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東京バトルフィールド <東京を奪還せよ。異世界の魔法使いの手から>  作者: 相山タツヤ
STAGE:04 MARCH OF THE DEMONS「怪物の行進」 ──黒竜の巣窟と化した市街から脱出せよ。
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グラビティ・デイズ(1)  ──「しゃらくせえ、マザーファッカ!!」


「────次は何だ!?」


 踏み出した足が、妙な感覚に陥った。力を込めて床を踏み込むことが出来ない。


 宮潟が床を指差した。


「う、嘘……!」


 叡が壊した花瓶の破片が小刻みに震え出し、フワリと浮き上がった。


 それだけではない。周囲にあるものが次々と重力を失い、宙を漂い始める。


「うわっ!!」


 やがて俺たちの身体も、徐々に宙に浮き上がり始めた。

 

 重力の感覚がない。踏ん張ろうともがいても、身体がゆっくりと回転してしまうばかりだ。


 叡が、俺に縋り付きながら大声を上げる。


「小隊長さん! こういう時は、どうすればいいの!?」


「俺が分かるわけないだろ……!」


 





 同刻、日本橋三洋百貨店、五階。


 そこで移動を開始しようとしていたSAT第二小隊長の沖國も、同じ異変に遭遇していた。


「うわあぁああ!!」


 商品として陳列されていた大量の家具が宙を漂っている。

 昔にホラー映画で見た『ポルターガイスト現象』の光景にそっくりだが、それと今の状況が異なるのは、自分たちまで無重力の中を浮遊しているということだ。


 沖國だけでなく他の隊員たちも無重力に翻弄され、成す術もなく悲鳴を上げている。


「チックショ──!! なんなんだよ──!!」


 一段と口やかましい銃器対策部隊第二班の女性隊員の米海も、銃剣を着けたモスバーグM590ショットガンを抱えながら叫んでいる。


「おい! 火炎放射器の燃料タンク、ぶつけて壊すんじゃねーぞ! ぶっかけてきたら、ぜってえ殺すからな!」


 米海が、携帯火炎放射器を背負いながら隣で宙を漂っている森内を怒鳴りつけた。


「分かってますよ! 背負ってる自分が一番怖いんすよ!!」


 その側では、全てを諦めた顔つきの第二班副班長の大泉が、浮遊しながら念仏を唱え続けている。


 班長の善田鉄二は、最初の事故の衝撃で首の骨を折って死亡しており、今は彼が銃器対策部隊第二班を率いねばならない。だが、彼の精神状態ではそれは恐らく無理だ。


 現在のSAT第二小隊の生存者は沖國を含めて六名。銃器対策部隊の生存者は、十三名。


「沖國小隊長! この現象はいったい何でしょうか……!?」


 副小隊長の広尾(ひろお)が、ウインドウの縁に掴まりながら言う。


「知らん! だが、自然現象のわけがねえ! 異世界軍のクソ野郎共が、また何か仕掛けてきやがったんだ!」


「まさか……彼らは、魔法で重力すら操れると!?」


「もはや何が起こったって、おかしくねえよ!」


 怒鳴った時、沖國は気付いた。

 ウインドウの外に大型竜の顔がこちらを覗いている。


「────危ない!!」


 ウインドウが竜の腕で打ち破られた。飛び散った破片が、スローモーションのように宙を舞い散る。


 沖國は必死に広尾を引き戻そうとするが、無重力で思うような身動きが出来なかった。


 竜はあっという間に、悲鳴を上げる広尾の頭を掴んで連れ去っていってしまった。


「広尾……! このクソ野郎共────!!」


 脆くなったウインドウに次々と小型竜が突っ込んできて、屋内に侵入を開始してくる。


 大泉が悲鳴を上げ、89式小銃を発砲した。すると彼は射撃の反動を受け止めきることができず、回転しながら後方に飛んで行ってしまった。無重力のせいで身体を地面に固定できない為だ。


 米海は天井の照明に足を引っかけながら、M590ショットガンを構えた。


「しゃらくせえ、マザーファッカ!!」


 透明な唾の塊を宙に吐いたと同時に、M590ショットガンを発砲し、沖國の間近に迫った小型竜を撃ち砕いた。


 黒い肉片が飛び散ると共に、生臭い赤の蛍光色の体液が細かい丸い球となって、イルミネーションアートのように舞った。


 米海はフォアエンドをジャキンと引いて、撃ち終えたショットシェルを宙に排出し、天井を蹴って、今度は宙に浮いた状態で発砲した。


 森内の脚に食いつこうとする小型竜も正確に撃ち砕く。


 彼女は発砲の反動を利用して、身体をしなやかに逸らせてクルッと向きを変えると、大声を上げた。


「水無し水泳だ! 全員、逃げんぞ! 銃対万歳!」


 呆気に取られていた沖國は我に返り、AA12アサルトショットガンを構え直した。

 この強力な武器は、WASP隊員の亡骸から鹵獲したものだ。

 今はフラグ弾ではなく、バックショット散弾が装填されている。


 沖國は足を前方に伸ばし、ひっくり返らないよう姿勢を工夫しながら、AA12のトリガーを絞る。


 野太い連続した銃声と共に、バックショット散弾がフルオートで発射され、小型竜を次々と薙ぎ倒し、新手の侵入をも牽制した。


 反動が沖國の肩を押して、独りでに身体が後退していく。



「全員、誤射に注意し、撃ちながら退避! このまま地下鉄乗り場を目指せ!」



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