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恋って…何?  作者: み〜さん


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22/41

軍曹デス。

「助かったよォ、佐藤。」


 青木さんが大袈裟に肩を落とす。


 アレからはるくんは加賀さんを抱えるようにして、校舎の中に戻って行った。


【かな、いい加減にしろよ。】


 私に捨て台詞を残して。


「良かったよ。途中、新聞部のヤツと会って、山田達が大変だって聞いて走った、走った。」


 佐藤くんが青木さんの傘をさして、1つの傘に2人で入っている。


 私とでは身長差で、傘の意味が無くなってしまう。主に私が。


「田中さん、新聞部の人達も使ってるんだ。すごいね。さすが次期部長。使えるものはネコでも使う?」


 青木さんがクスクスと笑う。なんだか笑い方まで色気が滲み出てる。う〜ん、黒井くんと恋人かぁ……。


「山田、大丈夫か?」


 傘があるから、佐藤くんの顔は見えない。見ようとすると、私の顔面が濡れる。それはイヤ。


「まぁ…。」


 ボソっと言った言葉は、ヤッパリ傘に阻まれて佐藤くん達には聞こえなかったようだ。


「山田?」


 すると、傘の一片が持ち上がる。


「大丈夫…じゃぁないよなぁ。怖かったろう?ゴメンなぁ。」


 持っていた傘を青木さんに渡して、私の顔を覗き込む佐藤くん。


「佐藤くん!濡れる!」


 慌てて私の傘を差し出すが、悲しいかな高さが届かない。


「明日からはそんなヘマしないから。」


 佐藤くんは、爪先立ちして傘を差し出す私に首を振ってやんわりと押し戻した。


 雨に濡れていく佐藤くんを見る。


 笑っているのに、どうしてか今にも泣きそうに見える。


「佐藤くん、私は……大丈夫、だよ。だから、ごめんね。ありがとう。」


 自信が無いけど、目一杯の笑顔で佐藤くんに返す。


 でも、佐藤くんは歩みを止めて俯き、


「青木、山田頼む。」


 言うなり踵を返し、学校へ走って行ってしまった。


「……青春だねェ」


 青木さんが、走り去る佐藤くんの後ろ姿を見て呟く。


 佐藤くんはどうして…私よりも傷付いた顔をしていたんだろう。


 私は、すでに無い佐藤くんの後ろ姿を探した。





 火曜日の朝、いつも通り瑠美ちゃんが来るのを、駅で待つ。


 昨日の雨がウソのように、雲ひとつ無い晴れ渡った空だった。


 不意に携帯が鳴り、見て見ると瑠美ちゃんからだった。


「エッ?」


 メールには、お腹の調子が悪いから、先に学校に行ってくれ。と書かれていた。


 どうしようと思った時、上空から声を掛けられた。


「オッス!山田。」


 見上げれば、佐藤くんのいつもの顔。


 濃いめの茶色い髪に、サイドを短く刈り込み、トップと前髪を少し長くして横分けにしていて、少し釣り目の猫目で、背が190あって、話をしてると首が痛くなって、時々時差も発生して、ヤケに馴れ馴れしくって、いつも私を子供扱いする、目の上?のタンコブだ。


「お、は、よ、う!山田!」


 頭をグリグリされた。短いからイイけどねっ!


「そんなに言わなくっても聞こえてる。おはよう、佐藤くん。」


「昨日はごめんなぁ。ちゃんと家に辿り着けたか?」


 更にグリグリされたので、腕を掴み投げた。


「辿り着けたから今ここにいる。今朝は佐藤くんが一緒に行くの?」


「ああっ、よろしくな。ところで軍曹は?」


「……軍曹?……」


 何?軍曹って?


「あっ…イヤぁ、コレ言うなよ。杉野の事、軍曹って呼んでんだ。ホラ、あいつ怒るとすんげぇ怖いだろ?だから、軍曹。」


 頬をポリポリと掻きながら、気不味い顔で言う佐藤くん。


 でも、ピッタリな感じ?瑠美ちゃんには悪いけど、鬼軍曹。


「これバレたら、またどやされるからさぁ。なっ。」


「いつも瑠美ちゃんに怒られてるの?」


 またって事は。


「あ〜〜〜っ、最近?多いかな…。で、杉野は?」


「お腹の調子が良くないから、先に学校へ行ってって、連絡が今来た。」


 と、急に佐藤くんが後ろを向き、片手で頭を押さえる。


「クッソ!軍曹…謀やがった‼︎」


 えっ?何を?



読んでいただきありがとうございます。

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