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優しい人
この世は欺瞞に満ちている。
私の為と何かをしてくれた人の気持ちは正直嬉しかったが、その心の裏にはそれ以上の見返りを期待した思いに私は心が壊れそうになった。
人の為と書いて偽りって本当の事だと思って、私はみだらに人に優しさを受け入れず、そして優しくしないと誓ったのだった。
本当の優しさとは何なのか?
人の憂いと書いて優しさと言う。
本当に優しい人は憂いを知っているんだ。
私が本当に優しいと思った人は少なからずにいる。
その人は滅多に笑わず、人に簡単に気を許したりしない毅然と常に構えている人だった。
私がその人と仕事をした時に、間違ったところはしっかりと叱責して正してくれた。
叱責にはつらい感情が芽生えたが、それはその人の優しさだった。
思わず、私は調子に乗ってしまいプライベートな事を語ったら、返された言葉は後で分かったが、それは皮肉だった。
辛い気持ちにさらされながらも、その皮肉の意味を吟味して見ると、無闇に喋るなって言いたかったんだろうな。
あまり無闇に喋らず、黙々と作業をして、間違いには本気でぶつかってきてくれて、いつも毅然と立ち振る舞う。
そう言う深い人が憂いを知った優しい人なのだろうと私は思った。




