第80話 ヘタレなクロウベル
「師匠と俺の部屋に戻って来た」
「………………口に出す必要性はないし、宿場の宿で部屋が一部屋しか空いてなかったのもあるし、そもそもドアホウは外で寝るっていっていたはずじゃが?」
「そんな話も……魔女について話しましょうって言ったのは師匠ですし」
って事で、俺達はまだ宿場にいる。
小さい宿で部屋もビジネスホテルぐらいにせまい。
日本で言う4畳ぐらいの部屋に窓、小さいテーブル、丸椅子、ベッドぐらいしか備え付けがない。
「ワラワはドアホウが! 魔女について! 知りたい! って言ったとはずじゃが!?」
事実をちょっと誇張しただけで、師匠が怒りだした。
「そんな気もしますね」
「…………ノラやアリシアの偉大さがわかるなのじゃ」
師匠が近くのベッドに座ると俺に「で?」と、たずねてくる。
いよいよ本題を言わないと部屋ごと吹き飛ばされそうなので、俺も近くの椅子にすわって師匠を眺めた。
「本物の魔女って事は無いんですよね」
「…………古い時代から魔女は嫌われているのじゃ、噂になるほどじゃったら国が動く……当然金品狙いの偽物じゃろな。ある程度の力はあるじゃろがな、あるいは……いやまだいいじゃろ」
「その俺馬鹿だからいまいちわからないんですけど、魔女ってなんでそんなに嫌われて?」
攻略ページとこの世界で20年生きていても俺なら言えるが原因がわからない。
俺は平気なんだけど、周りの評判を聞く限り魔女って言うだけで『ヘイ、ボーイ! 魔女の名前を使うとはベリーハード!!』って言われるぐらいだ。
「知らんのじゃ」
「はい?」
「ワラワでさえ過去に何をした。なども心当たりは多少あるが、その前から嫌われていたのじゃ」
「仮にですよ、偽物ならまぁいいんですけど本物で知り合いだったら?」
俺が相談したいのはここだ。
魔女vs魔女
どこぞの映画見たいな事になると周りの被害も多そうだ。
国が亡ぶとか魔女と関わるな。とか言われてる世界だよ?
「…………相手にもよるのじゃ」
「師匠もそうですけど魔女って話通じない系が多いっすね」
「話の通じなさで言えば一番はドアホウじゃな」
ああいえば、こういう。
本当に素直じゃないっていうか。
「知りたい事はわかったのじゃ?」
「あー何となく? 俺としては魔女だから迫害される世界はどうなのかと思いますけどね」
「こればっかりは無理じゃろ。ドアホウは魔王と呼ばれる奴が名前を隠さないで冒険者になれると思うのじゃ?」
魔王。
魔物を率いる王の事だ。
世間一般的には魔王っていう魔王はいない。
人間の創造物というか、あとは自称魔王の皆様。
ゲーム系でも一般的だ、この世界の魔王は俺が知っている通りなら未確定で、魔王城と呼ばれる場所には黒いもやしかない。
それは置いておいて『やぁ僕は魔王サタン。新米冒険者なんだけど一緒に組んでくれる?』と、行って来たら全員がドン引くだろう。
「無理っすね」
「そういう事じゃ。あのダニ御者の依頼を聞いたんじゃ明日に備えて寝たほうがいいじゃろな」
師匠は普段着のままベッドに潜りこんだ。
毛布の中で衣服を脱ぐと毛布の中から部屋に飛ばしていく。
なるほど、こうやって汚部屋は出来ていくのか……。
俺は感心してみていると師匠と目が合った。
あっ『何時まで部屋にいるのじゃ!』って怒られるパターンだ。
「………………ほれ、来るのじゃ?」
「ちょ!?」
師匠は毛布を開けて下着姿の恰好だ、毛布に入れ。と俺を誘っている。
が!
今の俺にそんな度胸は無く! それに今じゃない。
「じゃっ俺は外で寝るんで」
「ドアホウ本当にそうい――」
俺や素早く扉を開けて廊下を走った。
いや、俺だって師匠の許可あれば色々したいよ? でも今じゃない。
今の誘いはからかい上手な師匠さんだよ。
俺を男としてじゃなくて、犬猫が盛っているから仕方がなく処理してやろう。みたいな感じがあった。
俺の目標は『イチャラブ』なの。
事務的に『仕方がないな』とは違う。
2人で遭難してさ。古い洞窟で食べる物もなくたき火で体を温める2人。たき火の音だけが聞こえ、師匠がふと立ち上がる。
俺はそれを見て『師匠?』と声をかけるんだ、師匠が『黙っていたがドアホウ……いやクロウベルよ』て衣服を脱ぐのだ。
俺は驚きながら『師匠!』って叫んで。
「前を見るダニ!」
「そう……御者のダニさんに襲いかか、うああああああああああああああああ」
想像の中の師匠が。俺が押し倒した師匠の顔が御者のダニさん……本名は別にあるらしくダニさんと言うのは愛称だった人の顔にかわった。
「お、おちつくダニ!」
「うああうああああああ! はぁはぁはぁ。あれダニさん?」
「あんたが師匠という人に頼まれた事をしたダニ。他の乗客には1日ほどまってもらうダニよ」
師匠が言った条件というのは、先行して師匠が先に見に行くから。ダニ御者、他の客は翌日に道を通れって事だ。
安全を考えるなら妥当だろう。
――
――――
翌朝になると師匠は欠伸をしながら俺達の前に出て来た。
他の乗客はダニさんのお金でゆったりと一泊だ。
「本当に頼むダニよ? 人数が少ないとはいえ金を払ったダニ!」
「知ってるよ、金っても他の乗客が6人だしそんな出費にならないだろうに」
「1日でも早く着きたいダニ! 速さがもっとーのダニ馬車ダニ!」
はいはい。
「ん。準備出来たかドアホウ」
「あっ師匠おはようございます」
三角帽子に魔法使いの杖。動きやすい上下の服。
俺のほうも腰にはアンジェリカの剣、動きやすい布服。
以前から革鎧ぐらいつけろ、といわれているけど冒険者じゃないのでそれはしない。
「じゃぁダニよ。ワラワが4日たっても戻ってこなかったら、タルタンの教会でこの封書を見せるのじゃ。聖騎士副隊長アンジェリカがダニの損害を払うのじゃ……いいのじゃ、封には相手にわかるように魔法がかけておるのじゃ、なので開けるとバレるし金ももらえないのじゃよ」
そんな魔法があるのか。
師匠にしては念入りに説明してる。
「んな…………! あんたら、そんな偉い人だったダニか!?」
「知らないで声をかけたのか」
「そ、その一番強そうだったダニ……」
その考えは間違えてない。
俺はダニ御者にニカっと白い歯を見せる。
「まぁ朗報をまっていてよ、俺と師匠でぱっぱと偽物を懲らしめてくるから」
「頼むダニよ」
俺と師匠はダニさんに見送られて街道を馬で走る。
師匠は馬に乗れないので、俺が前で師匠が腰に手を回している状態だ。
現在ゴールダンに行く街道、この宿場から4日程度でつくらしいが、その中央付近の森に自称魔女がいるとの事。
そのせいでダニさんの馬車以外にも街道が封鎖状態で遠回りになっている。
この馬ならその場所まで半日で行ける事。
「と、言う事で合ってますよね?」
「合ってるのじゃ!」
背中にしがみ付いている師匠に声をかけ、馬のスピードを速める。
ここで重要なのは、師匠の胸が俺の背中についているという事だ、ここで俺がそれに喜んだりすると、普通に師匠の魔法が飛んでくる。
顔と表情に出ないように少し前屈みになりながら馬を走らせた。
途中で数回休憩し、目的地の森に見えて来た。
「ドアホウ! 右に避けるのじゃ!」
「っ!」
森の中から一本の光が飛んできた。
レーザーのような白い線で、俺は師匠の言う通りに馬を右によけた、馬の腹が森側にくと師匠がそのまま飛び降りた。
「ライトニングフルバースト!!」
師匠の雷系最強の魔法が森に向かって放たれた。
いきなり全力の師匠に馬が驚いて暴れる、俺も降りたほういいだろうな……馬の首筋を優しくなでて俺も飛び降りた。
馬はそのまま走っていくが、運がよければ……って所か。
俺も師匠の横に立つと森から第2の攻撃が飛んでくる。
「ちっ! ドアホウ、今すぐに馬に乗って戻れ。本物じゃ!」
「あー…………馬逃がしちゃった」
俺は師匠に舌をだす。
「…………わざとか?」
「さぁ? それよりも水盾連!」
俺はウォーターシールドを張り光線攻撃を防ぐ。




