絶望の祈り ──「撃ち続けろ!!」
「撃て!! 撃ち続けろ────!!」
ゴンドラの中で真壁は、真下に向けてM870Pショットガンでダブル・オー・バック散弾を発砲し続けた。
SATの栗沢と三条が、一瞬にして八つ裂きにされた。
ずたずたになった装備と臓物と骨が鮮血の爆発となって飛散し、周囲に血の雨を降らせる。
真壁の顔は既に、悪寒にまみれた汗でぐっしょりと濡れている。
ミイの十三人の部下たちはほとんど撃ち倒されたが、肝心のミイをまだ仕留められていない。
彼女の部下たちが壁となって、我が身を犠牲にミイを守ったせいだ。
「──────ぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
怒りに満ちたミイの絶叫が轟く。
背後で鋭い金切り音が鳴って、真壁は振り返る。
ゴンドラの床に、ドリルで抉ったような小さい丸い穴が開いていた。
三人の部下は、銃撃に集中していて気付いていない。
……これは?
宙に、赤ばんだ靄が掛かり始める。
真壁は目を凝らす。
違う。
靄ではない。
極細の赤い糸。
人の血を吸って染まった、糸だ。
「────逃げろ!!」
真壁は叫んだ。
しかし、このゴンドラにまともな逃げ場などない。
真壁は手摺りを乗り越え、身体を投げ出した。
その直後、反応が遅れた三人の隊員たちの全身に、無数の糸が一瞬で絡みつく。
悲鳴を上げる間もなく、彼らは嵐のように荒れ狂った糸に全身を引き裂かれ、粉々になった血肉を花火のように噴き散らした。
かろうじてゴンドラの手摺りにぶら下がり、ミイの残忍な攻撃を避けた真壁は、悲しみと怒りに呻きながら、下を見下ろす。
「あぁ……神よ…」
遥か下でバリアーを展開しながら真壁を見上げるミイの表情は、顔の右半分を恐ろしい憤怒で歪めながら、また左半分は殺戮の狂喜に震える笑顔を形作っていた。
この世のものとは到底思えない、地獄の底からやってきた怪物の顔であった。
ほんの数秒後には、自分も彼女の超越した能力によって、惨たらしく殺されるに違いない。
「この……バケモノめ……」
真壁は左腕の力だけでぶら下がりながら、タクティカルベストに着けた二種の手榴弾を右手でむしり取った。
一つは、スタングレネード。
もう一つは、国防軍でも採用されている高威力の対人殺傷用M67グレネード。
二つの安全ピンを強く口に噛み締めて、キンッと同時に引き抜いた。
安全レバーがカキンッと外れ、撃鉄が雷管を打ち叩き、延期薬の燃焼カウントダウンが始まる。
「神よ……我らの罪を赦したまえ……そして、悪より救いだしたまえ……!」
真壁は最後の勇気を振り絞り、ゴンドラを掴む左手を離す。
ミイの目が、驚きに見開かれた。
二つの手榴弾を抱えたまま真壁は、ミイめがけて落下した。
衝突と同時に、眩い閃光が衝撃波と共に突き抜け、巨大な爆発音が轟いた。





