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迷宮喫茶はじめました ~退職して店を建てたら隣にダンジョンが発生したけど気にせず営業する~  作者: 結城 からく


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第64話 ダメージ0ってこういう感じ

 意味不明な要求のせいで反応が遅れてしまった。

 辺境伯に担がれた俺は、胴体を固定する腕を引き剥がしにかかる。

 しかし、身体強化込みの全力でもびくともしない。

 肘打ちを浴びせても反応はなく、むしろこちらが痛いくらいだった。

 圧倒的な腕力差があるようだ。


 俺は諦めて拳銃を握り直すと、辺境伯の側頭部に突き付ける。


「放せ」


 返答を待たずに引き金を引く。

 銃声に合わせて甲高い音が鳴り響いた。

 平たく潰れた弾丸が、側頭部に張り付いている。

 魔力を帯びて貫通力を上げたはずだというのに、皮膚すら破れなかったのだ。


「嘘だろおい」


 軽く首を回した辺境伯は、感心した様子で呟く。


「ほう、魔弾使いか。面白い」


 気配を殺していたメルが、死角から辺境伯に襲いかかる。

 連続で叩き込まれた斬撃は、辺境伯の礼服を滑っただけだった。

 少しも傷付けられていない。

 メルはすぐさま刺突を繰り出すもやはり穿てず、生地に食い込むまでで終わっている。


 振り返った辺境伯がメルのナイフを見やる。


「危ないな。魔力保護が無ければ切り裂かれていたぞ」


 辺境伯の拳がメルを殴り飛ばした。

 メルは一瞬で壁を突き破って店外へと消える。

 魔力は感じられるので生きているようだが、すぐに復帰するのは困難だろう。

 何の工夫もない打撃であるのに、あまりにも致命的な威力を備えていた。


 俺は散弾銃に魔力を込めて、至近距離から辺境伯に乱射した。

 これにはさすがの辺境伯も反応し、鬱陶しそうにもがく。


「ぬ、うぅ」


 俺の身体は空中に投げ飛ばされた。

 テーブルに激突して床を転がり、鈍痛を堪えながらなんとか立ち上がる。


 頭に散弾を食らった辺境伯は平然としていた。

 これといった負傷は見られない。

 今の攻撃でも通じなかったらしかった。

 俺は思わずぼやく。


「化け物め」


「否定はせぬよ。誰もがワシをそう呼ぶ」


 辺境伯は誇らしげに笑うと、姿勢を低くして突進してきた。

 俺は軌道を見極めて紙一重で躱す。

 真横を抜けた辺境伯は壁を粉砕してから止まった。

 さらに無事な壁を掴み、建材の一部をへし折って即席の棍棒にする。


「くそったれが。改築が台無しだ」


「気にするな。ワシの金でいくらでも修理してやろう。ただし夫になるのが条件じゃがなッ!」


 辺境伯が豪快に建材を振り回す。

 避けられなかった客が薙ぎ払われて肉片となった。

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― 新着の感想 ―
命が軽すぎる…
[一言] 最後の表現、肉塊と挽肉、どっちが良いですかね?
[一言] ミンチ肉が補充されましたね
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