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迷宮喫茶はじめました ~退職して店を建てたら隣にダンジョンが発生したけど気にせず営業する~  作者: 結城 からく


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第68話 死線の一撃

 倉庫で準備を済ませて出ると、店の中央に辺境伯が立っていた。

 返り血だらけの彼女は、爛々とした眼差しを向けてくる。


「見物はもういいのか。戦いを諦めた……わけではなさそうじゃな」


「当然だ。お前はぶっ殺すと決めたんでな」


「ううむ、良い執念じゃな。さすがはワシの夫じゃ」


「勝手に決めるなよ」


 話しながら辺境伯との間合いを目測で確かめる。

 大股で十歩もない。

 接近される前に撃てるが、逃げ切るのは困難な距離だ。

 店内で動ける者はもういない。

 どいつも死んでいるか戦闘不能である。


 俺は無言で拳銃を構えた。

 狙いを辺境伯に定めて固定する。

 緊張や恐怖は無く、故に照準がぶれることはなかった。

 辺境伯は大げさに嘆息を洩らす。


「銃はワシに効かぬ。理解していると思ったのじゃが」


「やってみるまで分からないだろ」


 俺が断言した直後、辺境伯が殴りかかってきた。

 その軌道を見極めて身を翻す。


 致命的な破壊力を秘めた拳を、紙一重で、なんとか躱し切った。


 危なかった。

 全神経を集中させていなければ死んでいた。


 それでも俺は回避に成功した。

 一瞬未満の猶予を使い、拳銃を辺境伯の口に捻じ込む。


「くたばりやがれ」


 銃撃が連続で響き渡った。

 辺境伯が仰け反って固まり、それからゆっくりと元の体勢に戻った。

 負傷した様子はなく、不敵な笑みを浮かべてみせる。

 弾を吐き出そうとしないのは、飲み込んだからだろう。

 辺境伯は悠々と首を回す。


「残念じゃったな。口内なら攻撃が通ると思ったのか?」


 勝ち誇る辺境伯が腕を伸ばす。

 俺の肩に手を置こうとしていた。


「万策尽きたな。では大人しくワシの館に――」


 突如、辺境伯が膝をついた。

 そして苦悶しながら転倒して震える。


「なっ、ぅあ……ッ!?」


 辺境伯は驚愕と苦痛に苛まれながらもがいている。

 これまでの頑強な姿からは想像も付かない状態であった。

 俺は辺境伯から離れながら拳銃を下ろす。


「なんとか効いたか。さすがに焦った」


 拳銃の空薬莢を床に落とす。

 続けて弾倉に込めたのは、赤い塗料で印を付けた弾だった。

 俺はそのうち一発を辺境伯に見せて説明する。


「お前が飲み込んだのは特殊弾だ。こういう時のために用意した切り札だった」


「なんじゃと……?」


「試作品でいくつか開発したばかりでな。性能確認は済んでいたが、お前を相手に効果が出るかは賭けだった」


 俺は苦笑して椅子に座る。

 悶絶する辺境伯の耳から、小さな枝が生えていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 辺境伯、割と気に入ってるからなんやかんや死なないで欲しかったなぁ(諦念)
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