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東京バトルフィールド <東京を奪還せよ。異世界の魔法使いの手から>  作者: 相山タツヤ
STAGE:02 THE GATEWAY OF HELL 「地獄のゲートウェイ」 ── 異世界の使者と対峙せよ。
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バトルフィールド (2)  ──「蒼い光に触れるな!! 触れたら、死ぬぞ!!」




「永友さん……!!」



 首を切断され崩れ落ちる永友に、栗沢は絶叫する。


 銃器対策部隊の銃撃は絶えず続いているが、その全てはミイたちを包み込む赤いバリアーに守られてしまっている。


 とても現実の光景とは思えない。


 だが、目の前で永友小隊長が殺害された。それは夢でも映画の世界でもない、紛れもない現実の出来事だ。


 尊敬する小隊長の死。

 だが、感傷に沈む暇は与えられない。



「────どうですか、ニンゲンさん? 勝てませんよ、わたしたちには……」



 永友の首を討ち取ったミイは、恍惚とした表情で、大鎌を抱きかかえる。



「小さい硬い玉を飛ばして攻撃する……『銃』。強いと思いますが、弱いです。だって、当たらなければ、意味がないじゃありませんか?」



 ミイは、バリアーに刺さったまま停止している銃弾のひとつを、つまみ上げた。



「わたしはフシギに思います。こんな小さい玉で、ほんとうに死ねるんでしょうか。ニンゲンさんは弱いから、死ぬんでしょう。でも、わたしたちは倒せません」



 銃弾をつまんだ指の皮膚の下に、蒼い光が灯った。


 途端に、ジュウウと焼ける音がして、銃弾が指の中でドロリと溶けた。



「ごキゲンいかがでしょうか? ニンゲンさん。道を、開けてくれる気になりましたか?」


 

 栗沢はKSGショットガンを構えたまま、瞳の底に大きな怒りの炎を湛え、ミイを睨みつけた。


 左手でストック後方の弾倉切り替えスイッチをカチリと操作し、ダブル・オー・バック散弾をいつでも発砲できる状態にする。



<……こちらHQ、搭乗ホールの全隊員へ。何としてでも、時間を稼ぐんだ。民間人の避難が完了できていない。出口が『障害物』に阻まれ、施設内の民間人の多くが、未だ避難できていない……>



 耳を疑うような連絡内容に、栗沢は怒りを隠さず応答する。



「こちらS1B! HQ、まだ避難できていないんですか!? 避難誘導はどうなっているんですか!?」



<こちらHQ……私にも、分からない……。何と表現すればいいのか……ふざけた表現になるのは重々承知だが、出口に、『バリアー』のようなものがある>



 傘宮中隊副長の声は憔悴し、生気がすっかり抜けていた。







 


「ギャァアアアアアアアアアアアア────!!」



 東京テレポーター出口に、男の絶叫が響いた。



「熱ぃ、熱いぃいいいいいいいいい──!! 助けてくれぇえええええ!!」



 蒼い炎に全身を包まれた男性が、焼かれながら身悶えし、火の粉を散らしながら床を転げ回る。


 篠巻拓弥は無我夢中で、備え付けの消火器を引っ張り出して、安全ピンをカキンと引き抜いた。


 蛋白質が焦げる臭いが鼻孔を刺激する。火に巻かれて間もないというのに、男の全身は既にほとんど黒焦げになっていた。


 レバーを握り、男にノズルを向けて消火剤を放射しようとした時、男の身体が爆発した。



「うわぁっ!!」



 蒼い爆炎と粉々に炭化した男の身体が四散し、篠巻は衝撃で吹っ飛ばされ、床を滑る。



「大丈夫ですか!? 篠巻くん!」



 天城に助け起こされながら篠巻は、燃え尽きた男の黒い残骸と、東京テレポーターの出入り口をベールのように覆う、蒼い光を見やった。


 先程の男は、あの蒼い『バリアー』を強行突破しようとして、身体に火が点いたのだ。


 今やエントランスホールは、大勢の利用客たちが逃げ場を失い泣き叫ぶ、阿鼻叫喚の光景だ。


 篠巻は咳込んで煙を吐き出すと、大声を上げた。



「────みんな、聞け!! あの蒼い光に触れるな!! 触れたら、死ぬぞ!!」









<……正体不明の蒼い光が今、東京テレポーター全体を覆っている。それに触れた人間は焼死する。

 何らかの科学兵器と思われるが、とにかく、多くの民間人がこの東京テレポーターに閉じ込められ、脱出できずにいる。

 応援部隊は間もなく到着するが、このバリアーのせいで施設に救援に入ることはできない。

 発生源を停止させない限り、誰も、生きては出られない>



 傘宮中隊副長の言う、停止させるべき『発生源』。

 搭乗ホールに集まる隊員は全員、それが『誰か』を知っていた。


 耳障りな高笑いが響き渡った。


 ミイは興奮に打ち震え、唾液を垂らしながら、狂ったように笑い続けた。


 唐突に、自分の左手の小指と薬指を口に咥え、ギリギリと噛み締め始める。


 「グフッ、グフェフェエェフェエ」と意味不明な笑い声を漏らしながら、ついには、その指をブチリと食い千切ってしまい、バキッ、ベキッ、ボキッと口の中で噛み砕いて、飲み込んでしまった。


 傷口から、灰色の血液が流れ落ちる。



「すみません……つい、ワレを失って、シマイマシタ。楽しいと、笑いが止まらなくなって、指をタべないとナオらないんです。ニンゲンさんも、そういうこと、ありませんかぁ──?」



 口元から自らの血液をだらりと滴らせながら、邪悪な笑みを浮かべた。



 「シンゼンタイシとして、あるまじき失態ですね。失格ですね。でも、すごく楽しい……楽しい……もっと……コロシタイ」



 白い歯を見せて「キキキキッ」と引きつった笑い声を上げた。


 栗沢は怯まず、KSGショットガンを彼女に向け続ける。



「……もう、親善大使なんて辞めたらどうっすか?」



 そんな言葉を投げかけた。



「貴女と親善交流したい人なんて、そっちの世界では居るんすかね。とにかく殺しが大好きで、楽しいと指を食いちぎっちゃう変態と親善交流するくらいなら、まだトイレの個室の排泄音を一日中聞くほうがよっぽど楽しいっすね。貴女って、友達います? そこの後ろの人たちも、ひょっとしてイヤイヤ来たんじゃないですか」



 ミイは、笑い声をぴたりと止めて、真顔になった。



<おい栗沢! 無意味な挑発は止めろ! 危険だ!>



 栗沢はミイを強く睨みつけたまま、無線機をむしり取って搭乗橋の外に放り捨てた。



「図星っすか? そうだったら申し訳ないっすね。親善大使を任せられたっていうのも、実際は片道切符の鉄砲玉、ただの厄介払いじゃないですか。とことん暴れて道を切り開いてくれればよし、道中で死んでもまぁ良し、みたいな。あーあ、ほんとに可哀想っすね。その足元の猫モドキしか、友達がいないんじゃないっすか。心より、同情します」



 ミイは真顔のまま、肩をわなわなと震わせ始める。



 栗沢は目を細めた。

 ミイを覆う赤いバリアーの色が、明滅して薄らいだ。


 バリアーに刺さって静止していた弾丸のいくつかが、外れてカラカラと落下する。



 ……やっぱり。


 それは、栗沢の読み通りの展開であった。

 隣でPM5ショットガンを構える三条が、栗沢に耳打ちする。



「おい栗沢……そんなに挑発して、どうする気なんだ……」



「……多分、あのバリアーは、『殺せる』」



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