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第20話 一難去ると、また一難がやってくる。

さて、あの日以来俺達は3人でいることが増えた。ちなみに、あの日の仁井園の話とは、やはり、神城絡みの話で、どう仲直りしようかと考えていたらしい。まぁ、喧嘩とかははじめからしてないから、仲直りもおかしいんだけど…それから、あの日最終的には仁井園と神城が二人で話をして和解したようで、今は普通に真理子だの美羽だのと言って、きゃっきゃ♪している。


ついでに言うと、俺が仁井園と神城の話し合いの場にいなかったのは、仁井園に『アンタもう先に帰っていいよ』と言われ、その後に無言の圧力をかけられたからである。今思い返せば、わりと冷たいことを言われたなと思わなくもないが、いろいろとつもる話もあっただろうし、俺みたいなのに聞かれるのは気恥ずかしかったのかもしれない。


さて、そんな我々が急に一緒にいるようになったモノだから、当然クラスの何人かはそれを気にして話題にしているようだ。特に木村と原田はよくこちらを見てひそひそとやっているのを目撃する。まぁ、それで害があるわけではないので、放ってはいるのだが…。


そんな感じで現状確認を行っていると、神城に声をかけられる。


「ねぇねぇ、七五三田」


「……なんだ?」


「今日の放課後空いてるでしょ?」


いやなんで確信じみた言い方なんだよ、わからないだろ?急にデートの誘いとかあるかもしれないだろうが、もしくは空から女の子がふってきて、天空の城とか探す冒険に出発しなきゃならなくなるかもしれないだろうが!ま、ないんですけどね、予定なんて。


「……ま、特には…?」


「やっぱり、ならさ、今日真理子と一緒にお菓子作るんだけど、家来ない?」


やっぱりってなんだ。神城さん、前々から思ってましたが、貴女ナチュラルに失礼ですよ?…まぁ、お菓子食べたいから行くけど。


「その、俺なんかが行っていいのか?」


「え?うん、もちろんいいよ!ってか、私前々から思ってたんだけど…」


「……なんだよ」


「七五三田ってよく、自分を落とすよね」


「どういう意味だ?」


「"俺なんか"って、よく言うじゃん?それやめた方がいいよ、七五三田は"なんか"じゃないよ」


そうなのか……?言われて初めて気づいたな…


「そんな言ってるか?」


「言ってるよ! 真理子とその話してたもん、この間!」


「マジで?」


「うん、あんまり自分を卑下した喋り方してると、本当に人に見下されちゃうよ? ほら、よく『すみません』って言う人いるじゃない? なんか反射的に言っちゃう人とか、あー言う人とかも自分をそんな下げなくてもいいと思うんだよねぇ…」


神城よ、たぶん俺がそんな風になった理由があるように、その人達にはその人達の理由があってそうなってるのだと思いますよ?あと、変えられるのなら、きっと変えたいとも思っていると思います。ま、ここで言ったところで仕方ないか…


「まぁ、あれだな、意識しとくわ」


「あ、でもだからって嫌いとかそんなんじゃないからねっ!」


いや、なんだその謎フォロー…。それから、神城は仁井園に呼ばれ、「じゃ、放課後ね!」と言って、教室から出ていった。


(トイレで女子トークでもすんのかな?)


そんな事を思って、俺は次の授業まで寝ることにする。いつものようにイヤホンをset(セッツ)ッ!して、さぁ、これからと言うときに、肩を叩かれる。


俺はちょっとだけめんどくさいな…とか思いながらイヤホンを外して振り返ると、


「あ、あ、あのあのぁのぁ…あの…っ!」


(!?)


「し、七五三田くんっ! きょ、今日の放課後、い、委員会なので、と、図書室にききき、来てくださいっ!」


「え?あ……はい」


「す、すみません…っ! お眠りのところ、し、失礼致しましたっ!」


えっと…今、テンパりながらと言うか、挙動不審と言うか、そんな感じで現れたのは、同じ図書委員の 本仮屋(もとかりや) (ゆめ) である。委員会は入学した際に、とりあえず楽そうだと言う理由からこれを選んだのだが…まぁ、その時同じ委員になったのが彼女だった。


しかし、図書委員もやはり毎日活動するわけでもなく、図書室から、クラスに暇潰し用の本を選び持ってきたり、当番制で図書室の番人をしたりとかウチのはそんなものである。そして、その当番の通告でも上級生にされたのだろう。その話を今日放課後に話そうと言うのではないだろうか?………ん?あれ?俺放課後なんか用事なかったっけ?


***


「えー、来るって言ったじゃん!」


放課後、神城は頬を膨らませて抗議してくる。


「いや、俺もそのつもりだったんだけどな…」


「貴方、委員会と私、どっちが大事なの?」


えー…何それおまえは俺の嫁かなんかなの?それともこ芝居をしかけてきてんの?


「……ば、バカ野郎おまえの方が大切に決まっているだろう?」


「……言葉だけじゃ…たりないわ…」


こ芝居の方だったようです。て言うか、なんなんだこれ。そんなことを思っていると仁井園が声をかけてくる。


「アンタ達何やってんの…?」


「こ芝居」「シミュレーション」


シミュレーション!? なんの!? 神城、おまえはいったい何を見据えて今のこ芝居してたんだよっ!俺があっけに取られていると、


「あっそ、てか、早く材料買いに行かないと時間遅くなるくない?」


「あ、そうそう、真理子、今日七五三田委員会あるからこれなくなったんだってぇ」


「へー、まぁそれは仕方ないんじゃないの? 七五三田」


「……はい」


「がんばんなよ」


「お、おう、サンキューな」


え?なんか仁井園優しくね?なに?明日雨なの?などと考えていると、神城が仁井園に「行こっか」と提案して二人は去っていく。


教室を二人が出るとき、神城が


「七五三田ー! また誘うねー!」


と手を降ってくれた。正直、入学当初を思い出すと、こんな感じになるとは微塵も思わなかった…。俺自身、人とはあまり関わらないようにと思っていたし、中学の頃みたいに、ひっそりと自分を消して過ごすのだと、そう思っていたのにな…そう考えた時、ふと、白野 咲来 の事を思い出す。


(アイツは…今頃ちゃんと、成功しているのだろうか? 1人で、泣いていたりしないだろうか…?)


こんな感じで物思いにふけっていると、


「あ、あの…」


と、急に声をかけられ、


「おわっ」


と、俺は慌てて振り替える。するとそこには、本仮屋がファイルを何冊か抱えて立っていた。ってかいつからいたの?ビックリするわ!なにこの子、隠密? 忍びとかその類いの人なの? いや、でもまぁ、驚いてごめんね!















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