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恋って…何?  作者: み〜さん


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24/41

五分刈りには米粒です。

 外から差し込む、朝の柔らかな陽射しを背に受け、黒く艶やかな髪が風も無いのにフンワリと舞い上がる。


 白い肌に薄っすらと色付く桜色した頬。黒く潤む瞳がボールを追いかける一団を見つめ、あっと口を開けると、はにかんだ笑みを浮かべた。


 視線を辿らなくても分かった。


 一際高い身長。少し長めの前髪が汗で額に張り付き、それを時々体操服の袖で拭いている姿。ボールを掲げジャンプする姿。


 隣のクラスの転校生美少女は、佐藤くんを熱く見つめていた。それはあたかも恋する少女のように。


 ああっ、彼女はヒロインで今この時も、世界は彼女に味方する。


 あんな演出で可愛らしく擦り寄れば、どんな男も取り込んでしまうだろう。だって彼女はヒロインだ。


 私がジッと加賀さんを見つめていると、彼女も私に気が付いた。クリクリの瞳を私に真っ直ぐ向けて来る。可愛らしい唇を引き締めて。


 何処にいても私は、加賀さんの邪魔者なんだ。そんな私のゲームの終わりは?追放ですか?それとも死んでしまうのですか?


 小さく息を吐いて後ろを向く。未だに佐藤くんの良いところを解く久保くん。


 私はニッコリ笑い、久保くんにお願いした。


「久保くん、私を教室まで送ってくれない?」


 嫌がる久保くんを引き摺るように体育館を出た。もちろん、佐藤くんや黒井くんに気付かれ無いように、加賀さんがいた出入り口とは別の出入り口から。


 教室に入ると、カバンを置いて、瑠美ちゃんのいるテニス部へと向かった。


 そしてその日から佐藤くんは、私の護衛メンバーから外れる事になった。


 お昼も理解準備室には来ない。だからお弁当のおかずをいつも通りに戻した。


 警護はランダムで担当者を決める事になった。


 今日は柔道部、稼ぎ頭の一人栗田くん。


 五分刈りに触りたい。ジョリジョリを体感してみたい!


 栗田くんの頭をジッと見つめていると、栗田くんが自分の頭を撫でて聞いてきた。


「山田、僕の頭に何か付いてる?さっきからやたらとみて来るだろ?」


「う〜〜ん、気になる事があるんだけど、さすがに無理だと諦めてるトコ。だから大丈夫。」


 ニコっと笑ってお弁当のウインナーに箸を伸ばす。


 栗田くんもヘニョッと笑って自分の大きなお弁当箱に顔を埋めるように食べだす。


 それは所謂犬食い?初めて見た。


 口をモグモグさせながら、しばし栗田くんの犬食いを観察する。


「かな、私今日、部活出ないから一緒に帰ろう。」


 瑠美ちゃんが、紙パックのジュースをズズッと吸い上げ、教室の隅に有るゴミ箱に投げる。それは一旦壁に当たり下に有るゴミ箱の中に消えた。素晴らしい!


「ホント?やったぁ!」


「あっ、僕も駅まで今日は送って行くからね。」


 大きなお弁当箱から顔を上げた栗田くんの五分刈りに、米粒が刺さっていた。う゛っ!面白いからそのままにしておこう。


 そう思って笑いを堪えていると、瑠美ちゃんが目敏く栗田くんの米粒を見つけ、取ってしまった!なぁーッ!笑いのネタがっ!


「明日は俺と青木が一緒に帰るから。」


 黒井くんが3個目の菓子パンの袋を開ける。アレ?いつもはパンやらおにぎりやら乱雑に机の上に置かれているのに、今日はそれでお終い?1リットルのお茶が載ってるだけで、机の上が綺麗だった。ダイエット?


 まぁ、炭水化物ばっかりだったからね。


「うん。ありがとう。」


 頭を下げて黒井くんを見る。なぜか、大きく息を吐く黒井くん。なぜ?


「杉野、なんとかならんか?」


 黒井くんが瑠美ちゃんを見る。でも瑠美ちゃんは黒井くんと視線を合わさない。?喧嘩?


「無理!無理だったら無理!だって、近くにいればきっと、イベントに巻き込まれてしまう。分かってるでしょう?どうしようもないのよ。いい加減、諦めて。」


 イベントに巻き込まれる?と言うことは、私のこと?む〜ん。なんの事だろう…。


 再び大きなため息を吐き、窓の外に目をやる黒井くん。


「どうしたもんかなぁ……。」


 今日は木曜日。


 空には雲が広がり出していた。天気予報では、明日は雨だと言っている。


 私がこの学校に来るのも明日が最後。


 最後の日に苦手な雨なんて、私よっぽど付いてないな。


 それに、火曜日以来、休み時間毎に姿を眩ます佐藤くん。最後に佐藤くんとお喋りしたいなぁ。できないまま此処から居なくなるのは、チョット淋しいから、少しだけでも喋れないかな?それもできないなら、頭ポンポンだけでも…いいから。

















読んで頂いてありがとうございます。

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