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迷宮喫茶はじめました ~退職して店を建てたら隣にダンジョンが発生したけど気にせず営業する~  作者: 結城 からく


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第101話 面倒なことは丸投げすれば解決する

 翌日、店にやってきたノエルは疲労困憊を体現した姿だった。

 目のクマはくっきりと浮かび、服は皺だらけで汚れている。

 たぶん直近よりも痩せているのではないか。

 頬もこけて不健康な顔色である。


 連日の騒動による過労が原因だろう。

 遠目だとアンデッドに見間違えるような有様であった。

 俺は倒れる寸前のノエルを椅子に座らせてから、事の顛末を説明する。

 すべて聞き終えたところで、ノエルは弱々しく確認してきた。


「それで、統括騎士ソグ・ナハスを殺害したのですね……」


「ああ。どうにも鬱陶しかったんでな」


 俺が頷くと、ノエルが頭を抱えて呻いた。

 漂う疲労がさらに濃くなったような気がする。

 億劫そうに顔を上げたノエルは、控えめな口調で尋ねる。


「生け捕りはできませんでしたか」


「抵抗が激しくて無理だった。殺さないと余計な被害が増えていた」


「殺す前に利用する手はずだったと思うのですが」


「すまんな、予定変更だ。そっちでなんとかしてくれ」


 丸投げ発言を受けて、ノエルが露骨に肩を落とす。

 ここで文句を言わないのは、俺が功労者であることを理解しているからだ。

 実際、ソグや刺客を始末したのは俺達である。

 様々な根回しをしたとは言え、ノエルの立場では何も反論できない。

、大人しく従うことを選んだのは当然の判断だった。


 一方、辺境伯は何か言いたげである。

 俺がソグを射殺した状況について指摘したいのだろう。

 ノエルには「やむを得ず始末した」という体で説明している。

 とりあえずここで真実を明かされると面倒なので、視線を送って黙らせておいた。

 俺はさりげなく話をまとめにかかる。


「隣国もこれで迂闊な真似はできないはずだ。戦後処理は任せた。死体は冷凍してるから勝手に使ってくれ」


「…………はい。わかりました」


 ノエルは色々な言葉を飲み込んで、ただ承諾した。

 気苦労が絶えない男だ。

 きっと隣国との一件は穏便に進めたかったのだろう。

 しかし、俺が今回の計画を提案し、強引に実行へと移したのである。


 ギルドマスターのアレックスが、ソグに組み付いて別荘から飛び出す場にもいたらしい。

 慎重に交渉を進める真っ最中にあんなことになったのだから、胃痛でぶっ倒れてもおかしくない。

 常識人とは、時に損をする。

 その代表例がノエルという秘書であった。

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