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嵐の前の静けさ……家族であるために

こんばんわ、ついに最後の警鐘がなり始めました。

もう少しでゴールです。

しばらくのお付き合いをよろしくお願いします。

『こちら陽気なたんぽぽ荘』もよろしくお願いします(☆∀☆)

  

「ひえぇぇぇ。お、お兄ちゃんの男と女変体の原理はそれかぁぁぁ」

 

僕は困ったように頭をかくとコクリと頷くようにうつむいた。


無論、困った原因を作っているのは僕、本人ではなく目の前でお目目をキラキラと輝かせているゆーなだ。


そのお目目のキラキラ具合はプリズムラメシールよりもキラキラだ。


台所で夕食の支度をしている姉貴とひなたの邪魔にならないように六畳間の真ん中に鎮座するちゃぶ台でお茶をすすっていた僕にゆーなは迫真極めた迫力でがぶりよる。


「ま、まぁ……そういうことだな……」


 冷や汗まじりに頬をピクピクさせる僕はピンチを迎えていた。

くすっと微笑んだゆーなはジャージの裾を捲り上げて興味津々に僕の手をとるとギュッと握ってくる。


自分の感情を正しく表現できるゆーなの経験値は他の追随を許さないぶん非常にやっかいなのだ。


 僕からすれば『やれやれ』だが、ほっておくと台所に行って姉貴たちの邪魔をしそうなので幼すぎる容貌を向けてくるゆーなの相手をせざる得ない。


「うんうん、お兄ちゃんは体温がほかほかなら男。冷え冷えなら女なんだね」


「そうだよ、夏は男、冬は女の姿がおおいな。お風呂は男、プールは女の姿だね」


「ひえーっ、大変なんだね」


満足顔のゆーなは腕を組んでうんうんと得心する。


納得顔で呑気に頷くだけなら安心なのだが、チラッと僕をみるゆーなの視線。


 ――怪しく光っていますよーっ!――


「と言うことはラブがチャージされているときは男のまんまってことだよね」


 ――ラブチャージってなんですかーっ!?――


 この会話内容は日常の会話の用語ジャンルから逸脱しすぎて想像もつかない発想のズレがある。


明朗快活で奔放な性格の上、肉体的にも実りの時期がまったくこないつるつるぺったん的ゆーなもお年頃は経験多き18歳。


大きな瞳をほっそりと糸目ばりに細めたゆーなはうつろな微笑みを浮かべて僕を凝視。うん、何だかあぶない世界を妄想中といったご様子ですねーっ!


「……そのお話、わたしも聞きたい……です」


「なになにぃ。うちもあーちゃんとおしゃべりなのぉ」


 うわぁーっ!


いつになく力強い勢いで姉貴は僕に抱きついてくる。


僕と一緒で独占欲が強い『俺の物は俺のものお前の物も俺の物』精神が丸見えですよーっ!


「えっとね、みんなしっかり聞くのだよ。結論から言うとエッチをする時はお兄ちゃんの肉体はしっかりと竿がある男のまんまなんだって」


 僕は虹がでるほど盛大にお茶を吹き出した。


何故か『パチパチパチーっ』盛大で惜しみのない拍手を送る姉貴とひなた。

家が賑やかになることは良いのだが、この結論には僕の選択権は『はい』か『イエス』などの肯定オンリーのみというトリックが見え見えである。


残念なほどのペッタンコの胸をはって誇らしげなゆーな。


「ゆーなちゃん。そんなのしっているよーっ」


 その口調はとても力強い。


この口調は『あーちゃんのことは誰にもまけないぞーっ』と闘争心と独占欲がてんこ盛りの発言だ。


今度はちゃぶ台をはさんで対極。


そのお互いの位置取りは昔の沖縄名物ハブVSマングースの戦いのように真剣そのもの。


肩を落としていた僕の頭の上にプルンとした豊潤なおっぱいをのせて、えっへんといったふうに自信満々のアルカイックスマイルを浮かべる姉貴。


ひなたはキョロキョロと二人の顔を見合わせてにへらっと笑ってまるでお昼のダークなドラマを興味深げに見る主婦のようにコクコクと頷きながら静観している。


「あーちゃんのちくびをバードウオッチングしたらわかるよーっ」


「むむーっ、姉貴さん。その手がありましたかぁ」


どんな手やねんっ! とツッコミを入れたくなるぞーっ!


ゆーなは「ほほーっ」と感嘆の吐息をこぼすととっても得心したようだ。


反応がいまいちだったらしく姉貴はヤキモチを焼いたように可愛らしく頬を

ぷーっと膨らませている。


「妄想とモーホーは紙一重なのですよ。はちみつを超えたロイヤルゼリーなみですね」


「……ぐふふっ。とっても淫靡なせ・か・い」


「………………」


両手を胸もとで組んで珍しくひなたがさらっと淀みのない言葉を言ったかとおもったら……イっちゃってるよ。


「おやおや、お兄ちゃんったら。乙女の純真な会話についてこられないのですね」


「……ぐひぐひひ……純真の純の意味は純潔の純……ぐひひ、恋は素直に本能で……」


 とっても棒読み。


台本があるのではないか?


そんな僕の視線にひなたはキョトンと小首をかしげて可愛らしくうっそりと微笑んでくれる。


「ねーねーっ。ごはん、ごーはーん」


 僕の背中に柔らかい身体をのっけた姉貴からの晩御飯のいざない。


二人の少女が見つめるなかでも慌てることのない過激なスキンシップと汚れのない眼差し。


姉貴の自信に満ちた笑みと行動につられて遊び心いっぱいのゆーなもちっちゃな全身を駆使して僕に乗っかってきた。


僕に乗っかった二人を抱えてふらつく足を酷使して台所に向かう。


ぽやんとした蛍光灯の光に彩られた食卓には人数分の焼きそば。


ぶった切った野菜とタンパク質の虫たちが麺に入り乱れた焼いてあるそば。

だから焼きそば。


そんな焼きそばよりもシュールなニュースがテレビから流れて僕たちは立ち止まった。


不思議そうにテレビをみる姉貴。


そして、僕やゆーな・ひなたは頬を両手でおさえてムンクの叫びを彷彿させる苦笑。


テレビから流れるさばさばとして何処か高圧的な口調がやれやれと言っているようにも聞こえたからだ。


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