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東京バトルフィールド <東京を奪還せよ。異世界の魔法使いの手から>  作者: 相山タツヤ
STAGE:05 THE WASTE TUNNELS「巣穴」 ──死の地下鉄を突破せよ。
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異世界国ガルータム:地下浸透部隊(3)  ──「あの怪物に、トドメを刺してやる」



 返り血と肉片を全身で間近に浴びた栄城は、絶望に絶句する。




 沖國の身体を食い破った巨大蚯蚓もまた、愚かにも本来は天井である『床』をそのまま突き抜けて、天地逆転し奈落の底となった東京の夜空へと墜落していった。




 だが、禍難は終わらない。



 AA12を握ったまま宙を舞った沖國の右腕が、『床』へ乱暴に落ちた。


 筋肉が痙攣し、引き金に掛けた人差し指が、カチリと絞られる。



 銃が轟いた。



 銃口から、18ミリ口径の徹甲グレネードを封入したフラグ弾が射出された。



 弾丸が、場にさらなる惨害を招いた。






「ぎゃああああああああああ────!!」





 銃器対策部隊の呉碁が、絶叫した。


 彼の足に、暴発した徹甲グレネードが炸裂したのだ。



 両脚を粉々に消し飛ばされた呉碁は、SIG556を取り落として後方に倒れた。




「呉碁!!」



 

 麻戸井が、三津村の血を浴びた目元を拭いながら走り寄ろうとした。


 倒れて蒼白な顔で激痛と死の恐怖に震える呉碁は、彼女の方に視線を向け、声を振り絞る。




「……伏せろ麻戸井! 伏せろ……!!」




 麻戸井はハッとして、その場で『床』に飛び込んだ。



 再び壁に大穴が穿たれ、一瞬前まで自分が立っていた場所を、巨大蚯蚓が特急電車の如く猛然と通過した。


 うつ伏せに伏せた麻戸井の背中に、土煙が容赦なく降り掛かる。

  



「ヤロー!! これでも食らいやがれ────!!」




 鹿森は叫びながら、蓮と共にHK416をフルオートマチックで5・56ミリNATO弾を連射する。



 発砲の度にボルトが火薬の爆発で前後にブローバックし、バッファースプリングが跳ねる衝撃がストック越しに肩に食らいついた。



 銃身上方のガスピストンが煮えたぎるような高熱を放ち、凄まじい発砲炎を受け続ける銃口も真っ赤に加熱していく。



 やがて最終弾を撃ち切ったマガジン内のフォロワーが、ボルトストップを押し上げ、後退したボルトをガキンッと停止させた。




「……ケッ! 俺様のマスターベイションよりスタミナがねえ銃だな……!」




 鹿森は人差し指でマガジンキャッチを押して、空のマガジンを自重で落下させた。



「鹿森!!」



 蓮が叫んだ。



「あ!?」



 気付いた瞬間、深紅の炎が鹿森を襲った。



 沖國を殺した巨大蚯蚓が掘り抜いた『床』の穴から、市街を飛び回っていた一匹の中型竜が、獲物を求めて頭を覗かせていたのだ。


 

 竜が噴き掛けた炎の息は、鹿森の下半身に直撃し、彼の身体を一気にその灼熱の炎の中へ飲み込んだ。



「クソ────!!」


 

 蓮は照準を変え、竜の顔にHK416の銃弾を浴びせた。


 しかし、焦りで狙いが逸れた。銃弾は竜の耳に着弾した。致命傷には成らない。


 その一発で、蓮の銃も弾切れを起こしてしまった。



 しまった……!!



 そこで、炎に包まれたまま『床』に転がった鹿森が、ホルスターからG17ピストルを素早くドロウして、側に転がっていた消火器に弾丸を撃ち込んだ。



 破裂した消火器から消火剤が一気にバラ撒かれた。


 鹿森は、それを全身に浴びて自分の炎を強引に消し止める。



 真っ白になりながらG17を捨て、代わりに背中のスキャバードからレミントン社製M31ソウドオフショットガンを引き抜いて、片手で構え、発砲した。


挿絵(By みてみん)



 蓮を襲おうと炎を口に溜めていた竜の頭に着弾。


 花火の如く、竜の肉片が炎と共に砕け散った。



「……なっ、なんで生きてんの……!?」



 蓮は、消火剤だらけで全身真っ白となった鹿森を助け起こす。



「自分のムスコは自分で守る……俺のモットーだ!!」



 鹿森は怒鳴りながら、M31ソウドオフショットガンのフォアエンドを掴み、ジャキンッと思い切りコッキングした。




 地響きが起こった。


 金属がひしゃげる音が鳴り響き、北側の通路の端の防火扉が壊れ、新手の巨大蚯蚓が現れた。


 大口を開き、臓器をかき乱すような、空気を震わせるおぞましい咆哮を上げた。




 もっとも近くに居たのは、宮潟だった。


 怪物を鋭く睨みつけながら、ベネリM4ショットガンでフラグ弾を発砲する。


 だが、無数にある牙のうちの数本が欠けた程度で、有効な打撃にはならない。



 怒りに呻く怪物の牙が彼女に迫ろうとしたところで、彼女の横を、飛翔音が走った。


 宮潟は瞳を動かして、横目でその飛翔体を見る。




 それは、黒光りする細長いロケット。


 SIMONライフルグレネード。




 巨大蚯蚓の口の中で指向性爆薬が炸裂し、その身体が膨れ、くぐもった爆音が鳴った。


 

 目を見開いた宮潟の顔に、温かく爽やかな火薬臭い風が吹きかかった。



 一段と高い怪獣の悲鳴が上がり、巨大蚯蚓は口から泡立った黒い血液と肉片を吐きながら、引っ込んでいく。



 事態を理解した宮潟の顔から、思わずサディストな笑みがこぼれた。


 そして、通路の反対側に立っていた、世界にただ一人しか居ない最愛のフィアンセに熱い視線を送る。






「────全員、走れ!! こっちに来るんだ!!」






 俺は、硝煙を上げるHK416を手に叫んだ。


 隣で古淵が、次のSIMONライフルグレネードを俺に投げ渡した。


 受け取ったそれを、HK416の銃口にガチャリと捻じ込み、いつでも次を撃てる状態にした。



 俺の脇で、叡も万が一のためにM45A1を構えている。


 巨大蚯蚓の掘削攻撃を受け、今や仮眠室は跡形もない。



「行け、行け、行け────!!!」



 鹿森と蓮が大声を上げ、失血に苦しむ栄城をかばいながら、南側区画へ駆け出していく。

  

 米海と麻戸井は二人がかりで倒れた呉碁を引っ張り、森内、田中は後方で援護をする。



 再び壁が割れ、大量のライフル弾を食らい続けてなお生きている巨大蚯蚓が顔を出した。



「まだ来るの……!?」



 気付いた凛瀬沢が、走りながら後ろに振り返って、89式小銃を3点バーストで発砲する。



 だが、後ろ足を虚空に掬われた。


 巨大蚯蚓が開けた『床』の大穴だ。



 バランスを崩し、彼女の身体が穴へ落下する。



「わぁああ────!!」



 凛瀬沢はどうにか穴の縁に手を掛けるが、周りの血でぬるぬると滑った。



 気付いた宮潟が、どうにか凛瀬沢の腕を落下寸前で掴む。


 思いもよらぬ重量に、宮潟は顔を歪めた。



「あんた重すぎよ!! どんだけ普段食ってんの!?」



「私じゃないです! 火炎放射器のせいですよ……!!」



 そうこうしている内に、巨大蚯蚓の襲撃が迫った。



 俺は、凛瀬沢の救出の時間を稼ぐべく、巨大蚯蚓に向けてSIMONライフルグレネードを発射した。



 怪物の口の一部が、醜く吹っ飛んだ。



 黒い血を撒きながら後退していく巨大蚯蚓めがけて、半田もM27IARで追い討ちの制圧射撃を行う。


 そして、銃身下に取り付けたM203グレネードランチャーから、40ミリ高性能炸裂(HE)グレネード弾を発砲した。



 怪物の身体にめり込んで爆発し、表皮、血液、臓物、そして腹の中の土砂が盛大に飛び散る。


 だが、それでも死んではいない。煙に紛れ、また穴の中へと退避していった。



「しぶとい奴らだ……!」



 凛瀬沢の救出は、まだ完了していなかった。


 引き上げようとしても、血で滑るのだ。


 俺と半田も加わり、三人掛かりで凛瀬沢を掴んで引っ張っていく。



 突然、凛瀬沢のブーツに、穴から飛び掛かってきた小型竜が取り付いて、ガジリと噛みついた。



 再び叫んだ凛瀬沢の声を、45口径の銃声が上書きした。


 小型竜の眉間に弾痕が開いていた。そのままポロリと口を離し、墜落していく。



 俺は驚いて、後方を見る。



 そこには、M45A1を構えた叡が立っていた。



「……いい狙いだ」



 すると、叡が上機嫌に少し微笑んでいった。



「キスしてくれたお礼だよ、小隊長さん」



 こんな時に余計なことを言う。


 すかさず宮潟が、俺を恐ろしい憤怒の顔つきで睨んだ。



「…………浮気?」



「えっ、叡の悪い冗談だ!! 今はこんなことを言い争ってる場合じゃ……」



 唐突に宮潟は、俺に顔を寄せて、思い切り唇を重ねてきた。



 宮潟瑯矢との、あまりに強引な初めてのキス。



 だが、その感触を味わう余裕はあるわけもない。



「……これで既成事実は出来たわね。死んでも結婚してもらうわよ」



 妙に恐ろしい据わった瞳で、彼女は俺を見つめた。


 叡は無言だったが、同じ目つきで宮潟を睨んでいる。



「あの! すみません! 生きてここを脱出してからやってくださいよ!」



 苛立った様子の半田が、俺の耳元で怒鳴った。



「……俺に言うな!!」



 俺は真っ赤な顔で怒鳴り返してから、凛瀬沢を助け起こした。



「すまない、歩けるか……!?」



「ああ、全然……大丈夫ですね……! 金属板入りのブーツを支給されていて良かったです。宰河警視の結婚式には、歩いて参加できますよ……!」



 返事するのも面倒だ。



 俺は、『床』に転がっている血まみれの銃に気が付いた。


 AA12アサルトショットガン。


 そのグリップには、ちぎれた右手がくっついている。



 そこで初めて俺は、沖國が殺された事を悟った。



 HK416を腰のウェポンキャッチで固定して脇に吊るしてから、沖國の右手を引き剥がし、AA12の残弾を確かめた。


 まだドラムマガジンの中に弾は残っている。



「よし、行くぞ……早く、南側通路の端へ! あの怪物に、トドメを刺してやる」 



 AA12を抱えて、仲間と共に駆け出した。



 この南側通路には、七百発のベアリング弾とありったけのステンレス釘を仕込んだクレイモア地雷が仕掛けてある。



 他の生存メンバーが待っている防火扉の前に到達し、俺は大声を上げた。




「射撃用意は良いか!? ────重機関銃!!」




 横川は力強く頷いた。




「いつでもどーぞ」




 軽装甲車を撃破するため開発された12・7ミリMK211徹甲焼夷重機関銃弾。


 それを二百発ベルトリンクで接続した、射撃用三脚によって固定されたブローニングM2A1重機関銃。



 重厚な銃身が、北側通路を正確に補足した。



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