのか……結構でかい声で鳴いてるのかもしれない。


「生きてるよ、でもさっき門番さんに、この子が問題を起こすと俺の責任になるって言われたんだ。ネコは気まぐれだから君をひっかいてしまうかもしれない。だから触るのは無理かなー?」


「そっか、残念。かわいいのに」


 めっちゃ残念がる幼女。

 でも、問題起こしたらどんな罰を受けるかよくわからない世界で、危険は冒せない。俺は慎重派だからな!


 それに元の世界ではトラは凶暴だった。俺以外には懐かないし、獣医さんにも毎回ケガをさせていた。最終的には俺が連れていかないと診察してもらえなかったくらい凶暴だったのだ。獣医さんが「こいつは猫じゃない」と言った言葉は忘れられない。どう見ても猫なのに……

 この世界に来てから何があったかわからないけど、じいちゃんとも仲は良くなかった。朝方、廊下が血だらけで母が大騒ぎしたことがあった。原因はトラがじいちゃんをひっかいて大出血したのだ、ネコの爪って結構鋭利なんだよね。


「そうだ、もしよかったらギルドに案内してくれないかな? 剣と盾と杖の看板があるお店らしいんだけど」


 せっかく会話したんだ、ついでに聞いてみよう。誘拐と間違われたりしないよね? 大丈夫だよね?


「いいよ。じゃあ案内したらネコ触らせてね!」


 そう来たか、トラの許可をあとで取ろう。その前に幼女の親の許可を取っておこう。なんかあってからでは遅い、慎重に行こう。


「じゃあ、君のパパかママがいいって言ったらいいよ」


「やったぁー!」


 あ、なんか触っていい流れになってしまった。


『ヤレヤレだぜ』


 トラの許可も出たようだ。語尾が変わってるから、不満そうだけどしょうがない。トラがギルドの位置を知らなかったのが悪いんだからね!


「ところで、どうして一人でいたの?」


「お買い物、お店で使う晩御飯用のお塩が足りないんだって」


「それは、急がなくても大丈夫?」


「まだ明るいから大丈夫。それにおじちゃんを宿に連れて行かないとネコ撫でれない」


「宿? おうちは宿屋さんなの?」


「そうだよ。おじちゃんも泊まる? ネコも多分泊まれるよ。泊って欲しいなー」


 さっそくペットOKの宿が見つかりそうだ。ペットの概念があるのか怪しいけど、トラも泊まれるなら大歓迎だ。


「ちなみに、ネコの名前はトラって言うんだ」


「ナギ! よろしくトラちゃん!」


「ニャー」


 ナギちゃんの挨拶にトラも反応した。ただし、普通にニャーって鳴いただけだけど。


 さすが猫! 猫の鳴きまねも上手だ。

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