第八十三話 わたしに好意を持っている殿下
殿下は、わたしに好意を持っていると言っている。
好意を持つ。
しかも、わたしと出会った時からと言っている。
どういう意味なのだろう。
わたしに恋をしているということなのだろうか?
いや、そんな期待はしてはいけない。
同情という意味での好意なのかもしれない。
そう思うようにしなければならない。
期待しすぎると、期待通りにならなかった時、大きな落胆が襲ってくる。
それを防がなくてはいけない。
そうは思いつつも、だんだん胸のドキドキが大きくなっていくわたし。
「わたしは、あなたのかわいそうな身の上を聞いて、同情をしました。しかし、同情だけではありません。その中で、決して落胆することなく、前に向かって進むというその強い心。わたしはそこに感動しました。そして、何よりも、わたしはあなたと初めて会った気がしないのです。こんなことを言うと、あなたに嫌われるか、避けられてしまうかもしれませんが、わたしはあなたと以前出会っていると思います、懐かしく思うのです、この世では会った記憶がありません。この時間になるまで、あなたとこの世で出会っていたかどうか、一生懸命思い出そうとしましたが、無理でした。思い出すことができません。ということは、もしかすると、前世やそれ以前の過去世で出会っているのかもしれません。わたしは前世や過去世というものがあるのかどうかということはよくわかりません。しかし、そこで出会っていなければ、この懐かしく思う気持ちは説明できないと思います。そして、前世や過去世であなたと仲が良かったからこそ、この世で初めて会ったというのに、すぐにあなたに好意を持ったのではないかと思います」
殿下も、前世や過去世でわたしと会っている気がすると言っている。
わたしだけが思っていたわけではなかったのだ。
これはうれしいことだ。
「こんな話をして、もしかすると嫌な気分になったかもしれません。もしそうでしたら申し訳なく思います」
殿下は少し寂しそうに話す。
わたしがこの話を理解できなさそうに思ったのだろうか?
無理はないと思う。
今日初めて会った人にそういうことを言っているのだから。
しかし、わたしは殿下の話が理解できる。
そのことを伝えていかなくてはならない。
「そんなことはありません。わたしも殿下と初めてお会いした時、初めて会った気がしませんでした」
「あなたもそう思ったのですか?」
驚いた様子の殿下。
「そう思ったのです。そして、懐かしく思う気持ちも強くありました。でもわたしの方も、この世で殿下とお会いした記憶はありません。殿下のおっしゃる通り、前世もしくは過去世で会っていなければ、こういう懐かしさは生まれてこない気がします」
わたしの心は沸き立ってくる。
「そうすると、わたしたちは、前世や過去世でも出会い、仲良くしていたのかもしれません。いや、そうであってほしいと思っています」
「殿下にそう言っていただけると光栄です」
「そして、わたしは、いよいよあなたに言わなくてはいけない時がきました。これは、わたしなりに悩みぬいた結論です。もし嫌であれば、受け入れていただかなくて、もちろん構いません」
今までの話からすると、一か月でここを去らなくてはならない、ということはなさそうだけど……。
沸き立ってきていた心が急激に冷却されてくる。
いい言葉でありますように。
そう一生懸命思うわたしだった。
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