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迷宮喫茶はじめました ~退職して店を建てたら隣にダンジョンが発生したけど気にせず営業する~  作者: 結城 からく


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第90話 臨時客、一名様

 統括騎士ソグが呻きながら立ち上がる。

 床が割れて地下一階が覗いていた。

 あと少し衝撃を加えたら大穴ができそうだ。

 俺はソグの生死よりも、店にもたらされた損害を気にしていた。


「ったく、また改築か」


 ソグとアレックスは裏の別荘から落下してきた。

 この勢いから推測するに、四階か五階程度の高さだろう。

 別荘の窓か壁を破り、店の屋根と天井を破壊しながらここまで来たわけだ。


 常人なら即死だろう。

 アレックスはともかくソグまで軽傷で済んでいるのは、咄嗟に身体強化で防御したからに違いない。

 それと身に着けた鎧が発光し、彼の傷が瞬く間に塞がれていくのが見えた。

 自動治癒の術式が働いているようだ。

 たぶん相当な高級品だろう。

 特別な役職に見合った装備を持っているらしい。


 口から漏れた血を拭ったソグは、陥没した床を這い上がってくる。


「な……んだ……これは」


 俺はすかさず拳銃を連射した。

 素早く反応したソグは、両腕のガントレットで弾丸を凌ぐ。

 すべて魔弾だったというのに、優れた防御性能だ。


 俺は薬莢を捨てながらソグに挨拶をする。


「ようこそ、統括騎士様」


「貴様、何者だ!」


「そう怒鳴るなよ。俺はただの喫茶店の主だ」


 俺は悠長な動作で弾の装填を行う。

 その間、ソグは動かない。

 視線を俺に固定し、意識は周囲の状況を把握しようと必死だった。

 迂闊な行動が死を招くと理解しているようだ。


 若干冷静になったソグは、そばに立つアレックスに話しかける。


「アレックス殿。この暴挙について説明いただけますか?」


「暴挙とは何でしょうか! 僕はソグ様にこのお店を知ってもらいたかっただけです! 条約の内容が決まる前にご招待したのは申し訳ないです!」


 目を輝かせるアレックスは、迫力のある笑顔でソグに詰め寄る。

 刹那、ソグが腰の剣を抜き放った。

 鮮やかな斬撃の往復が、アレックスの胸板を深々と切り裂く。

 アレックスの笑顔が固まり、彼は血を迸らせながらその場に崩れ落ちた。


 剣の血を振り払ったソグはアレックスを睨み付ける。


「もういい、下らない。ギルドは絶対中立であると聞いていたのだがな……まさか奇襲を仕掛けてくるとは」


「そいつは嘘を言っていない。この店を善意で紹介しようとしただけだ。手段が手荒すぎたがな」


 俺が口出しをすると、ソグの視線が俺を捉えた。

 憎悪と怒りが入り乱れた視線だった。


「では貴様の仕業か」


「そうだ。辺境伯の秘書に頼んでお前を店の裏に呼び、ギルドマスターを唆して無理やり連れてきた。どうだ、完璧な作戦だろう」


 俺は両手を開いておどけてみせた。

 ソグは俺との間合いを気にしながら問いかける。


「誰の命令だ。国王か、私の失脚を望む貴族か、それとも……」


「誰でもねえよ。勘違いするな」


 答えると同時に拳銃の弾を撃ち尽くす。

 六発の弾はいずれもソグに命中する軌道だったが、回避されるかガントレットで受け流された。

 無傷でやり過ごしたソグは険しい表情でにじり寄ってくる。


 俺は拳銃を下すと、今度は散弾銃を構えてみせる。


「営業妨害だ。俺は俺の意志でお前を殺す」

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