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迷宮喫茶はじめました ~退職して店を建てたら隣にダンジョンが発生したけど気にせず営業する~  作者: 結城 からく


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第91話 レッツ暴力コミュニケーション

 俺の宣言を聞いたソグは鼻を鳴らす。

 こちらに対する嘲りを隠そうともしなかった。


「ククッ、やはりギアレスは狂人揃いだな。噂通り……いや、それ以上だ」


 ソグの剣が光を帯びる。

 刃に魔力が浸透し、澄んだ笛のような音を鳴らしていた。

 どうやら武器も特殊らしい。

 具体的な効果は不明だが、斬られるべきではないのは確かだろう。


 俺は散弾銃を素早く二連射した。

 床を転がって躱したソグは、悪意に満ちた表情になる。

 蛇を彷彿とさせる嫌な気配だった。


「元より条約を守る気などなかったが、これでさらにはっきりした。法でギアレスを従わせることはできない」


 ソグが片手を掲げる。

 彼を中心に重圧が生まれた。

 無意識に緊張を誘う、そういった空気が滲んでいる。

 その状態でソグは笑みを深めた。


「――ならば力で屈服させるだけだ」


 彼が剣とガントレットを打ち鳴らした瞬間、店の入り口から大勢の人間が雪崩れ込んできた。

 そいつらは戸惑う客を追いやるように入り口付近を占拠する。

 種族も性別も年齢も恰好も不統一だが、冷たい殺意だけは不思議と一つになっていた。


 辺境伯を狙う刺客の集団だ。

 ソグの合図で登場したということは、付近で待機して別荘を包囲していたのだろう。

 いつでも強硬策に出られるように待ち構えていたわけだ。

 条約を守る気がないという発言も納得のやり口である。


 客の冒険者が狼狽えるのを見て、ソグは勝ち誇って問いかける。


「どうする。この状況でまだ抵抗する気かな?」


 店内に張り詰めた静寂が訪れた。

 その場の全員の視線が俺に注がれている。

 だから俺は、思い切りほくそ笑んでやることにした。


「力による屈服か。奇遇だな、俺も同じことを考えていた」


 予想外の言葉にソグが顔を顰める。

 俺は気にせず呼びかけた。


「出番だぞ、ゴルド」


 屋内訓練場から、仮面を着けた猫背の男――遺品商ゴルドがのっそりと現れた。

 長い両腕で保持する斧は血だらけで死体が刺さっている。

 両肩にも死体を載せており、縄で縛り付けていた。

 激しく損壊して人相が分からないが、たぶん刺客だろう。

 何らかの魔術で訓練場の結界を抜けて潜伏していたそいつらをゴルドが仕留めてきたようだ。


「どうも皆さん、お初にお目にかかりやす」


 挨拶するゴルドは、骨付きの魔物肉を取り出した。

 肉が青黒く変色しているのは、とある薬液に漬けていたからだ。

 仮面をずらしたゴルドは魔物肉を齧り付く。

 そして低い声で宣告した。


「大人しく死んでくだせえ」


 ゴルドは骨を軋ませながら背筋を伸ばす。

 仮面の奥の双眸が、ぎらついた狂気を爆発させようとしていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] おお!強化狂戦士の爆誕だ!!! リターナさん×ゴルドは恐ろしいことになりそうだなあ…ワクワク
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