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東京バトルフィールド <東京を奪還せよ。異世界の魔法使いの手から>  作者: 相山タツヤ
STAGE:05 THE WASTE TUNNELS「巣穴」 ──死の地下鉄を突破せよ。
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スパイダーズ・ネスト(2) ──「これでも食らえよ、虫ケラめ……!!」



「このっ……!!」



 黒い糸に巻かれた麻戸井は抵抗するが、銃を持つ腕ごと強く絡み込まれて身動きが取れなかった。


 横穴の奥に潜む【蜘蛛】は、捕らわれた麻戸井の身体をそのまま引きずり込もうと、そのまま凄まじい力で引っ張り始める。



「米海……!!」



 どうにもならず、麻戸井は仰向けに引き摺られながら助けを求め叫ぶ。


 驚愕で強直していた米海は、慌ててM590ショットガンを手放し、両手で麻戸井の上半身を抱きかかえ、必死に押さえ込んだ。



「クソッ、クソッ!! このバケモノ野郎、放せよこのっ……!」



 だがそのまま強烈な引っ張り合いになり、麻戸井は痛みで悲鳴を上げる。



「ぐぁあああああ……! 誰が綱引きしろって言ったんだこのバカ……! 糸を切って!!」



「そ、そうか!! でもこのまま手を離したら負けるじゃんか……!!」



「ホント、バカ!!」



 そこで横から別の銃声が鳴って、穴から伸びる黒い糸が断ち切られた。



 誰が撃ったかと考える間もなく、麻戸井は咄嗟に糸の緩みを広げ、SA58を持ち直し、仰向けのまま穴の奥へ発砲する。


 フルオートで撃ち出される7・62ミリNATO弾の強烈な反動を左手で力ずくで押さえ込み、大量の弾丸を闇に向けて撃ちまくった。


 だが、倒した手応えはなかった。


 

「チッ……逃げ足の早い……」



 身体に残った糸を振り解こうとして、そこへ別の人間が麻戸井を助け起こした。


 それは、発砲煙を銃口から揺らめかせるベネリM4ショットガンを持った宮潟瑯矢であった。


 

「……私だってね、伊達に修羅場潜ってきたわけじゃないわよ」



 宮潟は、高校の頃からお嬢様風を吹かせがちな彼女を毛嫌いしていた麻戸井を、間近でひと睨みすると、そのまま立ち上がらせる。



「……あんたは好きじゃないけど、感謝はしてるよ」



 麻戸井は目を逸らして細め、SA58の撃ち尽くした空のマガジンを新しく取り出したマガジンで叩き落とし、ガチャリと挿し込んでからボルトストップを押し下げて初弾を再装填した。


 その横で、米海は落としたM590ショットガンの行方を探している。



「わっ、私の銃はどこに落とした……!?」




「……ここだよ」



 そう言ったのは、SIG556を持つ叡だった。


 落ちたM590ショットガンを忌々しそうに蹴り上げ、米海の懐の元へ放った。



「お前の為には死にたくないよ。早く行こう、小隊長さん。 ……小隊長さん?」



 異常に気付いて、宮潟も大声を上げる。



 

「────宰河!!」


 


 


 

 


 


 彼女の声が届いたとき、列の先頭であった俺は、『天井』の穴のひとつに吊り上げられ引きずり込まれようとしていた。



「……これでも食らえよ、虫ケラめ……!!」



 糸に絡まれた俺を吊り上げていく八つの赤い瞳を睨みながら、俺は左手に握った安全ピンの抜けたスタングレネードを、思い切り投げつけた。


 素早く右腕を使って自分の目を覆う。


 穴の奥で何かにぶつかったと同時に、衝撃信管が起爆し、眩い閃光と衝撃が突き抜けた。



 引っ張られる感覚が急速に失われ、俺の身体は落下を始めた。


 硬いトンネルの地面に叩き付けられると思ったが、いくらか柔らかい感触の誰かに受け止められ、そのまま一緒に倒れ込む。


 何が起きているか思考するより早く、俺は目を閉じたままそれを抱きとめて、横に転がった。



 刹那、後ろでもう一つの何かが落ちてきて、骨が折れるグロテスクな衝突音が鳴った。



 俺は目を開く。


 眼前に、俺を抱き締めている女性、宮潟の顔があった。不満げに俺を鋭く見つめている。


 驚いた俺は、思わず尋ねた。



「……だ、大丈夫か?」



「それはこっちのセリフよ……」



 宮潟は俺に再び軽くキスをした。


 そして二人共に立ち上がり、後方を見た。


 戦慄の光景に、俺は眉をひそめる。



 全身に黒い短毛を生やした、黒色の蜘蛛人間。


 倒れて耳障りに喚き苦悶している怪物は、そうとしか形容できない生物であった。


 上半身は四本の腕を持つ女性型の身体、腰より下は蜘蛛と思しき節足動物の腹部。


 その腹部後端から、俺を絡め捕ったあの黒い糸が伸びていた。


 ここから糸を生み出し、それを巧みに操って人を捕らえていたようだ。



 俺が銃を取り直すよりも早く、恐ろしい形相の叡が進み出てきて、SIG556の銃口をその怪物に押し付け、発砲した。


 怪物の顔面が撃ち砕かれ、淡い黄色に光る液体が盛大に飛び散った。


 腹部の蜘蛛の足が、ビクッと痙攣する。


 構わず叡は、怪物が完全に生命活動を終了するまで、その頭に弾丸を容赦なく撃ち込んだ。




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