16話「呪いの発動」ざまぁ
「酷い! ローザのことを疑うなんて! エミリー様の意地悪!」
語尾を伸ばさなくても話せるじゃない、ということはいつもの語尾を伸ばす話し方は演技なのね。
というか自分のことを名前で呼んでいるのかこの女、アホさ倍増だな。
「疑ってないわ、でもそう思わせてしまったのならごめんなさい、謝るわ」
「謝ってももう遅いです! ビリー様に言いつけてやるんだから!」
自分が不利になったら誰かに言いつけるとか、五歳児か……!?
ローザは勢いよく立ち上がる。
「ぐっ、あっ……!」
だが次の瞬間、右手で頭を押さえ左手で腹を押さえうずくまった。
盗んだドレスを身に纏った呪いと、盗んだアクセサリーを身に着けた呪いがやっと発動したらしい。
「ローザ様、どうなさいましたの?」
心配していますという顔をして、ローザ様に声をかける。
「ぐぁああっ! 頭が……頭が割れるように痛い……! ウエストが……さっきまでゆるゆるだったのに、急に締め付けられ息苦しくて……! う゛ぁぁぁあ゛あ゛っ……!」
失礼な。エミリーを太ってるみたいに言わないでほしい。ローザの体にメリハリがないだけだ。
「まあ、大変……お茶会はここまでにしましょう。あなた達、ローザ様をお部屋に運んで」
ドレスを脱いでアクセサリーを外せば、呪いの効果も解けるでしょう。
だがメイドは動こうとしない。
「目がぁ! 目が……何も、何も見えない……!!」
「痒いぃぃぃ! 手が物凄く痒いぃぃぃっっ!」
アクセサリーを壊したり、盗んだりした呪いが発動したようだ。
呪いが発動するまでに、タイムラグがあるのがこの呪いの難点ね。
「ぐぁぁあっ! 苦し…っ…!!」
「うっ! ああっ……っ! 助けてっっ!!」
二人のメイドが胸を押さえて蹲り、涙を流している。ドレスを切り刻んだ呪いがやっと発動したようだ。
二人のメイドは、心臓をナイフで刺されるような痛みに襲われているはず。
「まぁまぁ、どうしましょう」
うろたえて立つ尽くすか弱い令嬢を装い、ローザとメイドが苦しんでる様子をしばらく眺めていた。
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