678 宝石箱には魔法のカギが付いてるんだよ
先週の金曜日と今週の月曜日、更新を休んですみませんでした。
活動報告に書いたのですが、実は体を壊して木曜から月曜まで寝込んでおりまして。
医者に行ったところインフルエンザでもコロナでもなかったのですが、薬を飲まないと治らないような状況だったらしく、ただ寝てればいいと考えた素人考えが仇となりました。
次からはちゃんとすぐに医者にかかることにします。申し訳ありませんでした。
バーリマンさんが用意するって言ってた宝石の原石、僕はこれからお店に頼むんだろうなぁって思ってたんだよ。
でもね、
「それじゃあこれから用意させるから、カットをお願いできる?」
こんな風に言われちゃったもんだから、びっくりしたんだ。
「バーリマンさん。原石、持ってるの?」
「ええ。タリスマンにも使うし、必要な時にすぐ手に入るとは限らないからね」
宝石ってすごく高いって言ってたでしょ。
なのにバーリマンさんは、いつでも何個か用意してあるんだよって言うんだもん。
だから僕、錬金術ギルドのギルドマスターをやってるくらいだからすっごいお金持ちなんだなぁって思ったんだ。
「伯爵。部下をお借りしてもいいですか?」
「宝石を取りに行かせるのじゃな? 構わぬぞ」
ロルフさんはそう言うと、窓の近くに行ってお外に向かって手を振ったんだ。
そしたらちょっとして、執事服を着た人が僕たちのいるお部屋に入ってきた。
「して、どこに人をやればよいのかな?」
ロルフさんに聞かれたバーリマンさんは、その執事服の人とちょっとの間お話。
それが終わると執事服の人がすぐに出てっちゃったもんだから、僕たちは帰ってくるまでお茶を飲みながら待つことになったんだよ。
「お申しつけのものは、こちらでよろしかったでしょうか?」
「ええ、これで間違いないわ。ありがとう」
執事服の人たちが持ってきたのは、きれいな飾り彫りがしてある宝石箱。
それにはちっちゃなカギが付いてたんだけど、そこにはカギ穴が無かったんだよね。
だから僕、どうやって開けるんだろうって頭をこてんって倒したんだよ。
そしたらそれを見たバーリマンさんはにっこり。
「ルディーン君は、この手の魔道具を見るのは初めてなのね。このカギの中には特定の魔法に反応する魔石が入っているのよ」
そのカギはちっちゃいけど、ちゃんとした魔道具なんだって。
それに魔力を流しながらカギをかけると、その人にしか開けられなくなっちゃうんだよって教えてくれたんだ。
「でも、箱は普通のだよね? 悪もんが盗んで斧とかで叩いたら、簡単に壊れちゃうんじゃないかな」
「確かに盗まれたらそうなるでしょうね。でもそこは預けた店を信用するしかないわ」
この鍵をかけてるのは、悪もんに盗まれないようにするためじゃないんだよってバーリマンさんは言うんだ。
「この鍵をかけておけば同じ店を利用している他の人が間違って開けて、中身を使ってしまう事故を防げるのよ」
「そっか。開かないならその箱は自分のじゃないってすぐに解るもんね」
ちゃんと解るようにはしてあるそうなんだけど、うっかり間違えちゃうことはあるもん。
だからそんなことが無いようにって、こんな特別なカギがかけてあるんだってさ。
「それじゃあ、開けるわよ」
バーリマンさんはそう言うと、ちっちゃなカギをつまんだんだよ。
そしたらそれだけでカチッて音がして、鍵が開いちゃったんだ。
「わぁ、ほんとに開いた!」
「すごいね、キャリーナ姉ちゃん」
それがとっても不思議だったから、僕とキャリーナ姉ちゃんは大興奮。
特にお姉ちゃんは、そのカギのことがもっと知りたくなったみたい。
すぐにバーリマンさんのとこにかけてって、質問したんだ。
「これ、だれでもできるの?」
「魔力を動かせる程度まで魔法に精通していれば、キャリーナちゃんでもカギをかけられるわよ」
「ルディーン、私にもできるって」
キャリーナ姉ちゃんは自分でもできるって解ったのがすっごくうれしかったみたい。
だからなのか、とんでもないことを言いだしたんだ。
「ルディーン。魔道具作れるんだから、あのカギも作って」
「え~、そんなの無理だよ」
僕、あのカギの作り方なんて知らないもん。
村の図書館にある魔道具にもあんなの載ってなかったから、僕には作れないと思うんだよね。
「え~、なんで?」
それでもキャリーナ姉ちゃんはあきらめきれないみたい。
僕の手を持って、揺らしながら作ってよって。
それに困ってたらね、バーリマンさんが助けてくれたんだ。
「キャリーナちゃん。ルディーン君はまだ小さくて魔道具の勉強を始めたばかりでしょ。今は無理みたいだけど、がんばってお勉強を続ければいつかきっと作れるようになると思うわよ」
「ほんと?」
僕にそう聞いてくるキャリーナ姉ちゃん。
でもね、あのカギを作るのがどれくらい難しいのか解んないもん。
だから困っちゃったんだ。
「そんなの、僕にも解んないよ」
「ルディーン、解んないって言ってるよ」
「ええ、そうね。でも、それほど遠くない未来に作れるようになるわよ。だって彼は作り方が解らないだけで、作る力が無いわけじゃないから」
バーリマンさんが急にそんなこと言ったもんだから、僕、すっごくびっくりしたんだよ。
だって、お勉強しただけであんな凄いのがほんとに作れるようになるかなんて解んなかったんだもん。
でもね、ロルフさんまでそうだよって言いだしたんだ。
「ルディーン君はすでに、魔石に魔法陣を刻むことができるからのぉ。後は使う魔法と魔法陣の描き方を覚えさえすればそれほど難しくはないとわしも思うぞ」
「あのカギって、魔石と魔法陣で開くようにできてるの?」
「正確に言うと、あの魔道具はカギの形をしたものの中にカギをかける魔法陣が刻まれた魔石が入っているだけなのじゃよ」
ホントのカギって、カギ穴にカギを刺して回すと開くでしょ。
だからそれを作ろうと思うと、中がどんな風になってるのかをしっかりお勉強しないと作れないんだ。
でもあれはカギの形をしてるだけで、中にはカギをかける魔法が刻んである魔石が入っているだけなんだって。
「だからカギの形さえしておれば、中身は空っぽで構わん。いや、空っぽでなければ魔石を入れられぬからその方が良いと言えるのう」
「そっか、それなら僕でも作れるかも」
カギの形をしてるだけでいいんなら、クリエイト魔法で作れそうだもん。
それに魔法陣のお勉強もバーリマンさんから教えてもらってるでしょ。
どんな魔法陣がカギをかける魔法に合ってるのか知らないけど、バーリマンさんがきっと教えてくれるよね。
「それなら僕にも作れるかも!」
「ほんと? ルディーン」
「うん。お勉強しないとダメだけど、作れるようになると思うよ」
それを教えてあげると、キャリーナ姉ちゃんは大喜び。
「ぜったいだよ。約束だよ」
「うん、約束」
僕とお姉ちゃんは両手を握り合いながら、いつか絶対魔法のカギを作ってあげるねって約束したんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
ルディーン君はまだ放出系の魔法陣しか習っていないので、カギをかける魔法”ロック”を覚えても魔法のカギを作ることはできません。
ただ誰かが描いた魔法陣でも、その中心にその魔法が使える人が呪文を書き込めば発動するんですよね。
なので実を言うとロルフさんもバーリマンさんも、教えさえすれば今すぐにでも作れると解っています。
ではなぜそうしないのかというと、放出系の魔法陣を教えただけでピュリファイによる浄化魔法で水をきれいにする水がめや、荷台が揺れない馬車などを簡単に創り出してしまったから。
正直なにを創り出すのか予想もつかないので、少し様子を見てからの方がいいだろうと思っているからだったりします。
さて、いよいよ来週の金曜日、2月14日に転生0の3巻が発売されます。
今までは許可が出ていなかった表紙&帯の画像も水曜日に解禁されました。楽しみです。
因みに今回も、裏表紙のルディーン君がとても可愛いです。
そして表紙を開くと出てくるカラーイラストがまた素晴らしい。高瀬コウ先生には、感謝してもしきれませんね。
ああ、早く皆さんにも見てもらいたいなぁ。
こちらでは初掲載の3巻表紙です




