第97話 風の悪魔
連射銃から弾が高速で発射される。
身体強化で無理やり照準を合わせて、銃口がソグを狙うように維持した。
闇市で購入した武器の中でも、やはり総合力ではこいつが最高だった。
他にも色々と用意していたのだが、ほとんど使う機会はなさそうだ。
ソグは接近を中断し、その場で突風の壁を発生させた。
防御に集中することで凌ぐつもりのようだ。
大量の弾丸を前に踏ん張っているものの、弾を逸らし切れていない。
一部が身体を掠めて彼の傷を増やしている。
ソグはよろめて血を吐く。
恨みで濁った目が俺を睨んでいた。
「うぅ、なぜだ……失敗続きだ。どうしてこうなるのだ、私はただ国のために……」
血だらけになったソグが剣の刺突を繰り出す。
風の刃が床を真っ二つにしながら俺に飛んできた。
かなりの破壊力だ。
まともな防御手段のない俺は当たれば即死する。
(気分が落ち込むほど強くなってないか? 変な奴だ)
俺は真横に跳んで躱す。
風の刃は連射銃を切断した。
あれではもう使えない。
こぼれだした弾が床に散らばっていく。
「弁償しろよ、くそったれ」
罵りながら散弾銃をぶっ放す。
ソグは大股で歩いて接近してくる。
散弾は風に阻まれて届かず、壁や天井に小さな穴を開けるばかりだった。
火力不足なのだ。
散弾銃では決定打にならない。
俺は拳銃に持ち替えて発砲した。
魔弾は風で狙いがずれるも、ソグの脇腹に命中する。
位置的に肋骨を砕いたはずだ。
「甘かったな。魔力を多めに込めれば貫通力を上げられる」
「つまらぬ小細工を……っ!」
ソグが斬りかかってくる。
距離を詰めてくる僅かな時間で俺は拳銃を連射した。
いずれもソグの腹や手足に当たって怯ませるが、彼は構わず突っ込んでくる。
剣の切っ先に風が収束して威力を高めていた。
(負傷は覚悟で終わらせるつもりか)
舌打ちした俺は、身体強化を全開にする。
そして、振り下ろされようとする剣に拳銃を撃ち込んだ。
角度のずれた風の刃が俺の肩を抉る。
身体強化を防御に偏らせても重傷だった。
俺は表情を変えず、弾切れの拳銃でソグの顔面を殴りつける。
のけ反ったソグは唇から血を垂らしていた。
大きく息を吐いた俺は、腰に差していた別の拳銃を取り出した。
そして肩の痛みを堪えて笑う。
「泥仕合だ。とことん殺り合おうぜ」




