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東京バトルフィールド <東京を奪還せよ。異世界の魔法使いの手から>  作者: 相山タツヤ
STAGE:05 THE WASTE TUNNELS「巣穴」 ──死の地下鉄を突破せよ。
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メキシカン・スタンドオフ(2)  ──「そいつを仕留めたのは、あたし」



 冗談とも本気ともつかない古淵の異様な剣幕に、明らかな動揺が走った。


 64式小銃を構える舞原は、焦りながら左手を振る。


「おいよせ、古淵! 正気か!? ここで自爆して、何になるって言うんだ……!?」


「正気の中の正気、ド正気だぞ舞原ァ! 案外、これも悪くない選択だと思うぞ!? この狂った現実を見る必要も感じる必要も、まったく無くなるんだからなぁ────!」


 古淵の笑顔は、もともと疲れ切って汗まみれであったこともあり、狂気性は迫真そのものだ。



 その時、ひときわ怯えた様子の凛瀬沢が、意を決したように声を上げた。


「……やっぱり、もう、こんな事はやめましょうよ!! だから言ったじゃないですか、宰河警視には絶対勝てないって! このままだと……相手が怪物であろうがなかろうが……冗談じゃなく、皆殺しですよ……!」


 その言葉に、舞原はまずいという表情を浮かべた。


「凛瀬沢、黙っていろ……! それを言ったら意味がない……!」


「こんな状況で黙れるわけないですよ……! 生き残るためには、協力し合わないと……!」


 凛瀬沢は俺を真っ直ぐに見て、助けを求めるような悲痛な声で話し始める。



「信じられないような話ですけど、聞いてください……! 実は……人間に擬態する怪物が、仲間の中に潜んでいたんです!」



 ……やはり、そうだったのか。


 推測が確信に変わり、俺は目を細める。


 強大な敵が迫る最中、共に戦うべき味方に銃を向ける必要があるとすれば、思い当たる理由はそれしかない。


 異世界軍の【文化潜入部隊】が柚岐谷を乗っ取っていたように、別行動していた仲間たちの中にもそれが潜んでいたのだ。



「私たちは、三洋百貨店の民間人もできるだけ多く、地下鉄駅へ避難させようとしていました。

 けれど……仲間の一人が、地下鉄に入る直前……正体を現したんです。他の仲間だけでなく、同行していた民間人をも、無差別に殺し始めました。最初は銃を使い、弾が切れたら、身体を……黒いバケモノに変化させて……。それは……銃器対策部隊の、大泉警部補です」


 凛瀬沢が身震いしながらそう言ったところで、麻戸井がSA58バトルライフルを宮潟に向けながら、唾を吐いた。


 『床』に落ちたその唾液には血が混じっている。


「……そいつを仕留めたのは、あたし。WASPの死体から奪っていたこの銃が役に立った。7・62ミリ徹甲弾で、奴のボディアーマーを撃ち抜いた。

 けど……民間人の避難は、最悪の形で失敗した。何も知らない人間から見れば、あたしらは全員、大泉の……バケモノの仲間だ。阿鼻叫喚に陥った民間人は、四方八方に逃げていき……次々に、竜の餌食になった。誰も、助けられなかった」


 宮潟は、ベネリM4ショットガンを麻戸井に突きつけながら尋ねる。


「……奴ら、と言ったわね。まだ他にも居たの?」


 その問いに対し、叡に銃口を向けられた米海が忌々しそうに答えた。


「私の天才的アイデアで、見破ってやった。もう一人の黒ネズミは、そこで倒れてるハゲ野郎……じゃなくて、沖國の、部下の女だった。猫被ってるような奴だと思ってたが、まさか、人の皮を被ってるとは思いもしなかったぜ。クソ」


 俺は、うずくまって咳き込む沖國にMR73を向けながら、当然の疑問をぶつける。


「どうやって見破った……?」


「……至極簡単な血液検査だ。

 変異した大泉と戦った時に分かったんだが、奴らの血は、生きてる。本来は黒い血液を持つが、傷を負っても正体がバレないように、人間の血に擬態ができる。

 だから……全員の血を採取して、それを順番に火で炙ってやれば、何らかの反応が出て正体を現すんじゃないかと、米海が言ったんだ。これが、大当たりだった。俺の部下の、瑚藤(ごとう)の血液だけが、意思をもって火を避ける挙動を示した……」


「なるほど……それは大きな発見だ」


「でも……怪物の正体を見破ったとしても、簡単に勝てるかどうかは別問題だった。瑚藤を倒すまでに、二人、死んだ。それで……今はこのザマだ」 


「……だから、俺たちには問答無用で銃を向けたんだな? 良い反省とは言えないな……」



 そこで、何かに気付いた様子の半田が、周囲を見回しながら言う。



「待った……! どうして、この駅には客の姿が無いんだ? クリスマスなんだから、ここにも大勢の民間人が居たはずなんじゃ……?」



 すると舞原が、観念した表情で64式小銃を静かに降ろし、答える。



「それは、分からない。本当に、知らないんだ。我々がここに到達した時には……誰も居なかったんだ。客も、駅員も……誰も……」


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