680 ちっちゃな宝石のかけらでも使い道はあるんだよ
転生したけど0レベル、第3巻が本日2月14日にアース・スター・エンターテイメント様から発売されます。
書下ろしや再構成など、なろう版とはかなり違った形になっているので楽しんでもらえたら幸いです。
詳しい話は後書きで。
バーリマンさんの宝石をきれいな形にしたことで僕は大満足。
これでお仕事は終わったなぁって思ってたんだよ。
でもね、キャリーナ姉ちゃんに言われちゃったんだ。
「ルディーン。原石はどんな形にするの?」
「あっ、そっか。バーリマンさんのお願いって、持ってきた原石をきれいな宝石にすることだった」
そう思って宝石箱の中を見てみるとね、ごつごつしてたり違う色が混ざったりしてる宝石の原石が何個か入ってたんだ。
「バーリマンさん。これ、全部きれいにするの?」
「そうねぇ、できたら……」
バーリマンさんが宝石箱を覗き込みながらそう言うと、横にいたロルフさんがそんなのダメだよって。
「これ、ギルマス。ルディーン君が宝石の加工をできるというのは秘密にすると決めたであろう。数が増えればそれだけ外に漏れる危険があるのだから、2個か3個で我慢せよ」
「そっ、そうですわね」
僕は別に何個でもいいのにって思ってたんだよ。
でもロルフさんがダメって言うもんだから、バーリマンさんは宝石箱の中を見ながら悩み始めたんだ。
「この石は透明度が高いから、見栄えが良くなりそうだし……あっ、でもルディーン君はクリエイト魔法で形を変えるのだから形がいびつなものの方が……」
そんな感じですぐに決まりそうになかったもんだから、僕たちはそれを待つことに。
「ルディーン。待ってる間に、宝石のかけらでなんか作ってよ」
「でも、あれはバーリマンさんのだよ。勝手に使っちゃっていいのかなぁ?」
「大丈夫だよ。だってさっき、少しくらいならもらってもいいって言ってたもん」
そう言えばそんなこと言ってたっけ。
ならいいのかなぁ。
そう思った僕は、キャリーナ姉ちゃんと一緒にさっきバーリマンさんが出してくれた宝石のかけらが載ってるお皿のとこに行ったんだよ。
「でも、キャリーナ姉ちゃん。もうおっきいのは無いから、さっきのみたいなのは作れないよ」
「じゃあさ、ルディーンは木の形も変えられるでしょ。なら薪で動物を作って、その目のところにこれをつけたらステキになるんじゃないかな」
そっか、ちっちゃくても目だけだったらキラキラしたのが作れるもん。
それにキャンディさんのとこでぬいぐるみを作った時に、頭がおっきくてかわいくした動物を考えたでしょ。
あれの小さいのを作って、おめめとお鼻を宝石にしたらカッコいいかも。
「うん、解ったよ。じゃあ、どんなのがいい?」
「ホーンラビット! ルディーンが絵に描いた、ぬいぐるみのホーンラビットがみたいなのがいい」
ホーンラビットかぁ。
僕が描いたのってことは、お尻が大きくってお座りしてるやつだよね。
「うん。いいよ」
さっきボーリングのピンを作った時に使った薪の残りがあるでしょ。
それを持ちながら、僕はどんなのがいいかなぁって考えたんだ。
「どうせなら、思いっきりかわいいのがいいよね」
そこで思い出したのが、前の世界にあったウサギさんのお人形。
ちっちゃいお人形なんだけど、それはなんとウサギさんなのに服を着てるんだよ。
ちょっとへんてこに思えるけど、かわいいんだよね。
「うん。あれを作ろっと」
男の子と女の子のがあったけど、キャリーナ姉ちゃんが欲しいって言ってるんだから女の子の方がいいよね。
僕はかわいいワンピースを着たウサギさんを思い浮かべながら体に魔力を循環させて、さっきの残りの薪にクリエイト魔法を使ったんだ。
そしたらちょこんって座った、5センチくらいのウサギさんの人形ができあがったんだよ。
「わぁ、何これ。ホーンラビットなのにドレスを着てるよ。お人形さんみたい」
それを見たキャリーナ姉ちゃんは大喜び。
でもね、すぐにあれ? ってお顔をして頭をこてんって倒したんだ。
「ルディーン。これ、ホーンラビットよね? ツノがないけど、宝石のかけらで作るの?」
「あっ、そっか。忘れてた」
僕、前の世界にあったお人形を思い浮かべながら魔法を使ったでしょ。
だからこのウサギにはツノが無かったんだよね。
「どうしよう? ツノ、あった方がいい?」
「う~ん。このままでもかわいいから、これでいいよ。目は宝石で作ってくれるんでしょ」
「うん。ホーンラビットだから、赤いのを使うね」
僕はそう言うと、お皿の中から赤いかけらを二つ、取り出したんだ。
でもね、それを見たキャリーナ姉ちゃんがびっくりしたお顔をしたんだよ。
「ルディーン。それだと小さくない? このお人形、こんなにおっきいよ」
「大丈夫だよ。さっきみたいに丸くするんじゃないもん」
人形のおめめにするのならくっつく方は平らでいいでしょ。
だからその分小さい宝石を使っても大丈夫。
「じゃあ、作るね」
宝石は面がいっぱいあった方がきれいって言ってたけど、これはお人形さんの目だもん。
つるっとした方がかわいいから、片方が平らなレンズみたいな形を思い浮かべながらクリエイト魔法を使ったんだよ。
「ほんとだ。これならいいかも」
「でしょ。じゃあ、付けちゃうね」
キャリーナ姉ちゃんもこの大きさでいいって言ったから、僕はウサギのお人形の目のところに宝石を置いてクリエイト魔法を発動。
そしたら目のところがうにょ~んって動いて、赤い宝石が埋まったんだ。
「おめめの宝石に木がかぶさるようにしたから、これでとれちゃうことは無いと思うよ」
「ほんと? やったぁ!」
キャリーナ姉ちゃんはそう言うと、そのウサギさんのお人形を持ってお母さんのところへ走っていっちゃった。
「お母さん、ルディーンがかわいいのを作ってくれた!」
「まぁ、よかったわね」
でね、それを見せてあげるとお母さんはニコニコしながらよかったねって言ったんだけど、
「えっ!? 何よ、これ」
そのお人形を見た瞬間に、すっごくびっくりしたお顔になっちゃったんだよね。
だから僕もびっくりして、お母さんたちのところに走っていったんだ。
「どうしたの、お母さん」
「どうしたのって、ルディーン。これはあなたが作ったの?」
「うん。キャリーナ姉ちゃんが作ってって言ったから。ダメだった?」
「ダメと言うか……」
お母さんはちょっと考えてから、僕に言ったんだ。
「ルディーン。あなた、金や銀も魔法で形を変えられたわよね?」
「うん。変えられるよ。前にお母さんのペンダント、作ってあげたじゃないか」
キャリーナ姉ちゃんは木のブローチだったけど、レーア姉ちゃんとお母さんはそれじゃヤダって言ったから金を土台にして魔石のペンダントトップを作ってあげたことがあるんだよね。
だからお母さん、僕がクリエイト魔法で金の形を変えられるって知ってるはずなのに何でそんなこと聞くんだろうって思ったんだよ。
そしたらさ、お母さんがちょっと怖いお顔をして聞いてきたんだ。
「このお人形は宝石が二個、目になっているわよね? もしかして、何個かの宝石を一つの土台に埋め込むなんてこともできたりするの?」
「うん。そんなの簡単だよ」
クリエイト魔法は形を変える魔法だもん。
くっつけるだけだったら何個だっていっぺんにできちゃうんだよね。
そのことを教えてあげると、お母さんは大喜び。
「あとで、アクセサリー屋に行きましょう。ルディーンに見せたいものがあるのよ」
「見せたいもの?」
僕が頭をこてんって倒すと、お母さんはそれがなにかを教えてくれたんだ。
「アクセサリーの中には、小さな宝石がいくつもついているものがあるの。でもそんなのは高くて買えないでしょ。でも、さっき見せてもらった宝石のかけらでこんなきれいなものが作れるのなら話は変わってくるわ」
アクセサリーにつける宝石は、ちっちゃくてもきれいな形をしてないとダメでしょ。
だから高いんだけど、僕はクリエイト魔法で形を変えられるもん。
だからキャリーナ姉ちゃんのお人形を見たお母さんはそれに気が付いて、高いアクセサリーとおんなじようなのを作って欲しいなぁって思ったんだってさ。
「そっか。さっきバーリマンさんが、かけらだったら安いよって言ってたもんね」
「ええ。土台になる金も安くはないけど、小さなアクセサリーにするくらいなら少しでいいもの。それくらいの出費なら大丈夫」
そう言って笑うお母さん。
でもね。
「これ、先ほどルディーン君が宝石の加工ができることは秘密にせねばならぬと言ったであろう。母親であるおぬしがそんなことを言いだしてどうする」
「えっ、あっ、そうでしたね」
ロルフさんが内緒にしないとダメって言ったでしょって、コラーって怒ったんだ。
だからお母さんはしょんぼり。
「ごめんね。ロルフさんの言う通りだから、宝石のアクセサリーはあきらめることにするわ」
僕にごめんなさいして、高いアクセサリーはあきらめるって言ったんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
この世界にシルバ○アファミリーが爆誕ですw
あれはぬいぐるみ以上にデフォルメが効いているから、この世界の木彫りの人形とはかけ離れたかわいさでしょうね。
でもそこに着目する前にお母さんが大暴走、そこに触れられることはありませんでした。
まぁ、ここにはクリームお姉さんのような人がいないので、注目されたとしてもその場限りのわだいで終わったかもしれませんが。
さて、前書きにも書きましたが本日2月14日はバレンタイン……ではなく、転生したけど0レベルの3巻の発売日です。
2巻で評判が良かったと編集さんが言っていたので、3巻では話を前後させたり構成を変えたり、新たに書き下ろしたりしてスティナちゃん成分を大増量しております。
それに書籍版の初回封入特典には「スティナちゃんとお留守番」というお話までついて来ます。
こちらは無くなり次第二度と手に入れることはできなくなるので、読みたい方は早めにお買い求めください。
それ以外の方も、なるべく買って頂けるとありがたいです。毎度のことながら、これが売れないと4巻を出してもらいないのでよろしくお願いします。




