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東京バトルフィールド <東京を奪還せよ。異世界の魔法使いの手から>  作者: 相山タツヤ
STAGE:03 BLOOD FALLS 「ブラッドフォール」   ── 異世界侵攻を生き延びろ。
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オペレーション:TOKYO BATTLEFIELD (2)  ──「これが君たちのラストチャンスだ」



 鶴騎中隊長は、構わず任務説明を再開する。


「今回の任務は、合同作戦となる。銃器対策部隊と共に、国防陸軍特殊部隊【WASP】が同行する。彼らが先導し、道を拓く」


 会議室に、グレーの都市迷彩の戦闘服とキャップを被っている一組の男女が現れた。


 男の方は背が高くひょろっとしていて、やけに穏やかな表情をしているのが不気味だった。白髪交じりの短髪で、初老の年頃に見える。


 女の方は背が低くスレンダーに見えるが、顔に大きな火傷の古傷があり、そのナイフのような鋭く冷たい目つきは只ならぬ歴戦から来るものだ。



「WASPアルファ小隊の小隊長、左崎(さざき)一郎(いちろう)少佐と、ブラヴォー小隊の小隊長、星乃(ほしの)弓子(ゆみこ)中尉だ」



 俺は、二人を値踏みするように見据え続けた。元々、彼らのことはあまり好きではない。


 WASP……【Weapon And Sanction Professionals】の略で、直訳すれば『武器と制裁のプロフェッショナル』。去年、国防陸軍において新設された市街地戦に特化した特殊部隊で、外国工作員による首都を標的としたゲリラ攻撃へ対抗することを想定している。


 合同訓練を行ったこともあるが、全員ではないにしても多くの隊員から『武力に劣る警察特殊部隊なんて、足手まといにしかならない』という傲りを感じられた。

 確かに戦力だけで見れば軍隊に敵わないのは百も承知だが、我々から見れば彼らは所詮、実動経験のないルーキー集団だ。


 キャップを取らないまま、左崎は軽く会釈をした。


「紹介をありがとう、鶴騎さん。後の説明は、私たちが引き継ぎましょう。下がって良いですよ」


 鶴騎中隊長は、左崎のぶっきらぼうな物言いに顔をムッとさせるが、そのまま黙って脇に退けた。


 俺は合同訓練で顔を合わせたことがあるので彼と初対面ではないが、左崎は常にニコニコした顔立ちで、何を考えているのか分からないところが多い。

 それでいて、彼自身はかなりの手練れだ。あまり、認めたくないところだが。



「みんな、よく聞いてほしい。私らの任務は、君たちを守ることだ。東京テレポーターでは、あの第一小隊が成す術もなく全滅してしまったそうだね。


 私は彼らについてはあまり知らないが……謹んでお悔みを申し上げたい。そして、同じ悲劇を二度と繰り返したくないと思っている。


 だから、くれぐれも身の丈を越えて強がるような行動は慎んでくれ。この場に座っている全員の墓を建てるなんて、そんな悲しいことをさせないでくれ。


 ……良いかい? 

 君たちの仲間は、適切な対応を怠った結果、彼らだけでなく、多くの市民も惨たらしく殺害されることになった。これがどれだけ重大な不祥事なのか、分かっているかい。

 責任を取って多くの警察官僚の首も吹っ飛ぶことになるし、SATも解散の危機に陥るだろう。


 本来であれば、国防軍が全てを引き継ぐところだ。

 しかし、警察にもメンツというものがある。だからこうして、国防軍と警察の合同作戦という形で事態を収束させて、警察にも花を持たせる機会を与えようという措置になったというわけだ。


 全員、それをよく自覚するように。これが君たちのラストチャンスだ」



 会議室の中は、今や負の感情が爆発する寸前だ。誰しも歯を食いしばり、拳を固く握りしめ、震えながら堪えている。

 しかし誰も、彼の発言に対して異を唱えることは出来ない。まさしく、左崎の言う通りだからだ。


 第一小隊は、ただの哀れな被害者ではない。彼らは市民を守る立場にあり、それが決壊したことで、戦後の事件としては最悪の規模の犠牲者が出ることになったのだ。この重大な失敗の責任は、遺された人間が必ず取らねばならない。


 沖國が、声を殺して泣いていた。第一小隊長の永友を、彼は師として大いに慕っていたことを思い出す。やり場のない悔恨に苛まれ、涙を流し続けているように見えた。



「あの、いいかしら? ひとつ質問が」


 

 隣を見ると、宮潟が澄ました顔で挙手している。



「……どうぞ。手短に頼むよ」


「左崎さんの、好きな果物は何かしら?」



 俺は唖然とする。この場の全員もだ。



「ハハハ……馬鹿にしているのか? 無駄話ができる立場だと思っているのか」


「これは重大な話よ。何が好き?」



 左崎は「ハァ」と苦笑いを浮かべて髪を掻きながら、答える。



「オレンジだ。それが、どうしたのかな」


 

 すると宮潟は、ニヤニヤと笑いながら言った。



「そう、分かったわ。それなら、貴方の墓にはオレンジを供えてあげる」



 すぐ後ろの席に座る古淵が、プッと噴き出した。


 俺は溜息をついた。冗談でも人の死を茶化すのは止めろと常日頃から教えているが、どうも未だに理解していないらしい。


 

 左崎は一瞬だけ面食らった顔つきになるが、すぐに穏やかな顔に戻って、軽く拍手をする。



「大した度胸だ。まぁ、万が一そんな事があったら、その時は頼むよ。……さて、無駄話は終わりだ。次の内容に移ろう」 



 いつの間にか、叡が視界から消えている。


 どこに行ったのかと見ると、叡は会議室の隅にしゃがみ込んで、リュックから取り出した紙パックのコーヒー牛乳のストローをちゅーちゅー吸っていた。

 こちらもマイペース過ぎて、この先の対応に困りそうだ。



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