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迷宮喫茶はじめました ~退職して店を建てたら隣にダンジョンが発生したけど気にせず営業する~  作者: 結城 からく


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第78話 お隣さんがいらっしゃった

 それから一カ月ほどは何事もない日々が続いた。

 まあ、合間で客が死んだり店が壊れたが、いずれも特筆するほどではない。

 もはや日常とも言える出来事であり、誰も気に留めていなかった。


 ただ、一つ気になることがある。

 それはこの店の裏で始まった大規模工事だ。

 一帯の廃墟がまとめて取り壊されたかと思えば、広大な屋敷が凄まじい速度で建てられている。

 冒険者の間でも話題が挙がっているが、いずれも噂の域を出ていない。

 誰が何の目的で建てているか不明だった。


(どうせ迷宮関連だろうけどな)


 ギアレスの迷宮はよく儲かる。

 魔物だけでなく稀少鉱石も生成されているそうで、資源としての価値が非常に高い。

 街全体の経済はよく巡り、住民の生活環境は改善されつつある。

 もっとも、治安の悪さは健在なので根本的な部分はあまり変わっていない。

 むしろ金持ちが増えたことで、強盗が多くなったような気がする。


 とにかく迷宮とは無視できない影響力を持つのだ。

 当然ながら近くに拠点を構えれば利得を享受できる。

 どうにかして付近の土地を買いたいと考える者がいてもおかしくない。

 店の裏手に屋敷を建てた者も、たぶんそういう企みなのだろう。


 俺としては近所に誰が来ようと別にどうでもよかった。

 営業妨害さえ無ければ、こちらから干渉することもない。

 良識のある人間なら仲良くしたいくらいである。


(新しい店が出来たら便利なんだがなぁ……)


 そんな想像をしていると、秘書ノエルが来店した。

 彼は俺の前で恭しく礼をする。


「こんにちは。本日は引っ越しの件でご挨拶に来ました」


「引っ越し? 移転の予定はねえぞ」


「違います。我々が越してきた話です」


 ノエルが優雅に首を振る。

 なんとなく嫌な予感がして、俺は苦い顔を隠さずに尋ねた。


「裏のあれは辺境伯の屋敷だったのか」


「はい、土地をまとめて買い上げて建築しました。既に施工の八割が終了して住める状態になっています」


 予感は的中した。

 知らない間にふざけた計画が実行されていたらしい。

 隣で聞いていた辺境伯も、なぜか驚いた様子で発言する。


「ワシ、そんな許可は出しておらぬぞ?」


「申し訳ありません、独断で進めさせていただきました。これも必要な措置なのです」


 ノエルは涼やかに述べる。

 毅然とした態度には、相応以上の自信が窺えた。

 どこか吹っ切れたように見えるのは、きっと気のせいではあるまい。

 この店でノエルが味わった狂気が、彼に厄介な行動力をもたらしたようだ。

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