第80話 喫茶店の新商品 ※茶ではない
平たいパンを皿に置く。
その上に練り固めて焼いたゴブリン肉を載せた。
薄い葉野菜を敷き詰めてからトマトベースのソースを塗り、薄く切り分けたスライムを被せる。
仕上げに別のパンで挟み込めば完成だ。
出来上がったばかりの料理をメルが客のもとへ運んでいく。
感想はすぐに聞こえてきた。
「新作もうめえな!」
「酒とも合うぜ。片手で手軽に食えるのも良い」
「店長! もう一つくれっ!」
すかさず注文が飛んできたので、俺はまた同じ作業を繰り返す。
隙を見て追加のゴブリン肉を焼き、また別の調理も並行で進めた。
満席のテーブルでは絶えず喧騒が巻き起こっている。
最近、この店では新商品のハンバーガーが大人気だった。
どっかの国で生まれた料理らしく、二枚のパンで肉やら野菜やらを挟んだものだ。
豪快にかぶりつくのが礼儀だそうで、屋台でもよく見かける。
常連客から要望があったので、試作品を出してみたのであった。
他の料理と違って別料金の注文式にしているが、すっかり名物料理のような存在感を見せている。
ソースや中の具材を変えるだけで簡単に種類も増やせる。
料理自体も難しいものではなく、正式なメニューに加えるのはほぼ確定だった。
ちなみに具材のスライムは迷宮で繁殖した個体である。
死骸をリターナ製の薬液で毒を中和した結果、偶然にも濃厚なチーズ味になったのだ。
この発見によって料理の幅が大きく広がった。
スライムは迷宮から無尽蔵に収穫できるので贅沢に使っても問題ない。
他の店では真似できない手法なのもあって、冒険者からは大好評だった。
格安でチーズモドキを食えると知った彼らは、毎日のようにスライムの死骸を持ち込んでくる。
ゴブリン肉も相変わらず山のように余っているため、大量消費のためにチーズハンバーグなんかも作っていた。
やはり迷宮産の食材を主軸に扱うのがいい。
金はかからず、慣れればそれなりの味を実現できる。
客からも文句は出ておらず、むしろ売り上げは右肩上がりだ。
調達も客がやってくれるので人件費も浮いている。
地下一階では迷宮の土を使った野菜栽培を始めてみた。
やたらと成長速が速いため収穫を待つ必要がない。
たまに野菜型の魔物が生まれることがあるが、即座にサズが捕えるので騒ぎにはなっていない。
経営は愉快なほどに上手くいっていた。




