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迷宮喫茶はじめました ~退職して店を建てたら隣にダンジョンが発生したけど気にせず営業する~  作者: 結城 からく


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第95話 災難は続く

 ゴルドの猛攻を耐えていた刺客達も、アレックスの追撃の前に瓦解した。

 僅かな生き残りは任務を放棄して逃げ出す。

 それをアレックスが追って店の外へ消えていった。

 本当にゴルドの時と同じ展開になってしまった。

 脳筋同士、似たような戦い方だから敵の反応も揃ってしまうようだ。


 俺は廃墟に等しい有様の店内を見渡す。

 それからアレックスが出ていった壁の穴を見る。


(……ゴルドと鉢合わせしそうだな)


 どちらも殺戮衝動に呑まれて暴走している。

 今頃、街に甚大な被害が出ているだろう。

 下手をすると刺客よりも多くの人間を殺しているのではないか。

 まあ、すべて隣国のせいということにして、責任を押し付ければいい。

 細かい問題は俺の知ったことではなかった。


 たった一人取り残されたソグは絶句する。

 少し前まで勝ち誇っていたはずなのに、今は焦りと怒りを露わにしていた。

 ソグは顔を押さえて声を振り絞る。


「なんということだ……まさかギアレスがこのような戦力を隠していたとは」


 ソグはほぼ無傷だ。

 まだ十分に戦える状態にあるが、彼の周囲は別であった。

 苦労して集めたであろう戦力は崩れ去り、付き従う者はいない。


 結局は純粋な暴力が物を言う。

 策略で暗殺や妨害工作など、その気になれば捻じ伏せることができるのだ。

 数の優位すら見かけだけの力に過ぎないのである。


 俺は拳銃と散弾銃を構えながら告げる。


「お前の用意した刺客はもう壊滅した。諦めて死んでくれ」


「ふざけるな。計画はまだ続けられる。貴様を殺して先に進むのだァッ!」


 叫ぶソグが疾走する。

 身体強化による急加速で距離を詰めてきた。

 剣の切っ先が床を紙のように裂いている。


 とんでもない切れ味だ。

 まともに受けようとすれば死ぬ。

 そう確信する俺だが、別に恐怖は感じていなかった。


 吠えるソグの死角からメルが襲いかかる。

 最短距離で振るわれたナイフは、ソグのガントレットが食い止めた。

 甲高い金属音を立てながらも紙一重で防いでいる。

 あと少し反応が遅れていれば、首にナイフが突き刺さっていたところだった。


「小癪な真似を……しかし、非力だな。所詮はつまらぬ暗殺術だ。正面切っての戦闘では――」


 得意げに語るソグの頭上で微かに物音が鳴る。

 ソグは天井に視線を向けて凍り付く。

 鎖を持ったリターナが、白衣をはためかせて飛び降りてくるところだった。

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