5.歯には歯を
反撃回の続きです。
2025.12/13 文芸、ヒューマンドラマ部門日別ランキング3位になりました! 皆様本当にありがとうございます!
「………。」
アンネの言葉にヴィクトルは呆然とし、マリーは顔色を悪くさせたまま俯いてしまった。
「ヴィクトル様の父君である陛下にも側妃などおりません。先代も、先々代もいなかったですよね。歴代の王妃様達の中には、成人した後に王妃となる事が決まった方達もおりましたが、王妃教育に励まれて、最期まで王妃としての責務を全うされた事は聞いておりますよね?」
この国の国王は側妃をつくることは基本的には無い。何世代か遡ると、側妃を迎えた王は何人かいたと記録にはあった。しかしその理由は、王妃が病によって子を儲ける事が難しくなり、王の血筋を残す為だったそうだ。当人達の心境がどうであったかは知る由もないが、王妃の力量が足りないから支える為に側妃が必要だった、などという理由ではないのだ。
「…王妃になれない時点で、私の教養はもう意味がないのです。私の言っている事は間違っておりませんよね?」
「……っ。」
ヴィクトルは何かを言おうとするが言葉にならずに黙ってしまう。そんなヴィクトルを暫く見た後、アンネは少し嬉しそうに表情を緩めた。
「どうやらヴィクトル様はこの事をお忘れになっていたようですけれど……良かったです、安心しました。」
「…?」
“良かった、安心した”という言葉に、疑問を持った様子でヴィクトルはアンネを見た。
「もう、私を側妃にするという話は無くなりますよね? では、私は失礼しますね。」
「…い、いや待ってくれ! 君は僕を愛しているだろう!? 側妃になれば僕と一緒にいられるし、その…時にはマリーに助言をしてあげるのはどうだろうか?」
話を切り上げようとするアンネに、慌てて待つようにヴィクトルは主張した。そんなヴィクトルにアンネの表情は、また険しいものへと変わっていった。
「…やはり、私を憎んでおられるのですね!!」
「っ!? いや、だからっ、なぜそうなるんだ!!?」
「ヴィクトル様が、王妃にとって側妃は必要がない存在だという事をお忘れになっていた様子だったので、私を恨んでいる訳ではなかったのだと思いましたのに…。」
アンネの泣き出す寸前のような震える声に、ヴィクトルはさらに困惑してしまう。
「っなぜ…なぜ君に側妃になって貰おうとするだけで、僕が君を憎んでいると誤解するんだ!!? 僕はただ、君が僕の傍にいられるようにしてあげようとしているだけなんだぞ!?」
ヴィクトルの言葉に、アンネは自分を落ち着かせる為なのか一呼吸をした。
「……私が側妃になれば、私の住む場所は城のどこかの部屋か離宮になりますよね?」
「あ、ああ、そうなるだろうね。」
「私の身の回りの世話は、城内で働く使用人…ヴィクトル様の配下の者に任されるのですよね?」
「…そうなるだろうな。」
それがどうしたと言わんばかりにヴィクトルは答えた。マリーは何も言わないが、ヴィクトルと同じ気持ちで聞いている様子でアンネを見ている。
「そうなれば、私を助けてくれる身近な存在、つまり私の味方が居なくなります。」
「……うん?」
「ヴィクトル様は、私を味方がいない場所で孤立させて、復讐するつもりなのですよね?」
ツッコミどころ満載、会話のドッチボールに辟易とした方もいると思いますが最後まで読んで下さってありがとうございます。よろしければ今後もよろしくお願いします 笑
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