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713 そう言えばレーア姉ちゃんはまだ会ったことなかったっけ

「ルディーン、すごい。知ってるお貴族様、いるの?」


 僕がくすくす笑ってたらね、キャリーナ姉ちゃんがびっくりしたお顔で聞いてきたんだよ。


「なんでびっくりしてるの? キャリーナ姉ちゃんも知ってるじゃないか」


「私も知ってる人?」


 そう言って頭をこてんって倒すキャリーナ姉ちゃん。


 それを見たレーア姉ちゃんは、そっか解ったって言ったんだよ。


「ロルフってお爺さんのことね」


「違うよ、ロルフさんはお金持ちだけどお貴族様じゃないじゃないか!」


 レーア姉ちゃん、何言ってるんだろう。


 僕はそう思ったんだけど、すぐに違った、しょうがないのかって思ったんだ。


「そっか。あの時、レーナ姉ちゃんはいなかったんだっけ」


「私がいない時に、お貴族様と会ったの?」


 僕がうなずくと、お母さんがああ、なるほどっておててをパンって叩いたんだ。


「ルディーンが言っているお貴族様って、もしかして裁縫ギルドの」


「うん。ギルドマスターのクリームお姉さんだよ。前に男爵様の家の子だって言ってたでしょ」


 裁縫ギルドのギルドマスターをやってるクリームお姉さんは、筋肉モリモリのお兄さんでお姉さんなんだよ。


 そのクリームお姉さんが自分のこと、お貴族様だよって言ったもん。


 だからおいしいものがあるお店のことを知ってるんじゃないかなって思ったんだ。


 でもね、レーア姉ちゃんは大丈夫かなぁって心配してるんだよ。


「ねぇ、ルディーン。そのクリームさんって人、ギルドマスターなんでしょ。食べ物屋さんのことを聞きに行って迷惑じゃないかな?」


「大丈夫だよ。だってこないだ、いっしょにぬいぐるみを作ってなかよしになったもん」


 あの時、なかよしさんだよねって聞いたらうんって答えてくれたもん。


 だから大丈夫だよって言ったら、お母さんもそうねって。


「私もクリームさんとは昔からの知り合いだし、おいしいお店を聞きに行ったくらいで怒られるようなことは無いと思うわよ」


「そっか。じゃあ、そのクリームさんって人に聞きに行こうよ」


 お母さんのお話を聞いて安心したレーア姉ちゃんが賛成してくれたから、僕たちはクリームさんがいる裁縫ギルドに向かうことにしたんだ。



「わぁ、裁縫ギルドってとってもかわいい建物なのね」


 レーア姉ちゃんは初めて来たから、オレンジのお屋根にピンクに塗られた壁の裁縫ギルドを見てびっくり。


 上が丸くなってるかわいくて薄いピンク色のドアを見ながら、物づくりのギルドってみんなこんななの? ってお母さんに聞いたんだ。


「物づくりのギルド?」


「うん。だってルディーンがいつも行く錬金術のギルドも小物屋さんみたいなかわいい見た目をしてるでしょ」


「そうだけど、流石に鍛冶ギルドはかわいくないと思うわよ」


 裁縫と錬金術はギルドマスターがクリームお姉さんとバーリマンさんでしょ。


 だからかわいいお店みたいな見た目だけど、鍛冶師さんはきっとかわいい物が好きな人がギルドマスターをやって無いと思うもん。


 それに小物屋さんみたいなお店の中から金属をカンカン叩く音が聞こえたら変だから、僕もこんなにかわいくないんじゃないかなぁって思ったんだ。


「ねぇ、早く入ろうよ」


 レーア姉ちゃんとお母さんがそんな話をしてたらね、キャリーナ姉ちゃんはいつまでそんなお話をしてるのってちょっと怒っちゃったんだよね。


 だからお母さんたちはごめんねって謝ってから、裁縫ギルドのドアを開けたんだよ。


 ちりんちりん


「いらっしゃいませ」


 すると中から、前に来た時とおんなじちょっと野太い男の人の声が。


 それを聞いた僕は、クリームお姉さん、ちゃんといた! って喜んでんだよ。


 でも僕の前にいたレーア姉ちゃんがドアのところで立ち止まっちゃったもんだから、僕は中に入れなかったんだ。


「レーア姉ちゃん、どうしたの?」


 だから僕、レーア姉ちゃんにそう聞いたんだけど、隣にいたキャリーナ姉ちゃんがそりゃあ驚くよって。


「クリームさんを見てびっくりしたんじゃないかな? 私も初めて会った時はびっくりしたもん」


「そっか。クリームお姉さん、おっきな男の人で筋肉モリモリだけど、ひらひらの服着てるもんね」


 そう言えば僕とキャリーナ姉ちゃん、初めてクリームさんに会った時にびっくりしてお母さんの後ろに隠れちゃったんだ。


 レーア姉ちゃんは僕やキャリーナ姉ちゃんよりおっきいけど、クリームお姉さんを見ておんなじようにびっくりしちゃったんだね。


 そう思った僕は、レーア姉ちゃんにクリームお姉さんはとっても優しいから怖くないよって言おうとしたんだよ。


 でもね。


「なんでこんなにかわいいのが並んでるの? お母さん。やっぱりここ、裁縫ギルドじゃないでしょ」


 レーア姉ちゃんがそんなこと言ったもんだからびっくり。 


 お姉ちゃんの横をすり抜けて中に入ると、中にはおっきくて筋肉モリモリのクリームお姉さんがいてニッコリ。


「あら、シーラちゃん。今日は別の娘さんも連れて来たのね」


 そう言いながら僕たちに向かって、胸の前で小さくおててを振ってくれたんだよね。


 だから僕、レーア姉ちゃんはクリームお姉さんをかわいいって思ったのかなぁって頭をこてんって倒したんだ。


 だけど、それは勘違いだってすぐに解ったんだよ。


 だって僕の後でレーア姉ちゃんの横をすり抜けてきたキャリーナ姉ちゃんがこう言ったんだもん。


「わぁ! おっきなぬいぐるみがいっぱい増えてる!」


 そう言われた初めて気が付いたんだ。


 裁縫ギルドの中にスティナちゃんくらいの大きさの、いろんな動物さんの形をしたかわいいぬいぐるみがいっぱい並んでることにね。


 読んで頂いてありがとうございます。


 ちょっと短めですが、キリがいいので今回はここまでで。


 前回の最後を読んでお貴族様と言うのはロルフさんやバーリマンさんではないかと言う意見がありましたが、実際はクリームお姉さんでした。


 ルディーン君はロルフさんのことをすっごいお金持ちだと思っているし、バーリマンさんも自分では貴族だと名乗っていません。


 でもクリームお姉さんは自分で貴族だと話してるんですよね。なのでルディーン君も、貴族と言うワードから真っ先にクリームお姉さんを思い出したという訳です。


挿絵(By みてみん)


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― 新着の感想 ―
ロルフ翁ならご隠居だから元貴族(笑) みなし貴族だけど、現領主の祖父だから美味しい店を全て知っていても不思議ではない。 ルディーンがアイデアを出せば、色々とやってくれると思うけど。(例えばミシュランガ…
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